いま僕は君達に書く、 最も新しい名で君達をよび、 僕のあらゆる精神をこめて。 君達は知っているか、 いま僕等がどんな時代にいるかと云うことを、 いま時代がどんな方に動いているかと云うことを、 おお君達の生誕を待っていた世界、 君達はあの声をきくだろう、 澎湃として起ってくる声、 いまや世界のあらゆる隅々から、 あらゆる国土を充して、 すべてのものの胸を開かしめる、 新しい民衆の精神を。 おおいま君達を求めてきたこの声、 君達の窓の外に一杯になっているこの声、 あらゆる国語で、 あらゆる個々の発想で、 いまや世界を領有しにゆく声、 六合を一切の迷蒙から救いにゆく声、 あらゆる文化の偶像を根本から転えすこの声、 自由と新しいこの声。 おお君達は耳傾ける、 おお君達が求めつつあったものは之れだ、 君達の精神のうちに鬱積しつつあったものは之れだ、 おお既に君達はこの声を叫んでいたのだ、 君達の生命は既にこの精神のうちに目ざめていたのだ、 ここに生きつつあったのだ、 新しい生命に充されていたのだ。 民衆! 何と力強い人間の言葉だ、 一切の誤った文化の迷蒙から剥脱した真人、 宏大なるマッス、 めざめた精神、 それは深く開かれた人間の眼だ、 新しい精神だ、 鬱積していた久しい土上の爆発だ、 埋れていた真の人類の覚醒だ、 新しい相互扶助の世界だ、 正しい人類の意志だ、 正しい針路だ。 見よ裸の僕達を、 新しき世界魂を、 若き魂を、 自由の僕達を、 一切の哲学的迷蒙から自由な僕達を、 一切の宗教的迷蒙から自由な僕達を、 一切の科学的迷蒙から自由な僕達を、 一切の支配と圧制から自由な僕達を、 一切の伝統的因習から自由な僕達を、 一切の階級、不当の権力、一切の他動意志から解放された精神を、 僕等を圧倒し、押え、 僕達に強いさせられた一切の約束から いま全く別物の上に立つ精神、 新しい世界の築造。 吾々の胸は開け、 吾々の上には宏大な空があるばかりだ、 吾々は自然に対して生きるのだ、 太陽に対して、 月、そして無限の星斗、 雨、そして暴風、洪水に対して、 稲妻、雷鳴、海嘯に対して、一切の媒介物を排し、 真裸かで夫等のものに面接するのだ、 彼等のうちに正しい人間を拡大しにゆくのだ、 真の人間の実現だ、 真の人間の幸福と平和と事業をうち立てるのだ、 正しい旗じるしをひるがえすのだ、 共働の精神を生きるのだ。 民衆の声こそは世界の声だ、 一切のものが更新されるのだ、 一切の組織が人間自然の意志に帰るのだ、 人間と自然が抱き合うのだ、 そしてそれを高めてゆく世界、 そこに民衆的文化――正しき人間と自然との結合、 強い意志――永遠の生長。 (一九一七年十一月十日作 『民衆』一九一八年一月創刊号に発表 『百田宗治詩集』を底本)