あをいタイルの浴槽にひたつてゐる。
外は武藏野の風であらうにこの落ちついた心はふるさとを想つてゐる。
ぷち――ぷち
ゆぶねのあちこちに月のやうに浮んでゐる橙の實をそつと下から押へる。
兩手の指で押へると種子はあわてゝはねる。いゝ音だ。
冬至。ふるさとも風であらう。
ぷちつとはねた種子は私の額ではずんで湯に逃げた。
私は笑ひたくなつた。
顏をあげると高いガラス窓の外はもう紫のビロウドをひろげ細い月が劇のセツテングのやうにぶら下つてゐる。
とうじ
桜間 中庸
あをいタイルの浴槽にひたつてゐる。
外は武藏野の風であらうにこの落ちついた心はふるさとを想つてゐる。
ぷち――ぷち
ゆぶねのあちこちに月のやうに浮んでゐる橙の實をそつと下から押へる。
兩手の指で押へると種子はあわてゝはねる。いゝ音だ。
冬至。ふるさとも風であらう。
ぷちつとはねた種子は私の額ではずんで湯に逃げた。
私は笑ひたくなつた。
顏をあげると高いガラス窓の外はもう紫のビロウドをひろげ細い月が劇のセツテングのやうにぶら下つてゐる。
記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c桜間 中庸「冬至」(旧字旧仮名)、底本『日光浴室 櫻間中庸遺稿集』ボン書店、1936年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053993_001604, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079