四月十六日！

彼はいなくなった

彼は俺達の眼から消されて行った

寝床は靴に破られ

天井も床下もごみ片迄もさらわれた

昨日まで……

勝利を背負っていた彼

凱歌のときめきに

闘争に胸をおどらしていた彼

六十三名のブル候補の中に

ただ一人の俺達の代表に出た彼

町の労働者と村の農民の勝利の声を背負った彼

彼……労農同盟選出静岡市会議員！

俺達はおどった

ゴマかしだらけの市会を

俺達の手が握りつぶすぞ！

おお、その喜びも瞬間！

その感激はたった三日間！

呼んでも、叫んでも、わめいても

彼は俺達の手に戻ってこない……

おお

彼の声がする

未だはっきりと彼の叫びが耳に残る

「牢獄よ　来い！

絞首台よ　来い！

自分は死を賭して諸君の為に闘うことを

この壇上から<ruby><rb>契</rb><rt>ちか</rt></ruby>うものである……」

彼のゆくところ

彼の消されたところ

今日は<ruby><rb>五月祭</rb><rt>メーデー</rt></ruby>

思い起す去年の五月祭

彼は輝けるリーダー

無数の足どりと合唱の中に

彼の姿はさっそうと先頭に

奴等のきもっ玉を震え上らした

一年立ったこの五月祭に

無数の足どりと合唱は

去年に増して街道をねってゆくけれど

彼はいない……彼の声は聞こえない

おそらく、牢獄の高窓を透して

おそらく、留置場の壁を透して

或は……そうだ……或は……

<span data-tei-rend="bouten ばつ傍点 right" style="text-emphasis-style: '×'; text-emphasis-position: over right">ギロチン</span>台に血みどろになって

彼は聞いていよう

今日の五月祭の合唱を！

今日の五月祭の足どりを！

おお、彼！　彼！

かえってこない彼

血みどろの彼！

だが、彼……夢にも見よ

今俺達は五月祭の<ruby><rb>示威</rb><rt>デモ</rt></ruby>の中に

俺達は俺達の血をすすって

同志の<span data-tei-rend="bouten ばつ傍点 right" style="text-emphasis-style: '×'; text-emphasis-position: over right">復讐</span>を契っているぞ！

（『戦旗』一九二九年五月号に発表　同年七月戦旗社刊『一九二九年版日本プロレタリア詩集』を底本）