Soranoha

雪の線路を歩いて

ゆきのせんろをあるいて

後藤 謙太郎

貧しさの為に俺は歩けり

ひとすじの道 雪の線路を俺は歩けり

貧しさの為に歩ける俺には

火を吐きて 煙を挙げて

罵る如く 汽笛を鳴らして

走りゆくあの汽車が憎し

文明の利器なれども俺には憎し

ひもじさの為に疲れて歩ける俺には

それ食えがしに汽車の窓より

殻の弁当を投げつくる人の心が憎し

とりわけて今 村を追われて歩ける俺には

スチームに温められて

安らかに旅する人の心はなお憎し

われ等が汗にてなりし

秋の収穫を取り去る代りに

彼の怖ろしき文明の病毒を運び来る

あの汽車は

毒蛇のごとくたまらなく憎し

毒蛇のごとくたまらなく憎きはあの汽車

野獣の呪いのごとく 夜も日も唸りて

若き男女の幾群を

ああ痛ましき都会の工場に送り出す

たまらなく憎きはあの汽車

(五行抹消)

貧しさの為に歩ける俺には

村を追われて歩ける俺には

ひとすじの道 雪の線路を歩ける俺には

文明の利器なれどもたまらなく憎し

(一九二六年四月後藤謙太郎遺稿集刊行会刊『労働・放浪・監獄より』を底本)

底本 / Source edition

底本:「日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)」新日本出版社
1987(昭和62)年5月25日初版
底本の親本:「労働・放浪・監獄より」後藤謙太郎遺稿集刊行会
1926(大正15)年4月
入力:坂本真一
校正:雪森
2015年12月12日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
/works/053973_001613/tei
プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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後藤 謙太郎「雪の線路を歩いて」(新字新仮名)、底本『日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)』新日本出版社、1987年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053973_001613, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite