いらだたしき一夜、
群集と巡査とは睨みあい、
街燈の瓦斯の灯も常より青し。
窓硝子のやぶるる音に、
喜びて叫ぶ声、恐ろしき鬨の声、
馳せちがう民衆と警官の剣鞘のおと。
哀れにも暴君のくるしむ姿、
われもまた群集ともろ共に手を打って
幾度か「バンザイ」を叫ばんとせしが、されど……
かの家にはわが椅子あり、
わがペンもあり、
かかる時なお忘れえざるわがパンの家。
雨のごとく石はふり、
群集は狂おしく鳴りわめく、
いらだたしき銀座の一夜。
(『近代思想』一九一三年三月号に発表)
DILEMMA.
佐藤 緑葉
いらだたしき一夜、
群集と巡査とは睨みあい、
街燈の瓦斯の灯も常より青し。
窓硝子のやぶるる音に、
喜びて叫ぶ声、恐ろしき鬨の声、
馳せちがう民衆と警官の剣鞘のおと。
哀れにも暴君のくるしむ姿、
われもまた群集ともろ共に手を打って
幾度か「バンザイ」を叫ばんとせしが、されど……
かの家にはわが椅子あり、
わがペンもあり、
かかる時なお忘れえざるわがパンの家。
雨のごとく石はふり、
群集は狂おしく鳴りわめく、
いらだたしき銀座の一夜。
(『近代思想』一九一三年三月号に発表)
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c佐藤 緑葉「DILEMMA.」(新字新仮名)、底本『日本プロレタリア文学集・38 プロレタリア詩集(一)』新日本出版社、1987年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053956_001486, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079