鶉や鷓鴣の飛びゆくかなたに
ふたたび白堊の城は現はれ 風のやうに消えてしまつた。
人夫よ はやく夏草を刈りつくせ
狼火をあげよ 烟を空にたなびかせよ
空想の陣幕を野邊にはつて
まぼろしの宴樂をほしいままにせよ。
ああこのばうばうたる白日の野邊を訪ねて行つても
むかしの失はれた幸福に出逢ひはしない。
大風の吹く城の向うで
化猫草の穗のゆらゆらとうごいてゐて
なにものか
かなしい追憶の敵が笑つてゐる。
てき
萩原 朔太郎
鶉や鷓鴣の飛びゆくかなたに
ふたたび白堊の城は現はれ 風のやうに消えてしまつた。
人夫よ はやく夏草を刈りつくせ
狼火をあげよ 烟を空にたなびかせよ
空想の陣幕を野邊にはつて
まぼろしの宴樂をほしいままにせよ。
ああこのばうばうたる白日の野邊を訪ねて行つても
むかしの失はれた幸福に出逢ひはしない。
大風の吹く城の向うで
化猫草の穗のゆらゆらとうごいてゐて
なにものか
かなしい追憶の敵が笑つてゐる。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「敵」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053651_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079