鶉や鷓鴣の飛びゆくかなたに ふたたび白堊の城は現はれ 風のやうに消えてしまつた。 人夫よ はやく夏草を刈りつくせ 狼火をあげよ 烟を空にたなびかせよ 空想の陣幕を野邊にはつて まぼろしの宴樂をほしいままにせよ。 ああこのばうばうたる白日の野邊を訪ねて行つても むかしの失はれた幸福に出逢ひはしない。 大風の吹く城の向うで 化猫草の穗のゆらゆらとうごいてゐて なにものか かなしい追憶の敵が笑つてゐる。