記憶をたとへてみれば 記憶は雪のふるやうなもので しづかに生活の過去につもるうれしさ。 記憶は見知らぬ波止場をあるいて にぎやかな夜霧の海に ぽうぽうと鳴る汽笛をきいた。 記憶はほの白む汽車の窓に わびしい東雲をながめるやうで 過ぎさる生活の景色のはてを ほのかに消えてゆく月のやうだ。 記憶は雪のふる都會の夜に しづかな建築の家根を這ひまはる さびしい青猫の影の影 記憶は分身のやうなものだ。