いろ青ざめて谷間をはしり、

夕ぐれかけてただひとり、

岩をよぢのぼれるの手は<ruby><rb>鋼鐵</rb><rt>はがね</rt></ruby>なり、

ときすべて液體空氣の觸覺に、

山山は<ruby><rb>茜</rb><rt>あかね</rt></ruby>さし、

<ruby><rb>遠樹</rb><rt>とほき</rt></ruby>に光る、

わが偏狂の銀の魚、

したたるいたみ、

谷間を走りひたばしる、

わが哀傷の岩清水、

そのうすやみのつめたさに、

やぶるるごとく齒をぬらす、

やぶるるごとく齒をぬらす。