みなそこに魚の哀傷、
われに涙のいちじるく、
きみはきみとて、
ましろき乳房をぬらさむとする。
この日ごろつかふことなく、
ひさしくわれら靈智にひたる、
すでに長き祈祷ををへ、
いまみれば月も皆既なり、
魚の性はせんちめんたる、
みよ、うみはみどりをたたへ、
肉青らみ、
いんいんとして二人あひ抱く、
齒と齒と合し、
手は手をつがひ、
もつれつつからまりにつつ、
いんよくきはまり、
魚の浪におよぎて、
よるの海に青き死の光れるをみる。
げっしょくかいき
萩原 朔太郎
みなそこに魚の哀傷、
われに涙のいちじるく、
きみはきみとて、
ましろき乳房をぬらさむとする。
この日ごろつかふことなく、
ひさしくわれら靈智にひたる、
すでに長き祈祷ををへ、
いまみれば月も皆既なり、
魚の性はせんちめんたる、
みよ、うみはみどりをたたへ、
肉青らみ、
いんいんとして二人あひ抱く、
齒と齒と合し、
手は手をつがひ、
もつれつつからまりにつつ、
いんよくきはまり、
魚の浪におよぎて、
よるの海に青き死の光れるをみる。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「月蝕皆既」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053608_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079