高原の空に風光り、
秋はやふかみて、
鑛脈のしづくのごとく、
ひねもす銀針の落つるをおぼえ、
ゆびにとげいたみ、
せちにひそかに、
いまわれの瞳の閉づるを欲す。
ここは利根川、
その氾濫のながめいちじるく、
青空に桑の葉光り、
さんらんとして遠き山里に愁をひたす、
あはれ、あはれ、われの故郷にあなれば、
この眺望のいたましさ。
眼もはるにみゆ。
村落の光る厩のうへに、
かがやく愛の手は伸びゆきて、
われの身は銀の一脈、
ひそかに息づき生命はや絶えなんとする。
―九月七日―
うまや
萩原 朔太郎
高原の空に風光り、
秋はやふかみて、
鑛脈のしづくのごとく、
ひねもす銀針の落つるをおぼえ、
ゆびにとげいたみ、
せちにひそかに、
いまわれの瞳の閉づるを欲す。
ここは利根川、
その氾濫のながめいちじるく、
青空に桑の葉光り、
さんらんとして遠き山里に愁をひたす、
あはれ、あはれ、われの故郷にあなれば、
この眺望のいたましさ。
眼もはるにみゆ。
村落の光る厩のうへに、
かがやく愛の手は伸びゆきて、
われの身は銀の一脈、
ひそかに息づき生命はや絶えなんとする。
―九月七日―
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「厩」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053604_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079