塔は額にきづかる、
螢をもつて窓をあかるくし、
塔はするどく青らみ空に立つ、
ああ我が塔をきづくの額は血みどろ、
肉やぶれいたみふんすゐすれども、
なやましき感傷の塔は光に向ひて伸長す、
いやさらに伸長し、
その愁も青空にとがりたり。
あまりに哀しく、
きのふきみのくちびる吸ひてきずつけ、
かへれば琥珀の石もて魚をかこひ、
かの風景をして水盤に泳がしむるの日、
遠望の魚鳥ゆゑなきに消え、
塔をきづくの額は研がれて、
はや秋は晶玉の死を窓にかけたり。
かんしょうのとう
萩原 朔太郎
塔は額にきづかる、
螢をもつて窓をあかるくし、
塔はするどく青らみ空に立つ、
ああ我が塔をきづくの額は血みどろ、
肉やぶれいたみふんすゐすれども、
なやましき感傷の塔は光に向ひて伸長す、
いやさらに伸長し、
その愁も青空にとがりたり。
あまりに哀しく、
きのふきみのくちびる吸ひてきずつけ、
かへれば琥珀の石もて魚をかこひ、
かの風景をして水盤に泳がしむるの日、
遠望の魚鳥ゆゑなきに消え、
塔をきづくの額は研がれて、
はや秋は晶玉の死を窓にかけたり。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「感傷の塔」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053600_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079