瀬川ながれを早み、

しんしんと魚らくだる、

ああ<ruby><rb>岩魚</rb><rt>いはな</rt></ruby>ぞはしる、

谷あひふかに、秋の風光り、

紫苑はなしぼみ、

<ruby><rb>木末</rb><rt>こずゑ</rt></ruby>にうれひをかく、

<span data-tei-rend="bouten 傍点 right" style="text-emphasis-style: filled sesame; text-emphasis-position: over right">えれな</span>よ、

信仰は空に影さす、

かならずみよ、おんみが靜けき額にあり、

よしやここは遠くとも、

わが巡禮は鈴ならしつつ君にいたらむ、

いまうれひは瀧をとどめず、

かなしみ山路をくだり、

せちにせちにおんみをしたひ、

ひさしく手を<ruby><rb>岩魚</rb><rt>いはな</rt></ruby>のうへにおく。

――一九一四、八、八――