受難の日はいたる
主は遠き水上にありて
氷のうへよりあまた光る十字すべらせ
女はみな街路に裸形となり
その素肌は黄金の林立する柱と化せり。
見よやわが十指は晶結し
背にくりいむは瀧とながるるごとし
しきりに掌をもつて金屬の女を研ぎ
胴體をもつてちひさなる十字を追へば
樹木はいつさいに𢌞轉し
都は左にはげしく傾倒す。
ああ十字疾行する街路のうへ
そのするどさに日輪もさけびくるめき
群集をこえて落しきたるを感じ
いのり齒をくひしめ
受難の日のひくれがた
われつひに蛇のごとくなりて絶息す。
じゅなんび
萩原 朔太郎
受難の日はいたる
主は遠き水上にありて
氷のうへよりあまた光る十字すべらせ
女はみな街路に裸形となり
その素肌は黄金の林立する柱と化せり。
見よやわが十指は晶結し
背にくりいむは瀧とながるるごとし
しきりに掌をもつて金屬の女を研ぎ
胴體をもつてちひさなる十字を追へば
樹木はいつさいに𢌞轉し
都は左にはげしく傾倒す。
ああ十字疾行する街路のうへ
そのするどさに日輪もさけびくるめき
群集をこえて落しきたるを感じ
いのり齒をくひしめ
受難の日のひくれがた
われつひに蛇のごとくなりて絶息す。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「受難日」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053589_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079