なじかは春の歩み遲く
わが故郷は消え殘る雪の光れる
わが眼になじむ遠き山山
その山脈もれんめんと
煙の見えざる淺間は哀し
今朝より家を逃れいで
木ぬれに石をかくして遊べる
をみな來りて問ふにあらずば
なんとて家路を教ふべき
はやも晝餉になりぬれど
ひとり木立にかくれつつ
母もにくしや
父もにくしやとこそ唄ふなる。
(滯郷哀語篇ヨリ)
はるのきたるころ
萩原 朔太郎
なじかは春の歩み遲く
わが故郷は消え殘る雪の光れる
わが眼になじむ遠き山山
その山脈もれんめんと
煙の見えざる淺間は哀し
今朝より家を逃れいで
木ぬれに石をかくして遊べる
をみな來りて問ふにあらずば
なんとて家路を教ふべき
はやも晝餉になりぬれど
ひとり木立にかくれつつ
母もにくしや
父もにくしやとこそ唄ふなる。
(滯郷哀語篇ヨリ)
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「春の来る頃」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053577_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079