おきつ邊かつ鳴る海青なぎ
今手に動ずる胸をおせば
哀愁ことごと浮び出でて
たぎつ瀬涙の八千尋沼
ああ世は神祕の影にみちて
興ある歌もつ子等もあるに
何をか若きに眉根ひそめ
執着泣くべくえ堪へんや
例へば人あり花に醉ひて
秋雲流るる夕づつに
樂觀すぎしを思ふ如く
足ぶみせんなき煩ひかや
信なき一人に戀しさで
今年もさびしう春は行きぬ
ゆくはる
萩原 朔太郎
おきつ邊かつ鳴る海青なぎ
今手に動ずる胸をおせば
哀愁ことごと浮び出でて
たぎつ瀬涙の八千尋沼
ああ世は神祕の影にみちて
興ある歌もつ子等もあるに
何をか若きに眉根ひそめ
執着泣くべくえ堪へんや
例へば人あり花に醉ひて
秋雲流るる夕づつに
樂觀すぎしを思ふ如く
足ぶみせんなき煩ひかや
信なき一人に戀しさで
今年もさびしう春は行きぬ
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「ゆく春」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053546_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079