ああ戀人の家なれば
幾度そこを行ききずり
空しくかへるたそがれの
雲つれなきを恨みんや
水は流れて南する
ゆかしき庭にそそげども
たが放ちたる花中の
艶なる戀もしらでやは
垣間み見ゆるほほづきの
赤きを人の脣に
情なくふくむ日もあらば
悲しき子等はいかにせん
例へば森に烏なき
朝ざむ告ぐる冬の日も
さびしき興に言よせて
行く子ありとは知るやしらずや
ああ空しくて往來ずり
狂者に似たるふりは知るも
からたちの垣深うして
君がうれひのとどきあへず。
きみがいえ
萩原 朔太郎
ああ戀人の家なれば
幾度そこを行ききずり
空しくかへるたそがれの
雲つれなきを恨みんや
水は流れて南する
ゆかしき庭にそそげども
たが放ちたる花中の
艶なる戀もしらでやは
垣間み見ゆるほほづきの
赤きを人の脣に
情なくふくむ日もあらば
悲しき子等はいかにせん
例へば森に烏なき
朝ざむ告ぐる冬の日も
さびしき興に言よせて
行く子ありとは知るやしらずや
ああ空しくて往來ずり
狂者に似たるふりは知るも
からたちの垣深うして
君がうれひのとどきあへず。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「君が家」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053544_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079