小人若うて道に倦んじ
走りて隱者を得しが如く
今われ山路の歸さ來つつ
木蔭に形よき汝をえたり。
表面は蛟龍雲を吐いて
神有の祕密をそめて見るや
裏面には伶人額をたれて
物思ひ煩ふなよび姿
才華悧悧たる眼ざしには
工匠が怨みもこもりけんよ。
こは君逸品古色ありと
抱いて歸れば有情なりや
味よきしづくの淺紫なるに
け高き千古の春を知りぬ。
こはい
萩原 朔太郎
小人若うて道に倦んじ
走りて隱者を得しが如く
今われ山路の歸さ來つつ
木蔭に形よき汝をえたり。
表面は蛟龍雲を吐いて
神有の祕密をそめて見るや
裏面には伶人額をたれて
物思ひ煩ふなよび姿
才華悧悧たる眼ざしには
工匠が怨みもこもりけんよ。
こは君逸品古色ありと
抱いて歸れば有情なりや
味よきしづくの淺紫なるに
け高き千古の春を知りぬ。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c萩原 朔太郎「古盃」(旧字旧仮名)、底本『萩原朔太郎全集 第三卷』筑摩書房、1977年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053543_000067, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079