嘆きあひ 酌みかふひまに
灯はとぼり 雑木は昏れて
滝やまた 稜立つ巌や
雪あめの ひたに降りきぬ
「ただかしこ 淀むそらのみ
かくてわが ふるさとにこそ」
そのひとり かこちて哭けば
狸とも 眼はよぼみぬ
「すだけるは 孔雀ならずや
ああなんぞ 南の鳥を
ここにして 悲しましむる」
酒ふくみ ひとりも泣きぬ
いくたびか 鷹はすだきて
手拭は 雫をおとし
玻璃の戸の 山なみをたゞ
三月の みぞれは翔けぬ
たいしゃく
宮沢 賢治
嘆きあひ 酌みかふひまに
灯はとぼり 雑木は昏れて
滝やまた 稜立つ巌や
雪あめの ひたに降りきぬ
「ただかしこ 淀むそらのみ
かくてわが ふるさとにこそ」
そのひとり かこちて哭けば
狸とも 眼はよぼみぬ
「すだけるは 孔雀ならずや
ああなんぞ 南の鳥を
ここにして 悲しましむる」
酒ふくみ ひとりも泣きぬ
いくたびか 鷹はすだきて
手拭は 雫をおとし
玻璃の戸の 山なみをたゞ
三月の みぞれは翔けぬ
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c宮沢 賢治「対酌」(新字旧仮名)、底本『新修宮沢賢治全集 第六巻』筑摩書房、1980年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053424_000081, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079