Soranoha

講後

こうご

宮沢 賢治

いたやと楢の林つきて

かの鉛にも続くといへる

広きみねみち見え初めたれば

われ師にさきだちて走りのぼり

峯にきたりて悦び叫べり

江釣子森は黒くして脚下にあり

北上の野をへだてて山はけむり

そが上に雲の峯かゞやき立てり

人人にまもられて師もやがて来りたまふに

みけしき蒼白にして

単衣のせなうるほひ給ひき

われなほよろこびやまず

石をもて東の谷になげうちしに

その石遙か下方にして

戞として樹をうち

また茂みを落つるの音せりき

師すでに立ちてあり

あへぎて云ひたまひけるは

老鶯をな驚かし給ひそとなり

講の主催者粛として立ち

われまた畏れて立ちつくせるに

人人〔一字難読〕かずつかれて多くはたゝずめりき

しかはあれかの雲の峯をば

しづかにのぞまんはよけんと

蕗の葉をとりて地に置けるに

講の主催者

その葉を師に参らせよといふ

すなはち更に三葉をとつて

重ねて地にしき置けるに

師受用して座しましき

底本 / Source edition

底本:「新修宮沢賢治全集 第六巻」筑摩書房
1980(昭和55)年2月15日初版第1刷発行
※「〔一字難読〕」は、底本編集時の注記です。
入力:junk
校正:土屋隆
2011年5月14日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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宮沢 賢治「講後」(新字旧仮名)、底本『新修宮沢賢治全集 第六巻』筑摩書房、1980年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 053350_000081, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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