その夜私は、コンテで以て自我像を画いた
風の吹いてるお会式の夜でした
打叩く太鼓の音は風に消え、
私の机の上ばかり、あかあかと明り、
女はどこで何を話してゐたかは知る由もない
私の肖顔は、コンテに汚れ、
その上に雨でもパラつかうものなら、
まこと傑作な自我像は浮び、
軌(ママ)りゆく、終夜電車は、
悲しみの余裕を奪ひ、
あかあかと、あかあかと私の画用紙の上は、
けれども悲しい私の肖顔が浮んでた。
コキューのおもいで
中原 中也
その夜私は、コンテで以て自我像を画いた
風の吹いてるお会式の夜でした
打叩く太鼓の音は風に消え、
私の机の上ばかり、あかあかと明り、
女はどこで何を話してゐたかは知る由もない
私の肖顔は、コンテに汚れ、
その上に雨でもパラつかうものなら、
まこと傑作な自我像は浮び、
軌(ママ)りゆく、終夜電車は、
悲しみの余裕を奪ひ、
あかあかと、あかあかと私の画用紙の上は、
けれども悲しい私の肖顔が浮んでた。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c中原 中也「コキューの憶ひ出」(新字旧仮名)、底本『中原中也詩集』角川文庫、角川書店、1968年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 051334_000026, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079