山の上には雲が流れてゐた
あの山の上で、お弁当を食つたこともある……
女の子なぞといふものは
由来桜の花弁のやうに、
欣んで散りゆくものだ
近い過去も遠いい過去もおんなじこつた
近い過去はあんまりまざまざ顕現するし
遠いい過去はあんまりもう手が届かない
山の上に寝て、空をみるのも
此処にゐて、あの山をみるのも
所詮は同じ、動くな動くな
あゝ、枯草を背に敷いて
やんわりぬくもつてゐることは
空の青が、少しく冷たくみえることは
煙草を喫ふなぞといふことは
世界的幸福である
くも
中原 中也
山の上には雲が流れてゐた
あの山の上で、お弁当を食つたこともある……
女の子なぞといふものは
由来桜の花弁のやうに、
欣んで散りゆくものだ
近い過去も遠いい過去もおんなじこつた
近い過去はあんまりまざまざ顕現するし
遠いい過去はあんまりもう手が届かない
山の上に寝て、空をみるのも
此処にゐて、あの山をみるのも
所詮は同じ、動くな動くな
あゝ、枯草を背に敷いて
やんわりぬくもつてゐることは
空の青が、少しく冷たくみえることは
煙草を喫ふなぞといふことは
世界的幸福である
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c中原 中也「雲」(新字旧仮名)、底本『中原中也詩集』角川文庫、角川書店、1968年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 051312_000026, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079