民謡は民族が有する唯一の郷土詩である。郷土詩を無視して民謡の存在はない。民謡は草土の詩人によつてうたはれる、純情芸術である。

本書は「かれくさ」（明治三十八年発行）以後の小著中より採録した作品と未発表の作品とを加へて百篇としたが必ずしも自選集の意味ではない、自分が二十数年間辿つて来た道程の記録である。

又、一二節外律によらざる作品も加へたのは思ふところがあつたからである。

大正十三年六月

著者

  


## 紅殻とんぼ

とんぼ来るかなと

裏へ出て見たりや

とんぼ飛んで来て

<ruby><rb>釣瓶</rb><rt>つるべ</rt></ruby>にとまる

とんぼ<ruby><rb>可愛</rb><rt>かはい</rt></ruby>や

<ruby><rb>紅殻</rb><rt>べにがら</rt></ruby>とんぼ

赤い帯なぞちよんと

締めて来る

## 橋の上

橋の上から

小石を投げた

小石ヤ浮くかと

川下見たりや

小石ヤ沈んで

流れてぐ

## 捨てた葱

<ruby><rb>葱</rb><rt>ねぎ</rt></ruby>を捨てたりや

しをれて枯れた

捨てりや葱でも

しをれて枯れる

お<ruby><rb>天道</rb><rt>てんたう</rt></ruby>さま見て

<ruby><rb>俺</rb><rt>おら</rt></ruby>泣いた

## 二十三夜

二十三<ruby><rb>夜</rb><rt>や</rt></ruby>さま

まだのぼらない

麦鍋ア<ruby><rb>囲爐裡</rb><rt>ゐろり</rt></ruby>で

<ruby><rb>泡</rb><rt>あぶく</rt></ruby>立つてる

とろとろ　とろりちけえ

眠くなつて来た

## 門司にて

門司へ渡れば

九州の土よ

土の色さへ

おぼろ月夜してる

土もあかるい

あかるい土よ

人もあかるい

あかるい顔よ

遠い<ruby><rb>常陸</rb><rt>ひたち</rt></ruby>は

わたしの故郷

なぜに暗いだろ

故郷の土よ

暗い土でも

常陸は恋し

## 竹藪

背戸の竹藪で

竹<ruby><rb>伐</rb><rt>き</rt></ruby>つてゐたりや

雀ヤ飛んで来て

啼いてからまつた

## よいとまけの唄（掛合唄）

音頭とり「よいとまきすりや

綱引き「この日の永さ

音頭とり「たのみましたぞ

綱引き「<ruby><rb>音頭</rb><rt>おんどう</rt></ruby>とりさんよ

音頭とり「唄が切れたら

綱引き「唄<ruby><rb>続</rb><rt>つ</rt></ruby>ぎやしやんせ

音頭とり「寝てて暮らそと

綱引き「思ふちやゐぬが

音頭とり「杭の長さよ

綱引き「お<ruby><rb>天道</rb><rt>てんたう</rt></ruby>さまよ

音頭とり「唄で引かなきや

綱引き「どんと手に来ない

## 夜あけ星

夜明お星さま

一つかや

宵に出た星ヤ

どこへいつた

天さのぼつたか

<ruby><rb>潜</rb><rt>むぐ</rt></ruby>つたか

## 眼子菜

<ruby><rb>蛙</rb><rt>かはづ</rt></ruby>鳴くから

沼へいつて見たりや

沼にや<ruby><rb>眼子菜</rb><rt>ひるも</rt></ruby>の

花盛り

沼にや眼子菜の

花盛り

蛙ア眼子菜の

蔭で鳴く

## 朝霧

夜あけ千鳥ぢや

あの啼くこゑは

帰りなされよ

お帰りなされ

川の浅瀬にや

朝霧立ちやる

霧は浅瀬の

瀬に立ちやる

## 青いすすき

青いすすきに

螢の虫は

夜の細道　夜の細道　<ruby><rb>通</rb><rt>かよ</rt></ruby>て来る

細いすすきの

姿が可愛ネ

細い姿に

こがれた螢ネ

夏の短い

夜は明けやすい

夜明頃まで　夜明頃まで　通て来る

## 粉屋念仏

「<ruby><rb>粉屋</rb><rt>こなや</rt></ruby>念仏」踊る子は

帰る

若い娘は

まだ帰らない

スタコラサ

スタコラサ

月も夜明にや

<ruby><rb>山端</rb><rt>やまは</rt></ruby>へ帰る

寝ぼけ月なら

帰らない

スタコラサ

スタコラサ

## 波浮の港

磯の<ruby><rb>鵜</rb><rt>う</rt></ruby>の鳥ヤ

日暮れに帰る

<ruby><rb>波浮</rb><rt>はぶ</rt></ruby>の港にや

夕焼け小焼け

<ruby><rb>明日</rb><rt>あす</rt></ruby>の<ruby><rb>日和</rb><rt>ひより</rt></ruby>は

ヤレ　ホンニサ　<ruby><rb>凪</rb><rt>なぎ</rt></ruby>るやら

船もせかれりや

出船の仕度

島の娘達ヤ

<ruby><rb>御陣家</rb><rt>ごぢんか</rt></ruby>暮し

なじよな心で

ヤレ　ホンニサ　ゐるのやら

## 海の遠く

海の遠くの離れた島で

かはい小鳥がうたふ歌聞ゆ

海の遠くを毎日見ても

島も見えない小鳥もゐない

島は見えずも小鳥はゐずも

かはい小鳥がうたふ歌聞ゆ

誰も知らない遠くの島で

かはい小鳥がかはい歌うたふ

## 洪水の跡

洪水の跡に

コスモス咲き

赤い<ruby><rb>蜻蛉</rb><rt>とんぼ</rt></ruby>が

とまつてゐる

赤い蜻蛉よ

旅人は

どこまで行つた

## 謎

わたしや恥かし

<ruby><rb>喜蔵</rb><rt>きざう</rt></ruby>さんの謎が

枝垂柳の謎ばかり

かける

解けと<ruby><rb>言</rb><rt>ゆ</rt></ruby>ふたとて

解かりよか　謎よ

これさ　喜蔵さん

かけずにおくれ

## はぐれ烏

烏　啼くから

出てみりやゐない

お<ruby><rb>母</rb><rt>つか</rt></ruby>さんよ

わたしや烏に

だまされた

だまされた

はぐれ烏だ

だました　烏

お母さんよ

烏ア啼いても

もう出ない

もう出ない

## 窓

夜になるとお月さんは

窓に来た

そーツと窓から

覗いてる

お月さんは　しばらく

来なくなつた

闇夜の夜ばかり

続いてる

<ruby><rb>今朝</rb><rt>けさ</rt></ruby>見りやお月さんは

ぽツと出てた

有明お月さんに

なつてゐる

## 日永

土に物問うた

畑の土に

土が物<ruby><rb>言</rb><rt>ゆ</rt></ruby>うた

畑の土が

<ruby><rb>日南</rb><rt>ひなた</rt></ruby>ぼつこして

ゐたよと言ふた

## お茶師

<ruby><rb>木瓜</rb><rt>ぼけ</rt></ruby>の花咲く

<ruby><rb>日和</rb><rt>ひより</rt></ruby>は続く

お<ruby><rb>茶師</rb><rt>ちやし</rt></ruby>ヤ来るのも

もう間はなかろ

裏の畑の

茶の樹を見たりや

雀アならんで

とまつてる

## 大洗沖

鹿島灘越しや

船玉さまよ

アレサ　マア

<ruby><rb>大洗</rb><rt>おほあらひ</rt></ruby>沖の

アレサ　マア

隠れ<ruby><rb>御礁</rb><rt>おんね</rt></ruby>の

磯が鳴る

## 草刈り娘

わたしや<ruby><rb>田舎</rb><rt>ゐなか</rt></ruby>の

草刈り娘

草は<ruby><rb>千駄</rb><rt>せんだん</rt></ruby>

刈らなきやならぬ

ザツクリ　ザツクリ

ザツクリサ

草の千駄

夜明の<ruby><rb>星</rb><rt>のんの</rt></ruby>

わたしや思はぬ

日とてない

ザツクリ　ザツクリ

ザツクリサ

## 金雀枝

<ruby><rb>金雀枝</rb><rt>えにしだ</rt></ruby>の花咲く頃は

ほととぎすが啼く

ほととぎすが啼く

<ruby><rb>故郷</rb><rt>ふるさと</rt></ruby>の森の中にも

もう　金雀枝の

花咲く頃か

ほととぎすが啼く

ほととぎすが啼く

## 風の音

## 一

裏戸覗きやる

口笛ヤ吹きやる

わたしや気が気ぢや

ゐられない

逢へる身ならば

逢ひにも出よが

元のわたしの

身ではない

## 二

<ruby><rb>戸縁</rb><rt>とぶち</rt></ruby>叩きやる

小声ぢや呼びやる

とても気が気ぢや

ゐられない

空の星でも

縁なきや流る

薄い縁だと

おぼしやんせ

## 三

石は投げしやる

雨戸にやあたる

もうも気が気ぢや

ゐられない

この<ruby><rb>家</rb><rt>や</rt></ruby>去れとて

石投げしやるか

石に言はせに

来やしやるか

## 四

去つちやくれろと

石投ぎやしない

風の音だと

思やしやれ

風の音だと

よく<ruby><rb>言</rb><rt>ゆ</rt></ruby>ふてくれた

窓にもたれて

泣いたぞえ

## 畑ン中

（ある農夫の歌の VARIATION）

<ruby><rb>真昼間</rb><rt>まつぴるま</rt></ruby>でごわせう

畑ン中に、<ruby><rb>田鼠</rb><rt>むぐらもち</rt></ruby>が一匹

<ruby><rb>斑犬</rb><rt>ぶち</rt></ruby>に掘りぞへられて

イヤハヤ

むんぐらむんぐら居やあした

畑の土は、開闢このかた、黒いもんか

どなもんか

<ruby><rb>真</rb><rt>まこと</rt></ruby>の所、烏に聞いて見やあすべい

畑ン中は、青空天上、不思議はごわすめえ

喉笛鳴らした　ケー　ケー　ケー

<ruby><rb>鶏</rb><rt>かしは</rt></ruby>が走つた

こりやまた事だと<ruby><rb>魂消</rb><rt>たまげ</rt></ruby>払つて見てやあした。

<ruby><rb>蜻蛉</rb><rt>あけづ</rt></ruby>が一匹

追つかけ廻つた、<ruby><rb>啄</rb><rt>つつ</rt></ruby>くわ　啄くわ

ぶつ飛びあがつた、飛んだわ　飛んだわ

蜻蛉は<ruby><rb>御運</rb><rt>ごうん</rt></ruby>でござりあした

地主様の一人娘が

娘に<ruby><rb>二種</rb><rt>ふたいろ</rt></ruby>何処にごわせう

どどの詰りが

エヘン

孕み<ruby><rb>女子</rb><rt>をなご</rt></ruby>になりやあした

畑ン中の豆ン花<ruby><rb>何</rb><rt>ど</rt></ruby>なもんだ

朝つぱらから何事ぶたずに

べろりと咲いてござりやあす

## 道楽薬師

願ひかけました

<ruby><rb>米山</rb><rt>よねやま</rt></ruby>さまへ

縁をつないで

お呉れよとかけた

末はどうでも

お薬師さまよ

せつぱ詰つた

つないでお呉れ

帯で結んでも

切れる縁は切れる

どうせ米山も

お道楽薬師

切れるまでにも

つないでお呉れ

## 蚊喰鳥

春も末かよ

葉桜の

蔭に来てゐる

<ruby><rb>蚊喰鳥</rb><rt>かくひどり</rt></ruby>

友なつかしい

今日の日も

桜の蔭に

暮れて行く

桜の蔭の

たそがれが

なぜなつかしい

蚊喰鳥

## また来よつばめ

月日立つのは

つばめの鳥よ

はやいものだと

さう思へ

南風吹きや

また来よつばめ

桜咲いたら

来よつばめ

南風吹きや

つばめの鳥よ

わしが待つぞと

さう思へ

## 千代の松原

<ruby><rb>千代</rb><rt>ちよ</rt></ruby>の松原

ひよろひよろ松よ

こぼれ松葉の

わたしぢやほどに

逢ひに来たのか

泣かせに来たか

逢ひに来たなら

出て逢ひませうに

泣けと云ふなら

わしや泣きませうに

唄で流して

横丁を通る

## 背戸山

狐ヤ背戸山さ

来ちやコンと啼いた

背戸の松山の

松<ruby><rb>伐</rb><rt>き</rt></ruby>つてしもと

狐ヤ背戸山さ

来なくなつた

## 飛騨にて

山にや

毎日　寒い風吹くに

飛騨の高山

渡り鳥や

渡る

渡りなされよ

富山の　山にや

風は吹いても

まだ雪ヤ

降らぬ

## 米山小唄

思ひつめたぞ

<ruby><rb>米山</rb><rt>よねやま</rt></ruby>さまよ

生きて暮らそと

恋路で死のと

わしの心も

こうなりや闇ぢや

どこで照る日も

照る日は同じ

<ruby><rb>故郷</rb><rt>くに</rt></ruby>も捨てたぞ

この土地去るぞ

## 旅の身ぢやとて

旅の身ぢやとて

さうぢやとて

<ruby><rb>明日</rb><rt>あす</rt></ruby>はわかれて

ゆく気かい

たづねて来よとて

さうぢやとて

このままわかれて

ゆく気かい

待つてて呉れとて

さうぢやとて

どうでもわかれて

ゆく気かい

## 小諸小唄

□

上州見おろし

浅間が山は

胸にほのほの

火を燃やす

□

二つ日はない

浅間が山よ

わしが願ひを

どうなさる

## 出船

沖は<ruby><rb>時雨</rb><rt>しぐれ</rt></ruby>よ

渚は雨よ

船は<ruby><rb>出船</rb><rt>でぶね</rt></ruby>か

みち汐か

汐はみち汐

港の船よ

時雨<ruby><rb>交</rb><rt>まじ</rt></ruby>りの

風が吹く

## 浪枕

<ruby><rb>昨夜</rb><rt>ゆふべ</rt></ruby>も君から

来たたより

博多<ruby><rb>小女郎</rb><rt>こぢよらう</rt></ruby>は

浪枕

わたしも博多の

浪枕

ゆるしてお呉れと

いふたより

## 川しぶき

さつさ<ruby><rb>行</rb><rt>ゆ</rt></ruby>きましよ

あの山越えて

花は咲けども

ふるさとの

月はおぼろに

川しぶき

さつさ行きましよ

あの川越えて

花は散れども

ふるさとの

月はなつかし

川しぶき

## 芙蓉の花

<ruby><rb>芙蓉</rb><rt>ふよう</rt></ruby>の花の

咲く頃にや

芙蓉の紅い

花が咲く

雀もお宿に

帰る頃にや

雀のお宿も

日が暮れる

おれもかうして

ゐるうちにや

おれも日暮れて

しまふだらう

## いとどの虫

青い月夜だ

いとどの虫よ

<ruby><rb>河原蓬</rb><rt>かはらよもぎ</rt></ruby>は

<ruby><rb>末</rb><rt>うら</rt></ruby>から枯れる

青い月夜も

いつまで続く

鳴いてくれるな

いとどの虫よ

## 千羽烏

生れ故郷の

<ruby><rb>父母</rb><rt>ととかか</rt></ruby>さまよ

<ruby><rb>今日</rb><rt>けふ</rt></ruby>もわたしは

糸とりながら

父と云ひました

母と云ひました

千羽烏の

カホカホ声よ

父が恋しい

母なつかしい

## 薔薇の花さへ

## 一

薔薇の花さへ

真赤に咲くに

二度と帰らぬ

わかれた恋よ

夢か　涙か

流れの水か

わたしや<ruby><rb>口惜</rb><rt>くやし</rt></ruby>い

捨てたか恋よ

## 二

薔薇の花さへ

真赤に咲くに

帰つて下さい

わかれた恋よ

夢も　涙も

流れの水も

わたしや口惜い

帰らぬ恋よ

三

薔薇の花さへ

真赤に咲くに

忘れられない

せつない恋よ

夢と　涙と

浮世の風に

わたしや口惜い

しぼんだ恋よ

## わたしや黒猫

## 一

わたしや黒猫

闇夜がすきよ

寒いロシヤへ

渡ろか　<ruby><rb>行</rb><rt>ゆ</rt></ruby>こか

行こかロシヤの

雪降る国へ

身まで売られた

わしや黒猫よ

## 二

風は　吹く吹く

港の沖に

寒いロシヤの

国吹く風よ

行こよ<ruby><rb>明日</rb><rt>あした</rt></ruby>は

ロシヤの国へ

どうせ売られた

わしや黒猫よ

## 三

鳥は空飛ぶ

空飛ぶ鳥よ

つれて行かぬか

ロシヤの国へ

ロシヤは恋しい

火を吐く国か

たよりすくない

わしや黒猫よ

## 同じ国なら

同じ国なら

故郷の人か

聞いただけでも

なつかしう思ふ

今の　今まで

忘れてゐたが

村の娘で

わしやゐた頃よ

思ひ出したぞ

涙の種を

## 暴風の夜

飲めよ　コクテール

うたへよ　未来の歌を

赤く爛れた

二人のこころ

弾こか　バラライカ

ロシヤの歌を

空は闇夜で

星さへ見えず

窓を　ノツクする

<ruby><rb>暴風</rb><rt>あらし</rt></ruby>よ　雨よ

<ruby><rb>明日</rb><rt>あす</rt></ruby>の夜明が

またれてならぬ

## 但馬山国

<ruby><rb>但馬</rb><rt>たじま</rt></ruby><ruby><rb>山国</rb><rt>やまぐに</rt></ruby>

三日月さまも

山の蔭から

蔭へとはいる

山の蔭かよ

三日月さまは

但馬山国

恋の星月夜

## 春降る雪

<ruby><rb>何</rb><rt>な</rt></ruby>にが　不思議だ

春降る雪は　ヨー

山の峰さへ

<ruby><rb>一夜</rb><rt>いちや</rt></ruby>で解ける

わしの<ruby><rb>扱帯</rb><rt>しごき</rt></ruby>も

春降る雪か　ヨー

<ruby><rb>伊那</rb><rt>いな</rt></ruby>に来た夜に

不思議に解けた

## 伊那の龍丘

<ruby><rb>伊那</rb><rt>いな</rt></ruby>の<ruby><rb>龍丘</rb><rt>たつをか</rt></ruby>

桃の花盛り

<ruby><rb>春蠶</rb><rt>はるこ</rt></ruby>掃きませうか

籠ロヂ乾そか

春蠶<ruby><rb>毛子</rb><rt>けご</rt></ruby>になつた

日和はよいし

<ruby><rb>簇</rb><rt>まぶし</rt></ruby>たたいて

桑摘み唄よ

## 霧ヶ岳から

霧ヶ岳から

朝立つ霧よ

霧を見てさへ

<ruby><rb>父母</rb><rt>ちちはは</rt></ruby>さまを

思ひ出されて

どうもならぬ

故郷恋しい

あの山蔭の

霧は消えても

父母さまを

思ひ出されて

どうもならぬ

## かなしい海

ざんぶざんぶと

越後の海は

恋の海かよ

<ruby><rb>海鵯</rb><rt>うみひよどり</rt></ruby>よ

はなればなれに

波々打つな

同じ海でも

越後の海は

ざんぶざんぶと

かなしい海か

はなればなれに

波々打つな

## 茄子畑

<ruby><rb>茄子</rb><rt>なすび</rt></ruby>ヤうれたかと

畑を覗きや

茄子ヤうれずに

まだ花盛り

ひよいと茄子の

木の下見たりや

蟻の行列ア

続いてる

## 運動踊り（四季の歌）

## 春

春の花かよ

桜の花は

春の花だよ

あの花は

チヤチヤラチヤ　ヤツトサ

## 夏

夏の空かよ

夕立雲は

夏の空だよ

あの雲は

チヤチヤラチヤ　ヤツトサ

## 秋

秋の月かよ

尾花の上に

秋の月だよ

あの月は

チヤチヤラチヤ　ヤツトサ

## 冬

冬の風かよ

山吹く風は

冬の風だよ

あの風は

チヤチヤラチヤ　ヤツトサ

## 宮城野小唄

□

さんさ<ruby><rb>時雨</rb><rt>しぐれ</rt></ruby>は

夜来ちや

降りやる

<ruby><rb>萱</rb><rt>かや</rt></ruby>の枯れ穂に来ちや

降りやる

□

塩の<ruby><rb>塩釜</rb><rt>しほがま</rt></ruby>

石の釜

欲しや

鉄の錆釜ぢや

塩アたけぬ

## つばくらめ

<ruby><rb>浜町</rb><rt>はまちやう</rt></ruby>へ　来て幾年になるだらう

物干台の

つばくらめ

お前も旅の鳥だわネ

<ruby><rb>昨日</rb><rt>きのふ</rt></ruby>までなにも云はずにゐたけれど

わたしも旅の

鳥なのヨ

もうわたしや遠いところへ

ゆくんだよ

物干台の

つばくらめ

<ruby><rb>今日</rb><rt>けふ</rt></ruby>はわかれだ

泣かないか

## お艶

お<ruby><rb>艶</rb><rt>つや</rt></ruby>が風呂にはいつてゐると

若い男が

だましに来た

小さい声でだましてゐる

お艶がざぶり湯をかけてやると

男はうろうろしてゐたが

裏から

すーつと逃げて行つた

馬は<ruby><rb>厩</rb><rt>うまや</rt></ruby>で

<ruby><rb>馬堰棒</rb><rt>ませんぼ</rt></ruby>を

がらんがらんと鳴らしてゐる

天の川は北から西へ流れてゐた

## 旅の鳥

山に春雨

野に<ruby><rb>茅花</rb><rt>つばな</rt></ruby>

花のかげかは

つばくらめ

去年<ruby><rb>常陸</rb><rt>ひたち</rt></ruby>の

ふるさとの

山に来もした

つばくらめ

雨は降れども

つばくらは

花に寝もせぬ

旅の鳥

野にも山にも

春の日の

雨は糸より

細く降る

## 篠藪

<ruby><rb>蝸牛</rb><rt>ででむし</rt></ruby>よ

黙り腐つた

蝸牛よ

渦を巻いてる蝸牛よ

何が恋しい

篠藪に

さらさら　さらと　雨が降る

<ruby><rb>夢現</rb><rt>ゆめうつつ</rt></ruby>に

<ruby><rb>己</rb><rt>おれ</rt></ruby>は暮した

蝸牛よ

己に悲しいコスモスの

花と花とに雨が降る

もう己の

家は<ruby><rb>最終</rb><rt>をはり</rt></ruby>だ

蝸牛よ

田もいらぬ

畑もいらぬ

篠藪に

さらさら　さらと　雨が降る

## 萱の花

誰に見せうとて

髪結ふた

西の山には

<ruby><rb>萱</rb><rt>かや</rt></ruby>の花

誰に解かそと

帯締めた

東の山にも

萱の花

萱の枯れ葉に

だまされた

お綱さまはと

懸巣啼く

## みそさざい

わたしの<ruby><rb>姉</rb><rt>ねえ</rt></ruby>さん

篠藪で

さつさ　お背戸の

<ruby><rb>鷦鷯</rb><rt>みそさざい</rt></ruby>

誰にも言はずに

ゐてお呉れ

去年の暮にも

篠藪で

さつさ　お背戸の

鷦鷯

誰にも言はずに

ゐてお呉れ

## 風に吹かれて

風に吹かれて

そよそよと

山の枯葉は

皆落ちた

木曾に<ruby><rb>木榧</rb><rt>きがや</rt></ruby>の

実はうれる

かへれ信濃の

旅烏

茶の樹畑の

豆食べた

鳩は畑の

どこで啼く

## 荒野

花と云ふ花は咲けども

妻と云ふ

花は咲かない

おお　淋し

<ruby><rb>荒野</rb><rt>あれの</rt></ruby>の果てに

咲く花は

妻と云はりヨか

おお　淋し

風に吹かれて飛ぶ雲は

荒野の　果ての　野の　果ての

わたしに　<ruby><rb>何</rb><rt>な</rt></ruby>んで

恋しかろ

## 子安貝

渚の　渚の

子安貝

波　どんど

波　どんど

子安貝

<ruby><rb>今日</rb><rt>けふ</rt></ruby>から　ふたりで

暮しませう

お前も

わたしも

子安貝

## 一軒家

姉は　男に

だまされた

<ruby><rb>野中</rb><rt>のなか</rt></ruby>の一軒家の

きりぎりす

<ruby><rb>機場</rb><rt>はたば</rt></ruby>に売られた

妹は

とんがらがん　とんがらがん

暮してる

姉は　男に

だまされた

野中の一軒家の

きりぎりす

青い<ruby><rb>芒</rb><rt>すすき</rt></ruby>に

降る雨は

ちんちりりん　ちんちりりん

降りました

## 白露虫

かげろふの

あしたはまたぬ命だと

たよりは来たが

どうしよう

ひとつにはまたひとつには

かすかに白き

花でせう

しよんぼりとまたひとつには

さびしく咲いた

花でせう

かなしくもまたふたつには

涙に咲いた

花でせう

かげろふの

糸より細き命だと

たよりは来たが

どうしよう

## 雁

<ruby><rb>今朝</rb><rt>けさ</rt></ruby>も　南へ

<ruby><rb>下総</rb><rt>しもふさ</rt></ruby>の

<ruby><rb>雁</rb><rt>かり</rt></ruby>が啼き啼きたちました

さらば　さらばと

下総の

風の吹くのにたちました

親と別れた

<ruby><rb>故郷</rb><rt>ふるさと</rt></ruby>の

空を見てゐた雁でせう

旅の身ゆゑに

下総の

風の吹くのにたちました

## 濡れ乙鳥

逢ひはせぬかよ

十六島で

<ruby><rb>潮来</rb><rt>いたこ</rt></ruby>出島の

ぬれ<ruby><rb>乙鳥</rb><rt>つばくら</rt></ruby>に

潮来出島の

ぬれ乙鳥は

いつも春来て

秋帰る

## 空飛ぶ鳥

赤いはお寺の

<ruby><rb>百日紅</rb><rt>ひやくじつこう</rt></ruby>

白いは畑の

<ruby><rb>蕎麦</rb><rt>そば</rt></ruby>の花

空飛ぶ鳥ゆゑ

巣が恋し

別れた子ゆゑに

子が恋し

<ruby><rb>木瓜</rb><rt>ぼけ</rt></ruby>の花咲く

ふるさとの

国へ帰れば

皆恋し

## 枯れ山唄

<ruby><rb>潮来</rb><rt>いたこ</rt></ruby>出島の

<ruby><rb>五月雨</rb><rt>さみだれ</rt></ruby>は

いつの夜の間に

降るのだろ

枯れて呉れろと

枯れ山の

風は幾日

吹いただろ

<ruby><rb>常陸</rb><rt>ひたち</rt></ruby>鹿島の

<ruby><rb>神山</rb><rt>かみやま</rt></ruby>に

<ruby><rb>己</rb><rt>おれ</rt></ruby>が涙の

雨が降れ

## 土蔵の壁

わたしの胸の

恋の火は

いつになつたら

消えるだろ

<ruby><rb>竈</rb><rt>かまど</rt></ruby>の土は

<ruby><rb>樺色</rb><rt>かばいろ</rt></ruby>の

焔に燃えてをりました

君はたしかに

夕暮の

野に咲く花の

露でした

土蔵の壁に

<ruby><rb>相合</rb><rt>あひあひ</rt></ruby>の

傘にかかれてありました

## 儚き日

君のたよりの

来た日から

かなしい噂がたちました

水に流して呉れろとは

夢と思への

謎か知ら

走り書きだが

<ruby><rb>仮名文字</rb><rt>かなもじ</rt></ruby>で

「涙」と記してありました

水に流して呉れろとは

熱い涙の

ことか知ら

## 祇園町

友禅の　赤く燃えたつ

<ruby><rb>祇園町</rb><rt>ぎをんまち</rt></ruby>

銀の糸の

雨は<ruby><rb>斜</rb><rt>ななめ</rt></ruby>に降りしきる

渋色の　蛇の目の傘に

降る雨も

上に下にと降りしきる

鴨川の　河原に啼いた

河千鳥

君と別れた路次口に

雨はしきりと降りしきる

## お糸

雑木林の

<ruby><rb>啄木鳥</rb><rt>たくぼくてう</rt></ruby>は

杉の枯れ木を

<ruby><rb>啄</rb><rt>つつ</rt></ruby>いて啼いた

杉の枯れ木を

啄木鳥は

<ruby><rb>無性</rb><rt>むしやう</rt></ruby>　やたらに

啄いて啼いた

掛けた襷の

解けたも知らず

涙うかべて

お糸は見てた

## 霜枯れ

裏の<ruby><rb>田甫</rb><rt>たんぼ</rt></ruby>で

<ruby><rb>鴫</rb><rt>しぎ</rt></ruby>がゆふべ啼いた

ささげ畑の　<ruby><rb>暴風</rb><rt>あらし</rt></ruby>の晩も

君は忍んで　逢ひに来て

呉れた

裏の田甫で

鴫がゆふべ啼いた

鴫も田甫も霜枯れだけど

君は<ruby><rb>今夜</rb><rt>こよひ</rt></ruby>も　逢ひに来て

呉れよう

## 螢草

垣根の外に

来ては泣く

<ruby><rb>故郷</rb><rt>ふるさと</rt></ruby>の

恋しい唄に聞きほれて

垣根の外に

来ては泣く

<ruby><rb>下野</rb><rt>しもつけ</rt></ruby>の　<ruby><rb>機場</rb><rt>はたば</rt></ruby>に

しぼむ<ruby><rb>螢草</rb><rt>ほたるぐさ</rt></ruby>

垣根の外に

故郷の

恋しい唄を

聞いて泣く

## 小室の小笹

裏戸覗いて　裏から

帰る

紺の前掛　<ruby><rb>麻裏</rb><rt>あさうら</rt></ruby>草履

あなた一人に

<ruby><rb>情</rb><rt>じやう</rt></ruby>立てましよと

泣いて別れた　<ruby><rb>小室</rb><rt>こむろ</rt></ruby>の

<ruby><rb>小笹</rb><rt>こざさ</rt></ruby>

裏戸覗いて　裏から

帰る

紺の前掛　麻裏草履

## 芒の葉

「死なば共だ」と

<ruby><rb>新吉</rb><rt>しんきち</rt></ruby>さんは

裏の　お玉坊と

畑で泣いた

ウンニヤ　新吉さんは

小指の先を

細い<ruby><rb>芒</rb><rt>すすき</rt></ruby>の

葉で切りました

裏の　お玉坊も

泣き泣き指を

共に芒の

葉で切りました

## 恋の日

春の<ruby><rb>名残</rb><rt>なごり</rt></ruby>の

暮るる日に

紅き花さへ

<ruby><rb>惜</rb><rt>をし</rt></ruby>みたり

夕べ　畑で

恋人を

待ちしも

今は昔なり

夏のをはりに

<ruby><rb>露草</rb><rt>つゆぐさ</rt></ruby>の

白き花さへ

惜みたり

河原の岸で

恋人と

泣きしも

今は昔なり

## 西瓜畑

<ruby><rb>西瓜畑</rb><rt>すゐくわばたけ</rt></ruby>さ

お月さま出てる

そろりそろりと

お月さま出てる

土をたたいたら

どしんこ響いた

姉も<ruby><rb>妹</rb><rt>いもと</rt></ruby>も

おさらば　さらば

## 旅で暮らせば

旅で暮らせば

<ruby><rb>茅野</rb><rt>かやの</rt></ruby>の

雨も

さらり　さらりと

身にしみる

さらり　さらりと

茅野の

雨は

さらり　さらりと

身にしみる

## 沙の数

潮がれ浜で聞く唄は

みんな悲しい

唄ばかり

沙の数ほどかぞへても

別れた人は

帰らない

涙ぐましくなつて来て

泣かずに　泣かずに

ゐられよか

## 昔の月

お前と逢うた

武蔵野に

青い　昔の　月が出た

お前も　見たろ

武蔵野の

畑の中に家が建つ

畑の　中の　<ruby><rb>夕雲雀</rb><rt>ゆふひばり</rt></ruby>

もう　おれは

<ruby><rb>故郷</rb><rt>くに</rt></ruby>へ帰るぞよ

## 帰らぬ人

川の向うで

<ruby><rb>水鶏</rb><rt>くひな</rt></ruby>が　啼いた

帰りやんせ

帰りやんせ

月も　おぼろに

河原さ出てる

帰りやんせ

帰りやんせ

きつと忘れて

ゐるんだよ

## 片恋

恋しくて

裏へ出て見りや

青い空

はかない

わたしの

<ruby><rb>片恋</rb><rt>かたこひ</rt></ruby>よ

はかない

わたしに

<ruby><rb>何故</rb><rt>なぜ</rt></ruby>したの

<ruby><rb>荒海</rb><rt>あらうみ</rt></ruby>のやうな

こころに

何故したの

## 煙草の花

お<ruby><rb>蔦</rb><rt>つた</rt></ruby>嫁さま

<ruby><rb>煙草</rb><rt>たばこ</rt></ruby>の花は

元の男の　畑に咲いた

お蔦嫁さま

もう　諦めた

何にも縁だと　もう諦めた

切れた障子の

穴から見たら

後向きして糸繰りしてる

## 石地蔵

学校先生よ

石地蔵さまも

赤い<ruby><rb>涎掛</rb><rt>よだれかけ</rt></ruby>

かけてゐる

烏ア欲しくて

涎掛見てる

学校先生よ

<ruby><rb>何</rb><rt>な</rt></ruby>じよにしぺ

## 櫛

裏の川端の

さらさら<ruby><rb>蓬</rb><rt>よもぎ</rt></ruby>

思ひ返して

みる気はないか

<ruby><rb>今朝</rb><rt>けさ</rt></ruby>も　裏戸に

櫛が落ちてゐた

通つて来たのか

可哀想なものだ

## 葛飾の夏

卯の花が散る

<ruby><rb>時鳥</rb><rt>ほととぎす</rt></ruby>が啼く

沼の中に

<ruby><rb>菖蒲</rb><rt>あやめ</rt></ruby>の花も咲いてゐる

沼の中の

菖蒲の花よ

葛飾に

今<ruby><rb>二月</rb><rt>ふたつき</rt></ruby>もゐたかつた

家も屋敷もない　<ruby><rb>己</rb><rt>おれ</rt></ruby>は

去年の夏は東京に

今年の今は葛飾に

わかれねばならぬ時が来た

この住み馴れた

葛飾の

菖蒲の花よ

また逢はう

## 港の時雨

蛇の目<ruby><rb>傘</rb><rt>からかさ</rt></ruby>に

<ruby><rb>時雨</rb><rt>しぐれ</rt></ruby>が降るに

月日かぞへて

港を見てる

待つはつらかろ

待たるる身より

<ruby><rb>伏木港</rb><rt>ふしきみなと</rt></ruby>の

船頭さん<ruby><rb>達</rb><rt>だち</rt></ruby>よ

## 蘆枯れ唄

蘆が枯れたら

どこで逢ひませう

前の河原は

石まで枯れるし

蘆が枯れたら

どこで逢ひませう

裏の畑は

土まで枯れるし

蘆が枯れたら

どこで逢ひませう

蘆の枯れ葉の

蔭で逢ひませう

## おけらの唄

おけらの唄の

さびしさに

窓にもたれて

すすり泣く

まぼろし<ruby><rb>草</rb><rt>さう</rt></ruby>も

コスモスも

花は昔の

ままで咲く

おけらの唄の

さびしさに

畳の上に

伏して泣く

## 鶫

今日も<ruby><rb>鶫</rb><rt>つぐみ</rt></ruby>が

丘に来て啼いた

おれも泣きたい　鶫の鳥よ

空は乳色に

また日が暮れる

死んで別れた

人ではないし

忘れようとて　忘らりよか

## 錆

窓の格子によりかかり

「いつまた来るの」と

泣く女

錆た庖丁の　かなしくも

「はかない身だよ」と

さうか知ら

ただ明易い　夏の夜の

街はあかるい

青すだれ

<ruby><rb>磨</rb><rt>と</rt></ruby>いでも磨いでも　庖丁の

錆は磨いでも

さうか知ら

## 夕の月

お<ruby><rb>仲姉</rb><rt>なかあね</rt></ruby>さま

畑の中で

しやなりしやなりと

麦踏みしてる

<ruby><rb>雁</rb><rt>かり</rt></ruby>は帰るし

<ruby><rb>夕</rb><rt>ゆふべ</rt></ruby>の月は

<ruby><rb>槶林</rb><rt>くぬぎばやし</rt></ruby>の上から

出てる

つまらないよと

涙で<ruby><rb>言</rb><rt>ゆ</rt></ruby>ふた

お仲姉さま

丸顔だつけ

## スイッチヨ

スイッチヨスイッチヨと

大阪の

街のはずれで鳴くスイッチヨ

姉は筑紫の

長崎へ

<ruby><rb>妹</rb><rt>いもと</rt></ruby>も筑紫の

長崎へ

スイッチヨスイッチヨと

蔦の葉の

上にとまつて鳴くスイッチヨ

## おけら

左官が　左官が

蔵建てた

おけらが三匹

出て鳴いた

大工が　大工が

家建てた

お月さん　ぽかんと

眺めてる

## 女工唄

雨の降る日は

雨だれ

小だれ

<ruby><rb>何</rb><rt>な</rt></ruby>にも恋しくないが

公休日が恋し

空の弁当箱

雨だれ

小だれ

腹の減るたび

<ruby><rb>故郷</rb><rt>くに</rt></ruby>の親思ふ

いやな監督さんだ

雨だれ

小だれ

何にも恋しくないが

公休日が恋し

かかれかかれと

モータが廻る

なにもかかりませうか

雨だれ

小だれ

## 釜山にて

<ruby><rb>牧</rb><rt>まき</rt></ruby>の島から

<ruby><rb>対馬</rb><rt>つしま</rt></ruby>が見ゆる

最早対馬も

春だろに

海にや海霧

朝から立ちやる

対馬見るなの

霧ぢややら

## 鼬

<ruby><rb>鼬</rb><rt>いたち</rt></ruby>ア騒ぐから

背戸へ出て見たりや

烏ア河原で

水浴びしてた

山の頂上にや

薄雲かかる

今夜　山から

雨ア降るか

## 娘と劉さん

## Ⅰ

娘

<ruby><rb>劉</rb><rt>リウ</rt></ruby>さん

赤ん<ruby><rb>坊</rb><rt>ぼ</rt></ruby>が生れたならばどうしませう

<ruby><rb>何処</rb><rt>どこ</rt></ruby>へたのんで育てませう

劉

ワタシ　ワカラナイ　アナタ　スル　ヨロシー

娘

横浜の叔母さん<ruby><rb>所</rb><rt>とこ</rt></ruby>へ遣りませう

新しい<ruby><rb>一身</rb><rt>ひとつみ</rt></ruby>の<ruby><rb>一</rb><rt>ひとつ</rt></ruby>も着せて遣りませう

## Ⅱ

娘

叔母さんに断られたらどうしませう

劉

ワタシ　クニ　トホイ　ワカリマセン

娘

悲しいけれど捨てませう

顔の見えない闇の晩

ミルクの管を<ruby><rb>哺</rb><rt>くく</rt></ruby>ませて――公園のベンチの上に捨てませう

## Ⅲ

娘

お月夜の晩であつたらどうしませう

お月夜が続いて居たらどうしませう

育てませうか捨てましよか

劉

ワタシ　ニホン　タツ　アナタ　タノム

娘

薄情な　薄情な　劉さん

思ひ切つて――悲しいけれど捨てませう

ベンチの上に青青と月がさしたら泣くでせう

わたしの顔をきつと眺めて泣くでせう

劉さん

劉さん

その時のわたしの心はどんなでせう