そらのふちは沈んで行き、松の並木のはてばかり黝んだ琥珀をさびしくくゆらし、
その町のはづれのたそがれに、大きなひのきが風に乱れてゆれてゐる。気圏の松藻だ、ひのきの髪毛。
まっ黒な家の中には黄いろなラムプがぼんやり点いて顔のまっかな若い女がひとりでせわしく飯をかきこんでゐる。
かきこんでゐる。その澱粉の灰色。
ラムプのあかりに暗の中から引きずり出された梢の緑、
実に恐ろしく青く見える。恐ろしく深く見える。恐ろしくゆらいで見える。
おんな
宮沢 賢治
そらのふちは沈んで行き、松の並木のはてばかり黝んだ琥珀をさびしくくゆらし、
その町のはづれのたそがれに、大きなひのきが風に乱れてゆれてゐる。気圏の松藻だ、ひのきの髪毛。
まっ黒な家の中には黄いろなラムプがぼんやり点いて顔のまっかな若い女がひとりでせわしく飯をかきこんでゐる。
かきこんでゐる。その澱粉の灰色。
ラムプのあかりに暗の中から引きずり出された梢の緑、
実に恐ろしく青く見える。恐ろしく深く見える。恐ろしくゆらいで見える。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c宮沢 賢治「女」(新字旧仮名)、底本『【新】校本宮澤賢治全集 第十二巻 童話Ⅴ・劇・その他 本文篇』筑摩書房、1995年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 048199_000081, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079