人間の悲哀とは、<span data-tei-rend="bouten 白丸傍点 right" style="text-emphasis-style: open circle; text-emphasis-position: over right">自己の範圍</span>を知ることである。生れ落ちた時、私は何も知らなかつた。その時何の悲しみがあつたらう。經驗と教育とは日一日と私の、自己及自己以外の事物に關する知識を廣くし、深くした。――私は日一日と、自己の範圍といふものを一劃々々知つてゆく樣になつた。

何の自由、何の領土が人間にある？　自己の範圍といふものは、知れば知る程小さくなつてゆく、動きのとれぬものになつてゆく。

常に何らかの努力をせねばならぬ人間の運命を、私はしみ〲と痛ましく思ふ。