Soranoha

榛名湖の公魚釣り

はるなこのわかさぎつり

佐藤 垢石

榛名湖の公魚わかさぎ釣りは非常に繁盛である。

十二月中旬から釣れはじめたのであるが、二月一杯は釣れるであろう。例年からみると魚の育ちが大そうよろしく、四寸五分乃至五寸、平均五匁はある。

毎日少ない日でも三、四十人、多い日には七、八十人の釣り手が湖上に右往左往して大した賑わいである。それが極めて初歩の人でも一日に五、六十尾は下くだらない。名手になると二百尾以上も釣るから、貫目釣りである。

本場といわれる霞ヶ浦から東京市中へ出てくるものは、形の小さい上に渋味が強く、色が黒ずんでいて、上等の食味を持っているとはいえない。

ところが榛名湖の公魚は、丈は長い上にまるまる肥っていて、どうした関係か渋味が少ない。それから体色も若鮎のような光りを持っていて、あの香りこそないが味は若鮎と同じである。

白焼きの橙酢とうす、から揚げ、ふらい、椀種、味噌田楽。何にしてもおいしい。チリ鍋にしようものなら思わず晩酌を過ごす。

十二月の中旬、木枯らしは梢の効用を吹き飛ばした頃は、まだ湖面に氷が張っていないから小舟を水に浮かべて釣ったが、一月に入ると湖はすっかり氷結するから、厚い氷へ、一尺四方くらいの穴をあけて、そこへ鈎を下ろすのである。ブルブルと面白いように釣れる。

榛名富士、相馬山、ヤセオネ、天神峠に囲まれた、広いなだらかな火口原の野の末に、描いたような枯れ林を水際に映した美しい榛名湖で、公魚を釣る気分はまことに愉快である。

しかし氷の穴から釣るよりも、水に舟を浮かべて釣る方が面白い。すべて脈釣りで、ここ独特の仕掛けである。

底本 / Source edition

底本:「垢石釣り随筆」つり人ノベルズ、つり人社
1992(平成4)年9月10日第1刷発行
底本の親本:「釣随筆」市民文庫、河出書房
1951(昭和26)年8月発行
初出:「釣りの本」改造社
1938(昭和13)年発行
入力:門田裕志
校正:仙酔ゑびす
2007年7月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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書誌 / Bibliography
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佐藤 垢石「榛名湖の公魚釣り」(新字新仮名)、底本『垢石釣り随筆』つり人ノベルズ、つり人社、1992年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 046806_001248, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite