電信柱が寒い風にあたってピーピーと泣いておりました。
黒い雲が来て、
「何を泣いているのだえ」
「寒いからさ。お前のような雲が来るから寒いのだ。こちらへ来ないでくれ」
「おれが悪いのじゃない。風がわるいのだ。おれは風につれられて来るのだから」
「おれは黒いものが大嫌いだ。この間も鴉がとまって、アホーアホーとおれを笑った」
「それじゃこれはどうだ」
と言ううちに白い雪をチラチラと降らしました。
電柱はだまってしまいました。
でんしんばしらとくろくも
夢野 久作、香倶土 三鳥
電信柱が寒い風にあたってピーピーと泣いておりました。
黒い雲が来て、
「何を泣いているのだえ」
「寒いからさ。お前のような雲が来るから寒いのだ。こちらへ来ないでくれ」
「おれが悪いのじゃない。風がわるいのだ。おれは風につれられて来るのだから」
「おれは黒いものが大嫌いだ。この間も鴉がとまって、アホーアホーとおれを笑った」
「それじゃこれはどうだ」
と言ううちに白い雪をチラチラと降らしました。
電柱はだまってしまいました。
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c夢野 久作、香倶土 三鳥「電信柱と黒雲」(新字新仮名)、底本『夢野久作全集7』三一書房、1970年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 046724_000096, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079