Soranoha

大勢順応

たいせいじゅんのう

勝 海舟

憲政党が、伊藤さんに代つて、内閣を組織した当時、頻りに反対して騒ぎまはつた連中も、己れは知つて居るよ。だが随分見透しの付かない議論だと思つて、己れなどは、独りで笑つて居たのさ。御一新の際に、薩摩や、長州や、土州が政権を執れたとて、なに彼等の腕前で、迚も遣り切れるものかと、榎本や、大鳥などは、向きになつて怒つたり、冷やかしたりした連中だ。所がどうだ、暫くすると、自分から始めて薩長の伴食になつたではないか。何も大勢さ。併し今度の内閣も、最早そろ〱評判が悪くなつて来たが、あれでは、内輪もめがして到底永くは続くまいよ。全体、肝腎の御大将たる大隈と板垣との性質が丸で違つて居る。板垣はあんな御人よし、大隈は、あゝ云ふ抜目のない人だもの、とても始終仲よくして居られるものか、早晩必ず喧嘩するに極つて居るよ。大隈でも板垣でも、民間に居た頃には、人の遣つて居るのを冷評して、自分が出たらうまくやつてのけるなどゝと思つて居たであらうが、さあ引き渡されて見ると、存外さうは問屋が卸さないよ。所謂岡目八目で、他人の打つ手は批評が出来るが、さて自分で打つて見ると、なか〱傍で見て居た様には行かないものさ。

底本 / Source edition

底本:「日本の名随筆 別巻95 明治」作品社
1999(平成11)年1月25日第1刷発行
底本の親本:「亡友帖・清譚と逸話 〔復刻原本=海舟全集第十巻〕」原書房
1968(昭和43)年4月20日
入力:ふろっぎぃ
校正:浅原庸子
2006年2月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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書誌 / Bibliography
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勝 海舟「大勢順応」(新字旧仮名)、底本『日本の名随筆 別巻95 明治』作品社、1999年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 046191_000354, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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