光つて泉の湧くそばに 僕の小さな窪がある。  僕の丈ほどふかくない。 はりえにしだなど生えてゐる。 夏には夏の花が咲く。  黄つぽい花や赤い花。 泉を僕は海と呼ぶ あたりの丘を山と呼ぶ。  そんなに僕は小いのだ。 僕はつくつた舩や町。 僕はさがした洞や穴。  洞や穴には名をつけた。 あたりのものは僕のもの、 頭の上の雀でも、  泉の中の小ばやでも。 ここでは僕は王様だ。 僕は蜂どもうたはせる。  僕は燕をあそばせる。 ここより広い海はない。 ここより大きな原はない。  僕よりほかに王はない。 けれど日暮が来た時に、 母さんの声が呼びに来た。  「坊やお帰りごはんだよ。」 窪よさよなら僕のくぼ。 泉さよなら、よい水よ。  花もさよなら僕の花。 そしてお家にきて見れば、 何て大きな乳母だらう。  何て冷い部屋だろう。