ねずみさんはとてもなまけ者です。そのねずみさんが、ねずみさんのおかみさんの部屋にとんで帰つて言ひますのに、

「おかみさんや、早く着物を着換えなさい。一番いい着物に。帽子も一等いいのに。それから、わしにも一番いい服を出しておくれ。」

おかみさんは、ねずみさんの言ふことがよく分らないので、返事をしませんでした。ねずみさんは、大きな声でどなりました。

「下の<ruby><rb>家</rb><rt>うち</rt></ruby>のチユウチユウさんのところへ遊びに行くんだから。」おかみさんはしぶしぶ、「チユウチユウさんのところへ？　何しに行くんです。」と聞きました。ねずみさんは、

「それがさ、まあお聞き。今ね、わしがチユウチユウさんのとこの前を通つたのさ。そしたらお前、あぶらあげ、ね。あぶらあげを焼いてる<ruby><rb>匂</rb><rt>にほ</rt></ruby>ひがプンプンしてんだよ。早く、遊びに行けば、きつと、分け前がもらへるよ。さ、早く早く。」と<ruby><rb>呼吸</rb><rt>いき</rt></ruby>を切らして言ひました。

「ほんと？　ぢや早くしないとお前さん、<ruby><rb>駄目</rb><rt>だめ</rt></ruby>になつてしまひますよ。早く、早くつたら。」とおかみさんも仲々<ruby><rb>慾張</rb><rt>よくば</rt></ruby>りでしたから、二人で大あわてにあわてて仕度をして出掛けました。

二人は目の色を変へてお庭を走りぬけて、大きな門のそばを通つて、やつとこさ、大きなお部屋の前まで来ました。「おや、<ruby><rb>路</rb><rt>みち</rt></ruby>をまちがつたやうだよ。困つたなあ。」とねずみさんは、こわごわなかを見ましたら、そこには、山のやうに大きなおもちやの<ruby><rb>熊</rb><rt>くま</rt></ruby>さんがすわつてゐました。二人はビツクリしてしまひましたが、こんな事ぐらゐで引つかへすなんて事は出来ません。二人とも、とてもおとなしく、そして、頭を床にすりつける位低くおぢぎをして、「熊さん、私たち、路に迷つて、大変困つてをりますのですが、チユウチユウさんとこはどつちでございませうか。早く参りませんとあぶらあげの分け前を<ruby><rb>戴</rb><rt>いただ</rt></ruby>かれなくなりますから、早く教へて下さいませんか。」と言ひました。

熊さんはとてもをかしかつたので、フキ出しながら、

「お前さんみたいな夫婦はきつと道をまちがへるね。この机の上の穴を通つて、地下室へおいで。そこがチユウチユウさんのとこだ。」

二人はその路を出来る<ruby><rb>丈</rb><rt>だけ</rt></ruby>けはやくかけ出して、やつとチユウチユウさんの<ruby><rb>家</rb><rt>うち</rt></ruby>へ参りました。

「ごめん下さい。」とねずみさんが言ひますと、チユウチユウさんとそのおかみさんは、あぶらあげをたべたばかりの口をふきながら、出て来ましたので、ねずみさんとおかみさんはがつかりして、腰がぬけさうになりました。

「チユウチユウさんとこへなぞ、一生もう行くもんか。」と二人はプンプンおこつて帰つて来ました。気の毒なお話ですね。