Soranoha

髪床やの大根さん

かみとこやのだいこんさ

村山 籌子

今年十とおになつた、大根さんのお家うちはお父さんが髪床やさんでした。二人とも、おやさいの中で一番頭の毛が青く立派に生へてゐるので、誰たれでも、大根さんの家うちが髪床やさんをしてゐるのを笑ふものはありませんでした。

大根さんは毎日お父さんが方々の家うちへ髪を刈りに出張するので、お父さんの後うしろから髪を刈るはさみやバリカンを入れた箱を持つてついて行きました。

ある日、二人は大根さんのお友達の玉ねぎさんのお家うちへ行きました。そしてお父さんが、玉ねぎさんのお父さんの頭を刈つてゐるあひだに、大根さんは玉ねぎさんの頭をはさみで、ぎざ〱にちよんぎつてしまひました。

玉ねぎさんと大根さんはすつかり困つてしまつて、にかわを買つて来て一本一本つぎたしました。けれども、一本の所へ二本くつつけたりしたので、とても変てこになりました。

玉ねぎさんのお父さんはこれを見てすつかりおこつてしまつて、大根さんとお父さんを門の外へつき出して、

「もう、二度と お前たちには用事はないよ。」

と申しました。ほんとに困つたことになりました。

これを聞きつけた町の人たちは誰れも彼れも、大根さんのお父さんに髪を切つてもらふことを止やめました。そして玉ねぎさんが町を歩いてゐるのを見て、

「桑原、桑原。あんな頭にされるといやだからねえ。」

と申しました。

大根さんもお父さんも大変悲しみましたが仕方がありません。それから一と月位たつてから、

「何か別の商売を初めて見やうかしらん。」

と考へましたが、何といつても髪床やさんより外には、大根に向いた商売はないのでした。二人は困りました。ところが、この頃ごろになつて、

「大根さん、私の頭を刈つて下さい。」と方々からたのんで来るやうになりました。お父さんの大根さんは大よろこびでもあり、不思議でもありましたが、どうしても、そのわけがわかりませんでした。けれども、子供の大根はすぐそのわけがわかりました。そしてお父さんに、

「お父さん、玉ねぎさんの髪の毛が、もとのやうに、伸びたからだよ。」と申しました。

そしてそれは、ほんとのことでした。

底本 / Source edition

底本:「日本児童文学大系 第二六巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
初出:「子供之友」婦人之友社
1928(昭和3)年3月
※底本のテキストは、著者訂正稿によります。
入力:菅野朋子
校正:noriko saito
2011年3月29日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

この表示について / About this rendering

記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.

リリース / Release
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c
TEI
/works/044958_001172/tei
プレーンテキスト / Plain text
/works/044958_001172/plaintext
書誌 / Bibliography
/works/044958_001172/

村山 籌子「髪床やの大根さん」(新字旧仮名)、底本『日本児童文学大系 第二六巻』ほるぷ出版、1978年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 044958_001172, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite