今年<ruby><rb>十</rb><rt>とお</rt></ruby>になつた、大根さんのお<ruby><rb>家</rb><rt>うち</rt></ruby>はお父さんが髪床やさんでした。二人とも、おやさいの中で一番頭の毛が青く立派に生へてゐるので、<ruby><rb>誰</rb><rt>た</rt></ruby>れでも、大根さんの<ruby><rb>家</rb><rt>うち</rt></ruby>が髪床やさんをしてゐるのを笑ふものはありませんでした。

大根さんは毎日お父さんが方々の<ruby><rb>家</rb><rt>うち</rt></ruby>へ髪を刈りに出張するので、お父さんの<ruby><rb>後</rb><rt>うしろ</rt></ruby>から髪を刈るはさみやバリカンを入れた箱を持つてついて行きました。

ある日、二人は大根さんのお友達の玉ねぎさんのお<ruby><rb>家</rb><rt>うち</rt></ruby>へ行きました。そしてお父さんが、玉ねぎさんのお父さんの頭を刈つてゐるあひだに、大根さんは玉ねぎさんの頭をはさみで、ぎざ〱にちよんぎつてしまひました。

玉ねぎさんと大根さんはすつかり困つてしまつて、<span data-tei-rend="bouten 傍点 right" style="text-emphasis-style: filled sesame; text-emphasis-position: over right">にかわ</span>を買つて来て一本一本つぎたしました。けれども、一本の所へ二本くつつけたりしたので、とても変てこになりました。

玉ねぎさんのお父さんはこれを見てすつかりおこつてしまつて、大根さんとお父さんを門の外へつき出して、

「もう、二度と　お前たちには用事はないよ。」

と申しました。ほんとに困つたことになりました。

これを聞きつけた町の人たちは誰れも彼れも、大根さんのお父さんに髪を切つてもらふことを<ruby><rb>止</rb><rt>や</rt></ruby>めました。そして玉ねぎさんが町を歩いてゐるのを見て、

「桑原、桑原。あんな頭にされるといやだからねえ。」

と申しました。

大根さんもお父さんも大変悲しみましたが仕方がありません。それから一と月位たつてから、

「何か別の商売を初めて見やうかしらん。」

と考へましたが、何といつても髪床やさんより外には、大根に向いた商売はないのでした。二人は困りました。ところが、この<ruby><rb>頃</rb><rt>ごろ</rt></ruby>になつて、

「大根さん、私の頭を刈つて下さい。」と方々からたのんで来るやうになりました。お父さんの大根さんは大よろこびでもあり、不思議でもありましたが、どうしても、そのわけがわかりませんでした。けれども、子供の大根はすぐそのわけがわかりました。そしてお父さんに、

「お父さん、玉ねぎさんの髪の毛が、もとのやうに、伸びたからだよ。」と申しました。

そしてそれは、ほんとのことでした。