Soranoha

たまごとおつきさま

たまごとおつきさま

村山 籌子

むかし、のはらの一けんやに、にはとりが一羽すんでゐました。そののはらのむかふには、ひくい、きれいな山が三つならんで立つてゐました。

ある、月のいゝばんのこと、そのにはとりが、玉子を一つうみました。そのたまごに、丁度のぼつてきた月が、光りをさしかけましたので、たまごは、それは美くしくて、しんじゆのたまのやうに見えました。

にはとりはうれしくてたまらないので、玉子ばかり見てゐました。けれども、そのうちに、玉子は、だん〱消えていつて、かげばかりになり、おしまひには、そのかげさへも見えなくなつてしまひました。

ぼんやり、それを見てゐたにはとりは、たいへんびつくりして、おつきさまのところへかけて行つて、

「おつきさま、どうぞ、わたしのたまごを、かへしてください。」とたのみました。

すると、こんどは、きふに、おつきさまがわらひながら、だん〱しぼんで、たまごになつてしまひました。

にはとりは、たいへんよろこんで、

「ほんとですか、おつきさま、これがわたしのたまごですか。」といつて、それを羽の下に入れようとしますと、それが、見る間に大きくふくれて、三つならんだやまのむかふから、おつきさまになつてのぼつてきました。

あくるあさ、にはとりが目をさまして、のはらにいつてみますと、まへのばんのおつきさまが、しろくすきとほつて、空にのぼつてゐました。そこで、にはとりはおほきいこゑでなきました。

「それは、たまごか? おつきさまか? コケツ、コケツ。」

底本 / Source edition

底本:「日本児童文学大系 第二六巻」ほるぷ出版
1978(昭和53)年11月30日初刷発行
底本の親本:「日本童話選集 第一輯」丸善
1926(大正15)年12月
初出:「子供之友」婦人之友社
1924(大正13)年3月
※初出時の署名は「岡内籌子」です。
入力:菅野朋子
校正:noriko saito
2011年1月27日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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書誌 / Bibliography
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村山 籌子「たまごとおつきさま」(新字旧仮名)、底本『日本児童文学大系 第二六巻』ほるぷ出版、1978年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 044943_001172, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite