Soranoha

昭和の劇文学の全貌

しょうわのげきぶんがくのぜんぼう

岸田 国士

元来、戯曲は舞台で演ぜられるために書かれたものであるが、活字として読まれることも今日では考へなくてはならない。

戯曲作家は、さういふ理由から、いつでも自分の作品を、この二つの発表形式の上に成り立たせようとする。

西洋でも、劇文学は古いギリシャの時代から存在はしたけれども、劇詩人の作品が活字で読まれるやうになつたのは、ごく近代のことである。日本でも、近松や黙阿弥が読まれるといふのは、まづ、国文学の文献としてであらう。

大正昭和の頃になつて、今度は逆に、上演のあてもなく、雑誌に発表するためにのみ戯曲を書く傾向が生れた。しかも、それにも拘はらず、この時代に、戯曲の本質的な発展、進化が見られたのは面白い。

それは、言ふまでもなく、劇文学の創造が、新しい演劇運動と足並を揃へてゐたからである。

この集に収められてゐる作品は、昭和年代のいくつかの主要な演劇運動の流れのなかで、それぞれ作家としての成長を遂げた優れた才能の所産であり、いづれも、良心的な舞台にかけられ、しかも、画期的な成功をかち得た幸運な作品ばかりである。

同時代に、これらの作家と肩をならべ、記念すべき業績を残した、なほいくたりかの作家がないことはない。

昭和の劇文学の全貌は、少くとももう一、二巻を割かなければ窺ひ知ることは無理のやうである。が、それにも拘はらず、この全集の性格が明らかに、昭和の文壇ジャーナリスムの傾向を代表するものである限り、その間に占める戯曲文学の地位からみて、この巻の編集意図はまさに象徴的である。

底本 / Source edition

底本:「岸田國士全集28」岩波書店
1992(平成4)年6月17日発行
底本の親本:「昭和文学全集第二十四巻(昭和戯曲集) 月報第二十四号」角川書店
1953(昭和28)年11月10日発行
初出:「昭和文学全集第二十四巻(昭和戯曲集) 月報第二十四号」角川書店
1953(昭和28)年11月10日発行
入力:門田裕志
校正:noriko saito
2011年2月19日作成
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リリース / Release
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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岸田 国士「昭和の劇文学の全貌」(新字旧仮名)、底本『岸田國士全集28』岩波書店、1992年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 044853_001154, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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