Soranoha

文学座『夢を喰ふ女』を演出して

ぶんがくざ『ゆめをくうおんな』をえんしゅつして

岸田 国士

野上彰君の「夢を喰ふ女」の戯曲としての新しさは、現代の生活風景の中から、家族としてもつとも崩壊しやすい条件を持つている人間群をとらえて、それを心理的、もしくは思想的角度からではなく、一種の感覚的角度で、それらの人物個々の生態を描いていることと、戯曲の定石としての構成を無視して、人物の絵模様のリズミカルな動きを、そのまま投げ出していることとの二つにあると思う。

この作品の特色を現在の舞台条件である程度まで示そうとするには、俳優が自分の肉体を、なるだけ現代の人物の中の特殊なタイプにあてはめて、全体の人間群像の生活の中にある官能的なものを強調するという方法によらねばならない。したがつて装置、衣装、メーキャップのようなものは、本来ならなるだけ類型をさけて、様式化したものでやりたいが、現在経済事情その他の理由で演出意図通りのものは得られぬゆえ、その点多少とも手のとどくものの中から選ぶという消極的方法がとられた。

またこの芝居全体として作者が何を言はうとしているかということについては、観客に理解させるということには重きを置かず、感じさせるということに重きを置くのが、ぼくとしてはいいことだと思い、そこを強調しようとする演出の工夫があつた。言いかえればこの戯曲の上演にはオーケストラの演奏のような、調和と旋律をねらつたものであり、そのつもりで観てもらいたいと演出者として希望するのである。(三月十六日談)

底本 / Source edition

底本:「岸田國士全集27」岩波書店
1991(平成3)年12月9日発行
底本の親本:「学園新聞」京都大学新聞社
1948(昭和23)年3月22日
初出:「学園新聞」京都大学新聞社
1948(昭和23)年3月22日
入力:tatsuki
校正:門田裕志
2010年7月1日作成
2011年5月30日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

この表示について / About this rendering

記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.

リリース / Release
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c
TEI
/works/044747_001154/tei
プレーンテキスト / Plain text
/works/044747_001154/plaintext
書誌 / Bibliography
/works/044747_001154/

岸田 国士「文学座『夢を喰ふ女』を演出して」(新字新仮名)、底本『岸田國士全集27』岩波書店、1991年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 044747_001154, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite