Soranoha

演劇新潮と築地小劇場

えんげきしんちょうとつきじしょうげきじょう

岸田 国士

僕は、此の一年間、色々な事情で、あまり芝居を観にも行かず、月々発表される脚本も割合に読んでゐないから、劇壇全般に亘る感想といふやうなものは勿論書けない。

殊に旧劇や新派劇に対しては、能やオペラに対すると同様、殆ど批判的な眼を向けたことはない。もう少し生活に落ちつきができたら、自分らの国で、自分らの仕事が、今どういふ位置と関係にあるかといふことなども、広く見極めたいと思つてゐる。

処で、差し当り、今年に至つてから、僕の志してゐる仕事と、直接間接に、最も交渉の多かつたのは、雑誌演劇新潮と築地小劇場とである。色々な意味で、雑誌演劇新潮と築地小劇場とは大正十三年度の劇壇を刺激し、新劇復興の機運を助長したと思ふ。

私事に亘るやうであるが、僕は、自作発表の機会を演劇新潮に於て与へられたことを、山本有三氏の好意と倶に感謝してゐる。

それと、同時に、築地小劇場が、表面、僕とその芸術的立場を異にしながら、なほ且つ、ひとり、僕の期待を徐々に満たしつゝあることを密かに悦ぶものである。

底本 / Source edition

底本:「岸田國士全集19」岩波書店
1989(平成元)年12月8日発行
底本の親本:「文芸時代 第一巻第三号」
1924(大正13)年12月1日発行
初出:「文芸時代 第一巻第三号」
1924(大正13)年12月1日発行
入力:tatsuki
校正:Juki
2009年3月16日作成
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リリース / Release
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書誌 / Bibliography
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岸田 国士「演劇新潮と築地小劇場」(新字旧仮名)、底本『岸田國士全集19』岩波書店、1989年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 044332_001154, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite