Soranoha

明治開化 安吾捕物帖

めいじかいか あんごとりものちょう

坂口 安吾

この捕物帖はたいがい五段からできています。第一段は虎之介が海舟を訪ねて事件の説明にかかること。(但し、この段は省くことがあります。)第二は事件の説明。第三は海舟が推理のこと。第四段は新十郎が犯人を見つけだすこと。第五段は海舟が負け惜しみを云うこと。以上のうち第二段がほぼ全体の六分の五をしめ、全部が六十枚なら、この段に五十枚、他は全部を合せても十枚ぐらいで、これが解決です。

捕物帖のことですから決して厳密な推理小説ではありませんが、捕物帖としては特に推理に重点をおき、一応第二段に推理のタネはそろえておきますから、お慰みに、推理しながら読んでいただいたら退屈しのぎになるかも知れません。作者はそんなツモリでこの捕物帖をかいているのです。第三段の海舟が心眼を用いるところで本をふせて一服しながら推理することに願います。海舟は毎々七分通り失敗することになっていますが、今までの探偵小説では、偉い探偵の相棒にトンマな探偵が現れて大マチガイの推理をはたらかせてあんまりバカすぎたようです。よんでいる方でも、自分の推理が当らないと、トンマな探偵氏と同じようなトンマに見えて自分がイヤになるのが通例ですが、海舟という明治きっての大頭脳が失敗するのですから、この捕物帖の読者は推理が狂っても、オレもマンザラでないなと一安心していただけるでしょう。そこでメデタシ、メデタシ、というのが、この捕物帖です。

皆さんのオヒマの折のお友達というようなお役に立てたらと考えて書いた捕物帖ですから、楽な気持で推理をたのしみながら愛読をたまわれば幸甚です。

昭和二十八年二月二十六日

安吾生

底本 / Source edition

底本:「坂口安吾全集12」ちくま文庫、筑摩書房
1990(平成2)年8月28日第1刷発行
底本の親本:「明治開化 安吾捕物帖 第一集」日本出版共同株式会社
1953(昭和28)年4月1日
初出:「小説新潮 第五巻第一号」
1951(昭和26)年1月1日発行
入力:大野晋、tatsuki
校正:土屋隆
2006年1月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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坂口 安吾「明治開化 安吾捕物帖──読者への口上」(新字新仮名)、底本『坂口安吾全集12』ちくま文庫、筑摩書房、1990年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 043572_001095, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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