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        <title type="main" xml:lang="ja">早春</title>
        <title type="reading" xml:lang="ja-Hira">そうしゅん</title>
        <author><persName xml:lang="ja"><surname>豊島</surname><forename>与志雄</forename><idno type="aozora-person-id">000906</idno></persName><persName xml:lang="ja-Hira"><surname>とよしま</surname><forename>よしお</forename></persName><persName xml:lang="ja-Latn"><surname>Toyoshima</surname><forename>Yoshio</forename></persName></author>
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        <bibl><title>豊島与志雄著作集　第四巻（小説Ⅳ）</title><publisher>未来社</publisher><date>1965（昭和40）年6月25日</date><note type="input-edition">1965（昭和40）年6月25日第1刷</note><note type="proof-edition">1965（昭和40）年6月25日第1刷</note></bibl>
        <bibl type="first-publication">「苦楽」1947（昭和22）年5月</bibl>
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      <classDecl><taxonomy xml:id="ndc"><bibl>日本十進分類法 (Nippon Decimal Classification), as recorded by <title>青空文庫</title> in its 分類番号 field.</bibl></taxonomy><taxonomy xml:id="aozora-orthography"><bibl><title>青空文庫</title> 文字遣い種別: the orthographic style Aozora Bunko records for the transcription.</bibl></taxonomy></classDecl>
      <refsDecl xml:id="source-spans"><p>A note of type source-span has an xml:id of the form source-START-END, giving the extent in UTF-8 bytes of the decoded primary text identified in sourceDesc. <ptr target="https://w3id.org/soranoha/ns/tei"/></p></refsDecl>
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        <classCode scheme="#aozora-orthography">新字新仮名</classCode>
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      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-492-608">もともと、おれは北川さんとは何の縁故もない。街で偶然出逢っただけのことだ。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-608-973">牛の煮込み……といっても、おもに豚の腸や胃や食道、特別には肝臓と心臓、そのこま切れを竹串にさして、鉄鍋でぐらぐら味噌煮にしたものだが、その鍋をかこんでアルコールを飲むという、この頃たいへんはやっている安直な飲み屋が、近くの街角に一つあった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-973-1638">おれも時々鍋をつっつきに寄った。気むずかしそうな大人たちがいない場合は、コップ一二杯飲むこともあった。そこで、初めて北川さんに逢った。帽子はかぶらず、マントにちび下駄の姿で、髪を短かめに刈った頭がへんに大きく見え、浅黒くて艶のわるい顔は善良そうだった。年は三十五六で、飲みっぷりがよかった。鍋の物はあまり食べず、焼酎……つまりアルコールの薄めたのを、二杯ほどあおって、あとは清酒のお燗したのをうまそうに飲んだ。飲みながら店の親爺と話をした。</seg></p>
      <p>「身投げのことを、絵や文章には、真逆様に飛びこむように書いてあるが、あれは嘘だよ。男でも女でも、逆様になんかなかなか飛びこみはしない。せいぜい横っ倒しで、たいていは立ったままの姿勢さ。水泳の飛び込みとは違うからね。やっぱり怖いんだな。或る時、寒い所で、女が身投げをしたことがあった。飛びこんだのが池で、氷がはりつめてたもんだから、両足は水にはいったが、大きな尻が氷につかえて、どうにも身動きが出来ず、もがいてるところを救いあげられた、という話があるよ。」</p>
      <p>「へえー、ほんとですか。」</p>
      <p>「ああ、実話だよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2394-2636">そんな話をする彼を、おれは、文学者か画家かでもあろうと思った。――ところが違っていた。中学校の先生だった。もっとも、ちょっとした読物ぐらいは書いていたんだが。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2636-2728">飲んでしまうと、御馳走さんと大きな声で言って、出て行った。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2728-2763">おれは親爺に聞いた。</seg></p>
      <p>「あの人、金を払わないね。」</p>
      <p>「今日は持っていないらしいよ。またこんど、と小さい声で言ったろう。持ってる時に、いっしょに払うよ。」</p>
      <p>「それはいいなあ。おれもそうしよう。」</p>
      <p>「お前なんか、だめだ。あぶなくってね。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-3080-3610">そんなことでおれはどうやら彼を好きになったらしい。そして何度か出逢ってるうちに、彼のところに病人があって生魚に不自由して困ってることを知り、時々生魚を届けてやることにした。牛の煮込み屋から遠くない所で、静かな裏通りの古い小さな家だった。彼は……北川さんは、おれのような小僧っ子を信用して、五十円ぐらいずつ先渡ししてくれた。その五十円も無い時があった。</seg></p>
      <p>「今日は金がないよ。二三日して来てくれ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-3675-3959">それから二三日すると、ふしぎに金が出来ていた。もっとも、おれの方でも、北川さんところでは、口銭はいっさい取らないことにしていたし、煮込み屋の親爺と同じように、掛売りの気前も見せてやった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-3959-4012">或る時、北川さんはおれに尋ねた。</seg></p>
      <p>「君は、本を読むことがあるかね。」</p>
      <p>「そりゃあ、僕だって、ありますよ。」</p>
      <p>「いや、本を読むのが好きかと言うんだよ。」</p>
      <p>「好きですよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4212-4439">そんならこれを読んでみろと言って、少年雑誌をおれにくれた。北川さんはへんに嬉しそうだった。道理で、雑誌には北川さんの名前のついてる読物がのっていた。</seg></p>
      <p><app type="base-text-variant" source="#source-4454-4517"><lem><seg source="#source-4439-4454">　おれには</seg></lem><rdg type="base-text"><seg source="#source-4499-4511">おれには</seg></rdg></app><seg source="#source-4517-4777">大して面白くもなかった。だが、その中のちょっとした話には、あとで思い当ることがあった。これは大事なことで、北川さんの文章をそっくり写すといいんだが、雑誌をなくしてしまった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4777-4998">話というのは、どこか山の温泉のことで、若い娘が一人、坂道の上に立っていた。坂道といっても、そこら全体が山腹で、はるかの谷間まで草原の斜面なのだ。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4998-6155">――その遠い低いところ、草原のはてに、一つぽつりと、黒いものが見えた。何だろうかと、娘はそれを見つめた。黒い一点は、動いていた。だんだんこちらに近づいてくるらしい。たいへんな速さで、こちらへやってくるらしい。次第に大きくなった。馬だった。人が乗っていた。馬も人も黒く見えた。それが、たいへんな勢いで、たいへんな速さで、草原を駆け登ってきた。ますます近づいてくる。ますます大きくなる。下方の谷間を流るる川や、そのあたりの畑地や、杉の木立など、パノラマのような美しい背景のなかに、人馬が大きく浮きだして、それが草原をいっさんに駆け登ってくる。五百メートル、三百メートル……あ、もうすぐ目近に来た。怪物のように大きくなった。それがまっ黒で、機関車のように突進して来た。ぶっつかった……と思ったとたんに、娘は地面に倒れたが、馬はまるで影か霧のように、すーっと通りすぎていった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-6155-6493">こんな話、おれには何のことかよく分らなかった。お伽話でもないし、お化け話でもないし、いささかばからしくも思えた。北川さんもその当座、おれの批評など求めはしなかった。――それが、実は、病人の頭から醸し出されたものだったんだ。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-6493-6696">北川さんはまだ独身で、家庭には、年とった母と若い妹がいた。病人というのは妹のことで、その姿をおれが見たのは事件が起ってからのことだ。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-6696-7205">おれはただ生魚を時々持っていった。おれは魚屋じゃない。戦災で親たちが田舎へ引き込んだあと、一人東京に残って、まあ謂わば植木屋の手伝いみたいなことをしていた。忙しい仕事もめったにないし、あちこちに手蔓があるものだから、物品の仲立ちも少しはやった。大人でなくて小僧っ子なもんだから、却って便利がられた。けちな仕事だが、金は相当にもうかった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-7205-7744">ところで北川さん……はっきり言えば北川辰治は、ちょっと文学者めいたところのある人だが、それでいて少しも気むずかしくはなく、至極のんびりしていた。どうして中学校の先生なんかしているのか分らなかったが、外になにもすることがなかったからだろう。貧乏なのか金持ちなのか見当がつかなかった。十円札一枚もないこともあれば、新らしい百円札をたくさん持ってることもあった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-7744-7983">おれが識り合ったのは一月の半ばで、それからずっと寒い日が続いた。梅の花の咲くのが後れた。そして三月になった或る日のこと、へんなことが起った。春先のせいかな。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-7983-8282">おれはいつものように、生魚を少し北川さんへ届けた。裏口からはいって、台所へ声をかけたが、返事がない。なんども呼んでいると、庭の方から北川さんがやって来た。作業服みたいな姿で、地下足袋をはいている。</seg></p>
      <p>「ああ、君か。よく来たね。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-8326-8442">おかしな挨拶だが、その訳はすぐに分った。北川さんは魚をしまってから言った。</seg></p>
      <p>「今、君は暇かい。」</p>
      <p>「なんか用ですか。」</p>
      <p>「よかったら、ちょっと手伝って貰いたいんだが……。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-8586-9284">梅の木を植える手伝いだった。物置小屋を廻ってゆくと、鍵の手になってる建物が、わりに広い庭をかかえている。庭師の手にかけた庭ではないが、百日紅や野薔薇や八手や檜葉や椿などが、広場の向うを限っている。その片端のところに、穴が掘りかけてあり、大きな梅の木が塀に立てかけてあった。背は低いが、手入れの届いたみごとな古木で、散り残った花がまだ少し残っており、根廻りを大きく取ってあって、北川さん一人ではとても扱えそうになかった。そこへ持ち込むにも、板塀を越させたんだろう。</seg></p>
      <p>「いい<ruby type="furigana" rend="right" source="#source-9293-9308"><rb>木</rb><rt>ぼく</rt></ruby>ですねえ。どうしたんです。」</p>
      <p>「貰い物なんだ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-9381-9608">茶の間とおぼしい方の縁側に、まだ学生でもあろうかと見える青年が腰掛けていた。頭髪を長く伸ばし、ホームスパンの背広を着こんだ、顔の蒼白い好男子だった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-9608-9739">北川さんは鍬を探しに、おれまで物置小屋へ引っぱってゆき、声をひそめて手短かに話した。</seg></p>
      <p>「実は、弱ってるんだよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-9780-10628">――あの青年は、竹中貞夫といって、知らない間柄ではない。彼から頼まれたということで、一昨日、運搬屋が梅の木を持ちこんできた。そして昨日、彼自身やって来た。北川さんの妹の梅子に、梅の木を贈る約束をしたから、それを果すんだと言う。梅子に聞けば、そんな約束は覚えがないと言う。それでも竹中は約束したと言い張り、あの木を庭に植えるまでは帰らないと、腰を落着けてしまった。とうとう昨夜は泊りこんだ。今朝になると、早く梅の木を植えようと催促する。父や母も来ることになってるから、あの木がここに植えられたのを見たら、喜ぶだろうと言う。ほんとに両親とも来ることになってると言う。</seg></p>
      <p>「そんな筈はない。」と北川さんは言った。「少し気がへんじゃないかと思うよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-10744-10839">おれには話がよく分らなかった。もっと詳しい関係を聞いてみた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-10839-12023">――竹中のうちは資産家で、昔、北川さんの父がたいへん世話になったことがある。そこの、老夫人が体が弱く、人手も足りないので、暫くの間、梅子が手伝いに行っていた。小間使というところか。そして昨年の秋、夫人は梅子を連れて、伊豆の湯ヶ島にちょっと保養に出かけた。そこの族館の主人と懇意なのだ。すると、あとから貞夫がやって来た。貞夫は馬が好きで、近くに乗馬を一頭見つけだし、天城山麓を乗り廻した。或る日、その馬が狂奔した。低空を飛んでた飛行機に驚いたのか、走り去った数台のトラックに慴えたのか、道を横切った鼬に化かされたのか、とにかく、つっ走った。道の真中で貞夫を待ってた梅子は、貞夫が馬を駆けさせてるのだとばかり思った。目近になって、貞夫の様子に気がつき、慌てて避けようとして転んだ。手をすりむいただけですんだ。馬は飛び越して行った。だが、貞夫は落馬して、さらに崖から落ち、可なりの傷を負った。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-12023-12112">そういうことで、おれは北川さんの書いた話を思い浮かべた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-12112-12576">――湯ヶ島から帰っても、貞夫は気分がすぐれず、時々病院に通っていた。そのうち、梅子が病気になって、自家へ戻ってきた。気管支肺炎から肋膜までわるくし、高熱を出した。だが幸に、もう殆んどなおりかけている。貞夫から何度か手紙が来たようだった。然し、二人の間に恋愛関係はないらしく、あっても大したものではあるまい。</seg></p>
      <p>「それだけのことだ。」と北川さんは話を打ち切った。</p>
      <p>「それでまあ、梅の木は植えることにしたよ。樹木は大切にしてやらなければならんからね。」</p>
      <p>「妹さんと仲がいいんですか。」とおれは聞いてみた。</p>
      <p>「誰と……。」</p>
      <p>「その竹中さんですよ。」</p>
      <p>「あまり口数は利かず、静かに応対していた。そうして梅子と話してる時は、少しも変ったところは見えないがね。」</p>
      <p>「ほんとにいくらかふれてるんですか。」</p>
      <p>「それがどうも、確かには分らない。君もちょっと探ってみてくれよ。まだ若いが、君には、民衆の智慧があるだろう。つまり、健全な常識がある筈だ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-13354-13581">おれは物置小屋の外におり、北川さんは小屋の中にひっこんで、話をしていた。そしておれはへんな気がした。北川さんも少しどうかしてるんじゃないかと思った。</seg></p>
      <p>「とにかく、仕事を片付けましょうよ。」</p>
      <p>「そうだ、そうだ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-13672-13761">北川さんは鍬を探しだして来た。おれたちは仕事にかかった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-13761-14261">庭の土は思ったより柔かで、たやすく穴が掘れた。それへ梅の木を据えこむ段になって、竹中さんも立ち上って来て、加勢をした。梅の木の向きについて、うるさくいろいろなことを言った。それが一々もっともなのが、素人にしては、ふしぎだ。植付けを終えると、梅の木はそこにみごとな枝ぶりを示した。太枝に花が少し残ってるのだけが、却ってぶざまだった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-14261-14449">木を眺めながら、縁側に腰かけて茶を飲んでいると、竹中さんはじっとおれの方を見つめた。いつまでも見つめている。そして言った。</seg></p>
      <p>「君は誰ですか。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-14478-14576">丁寧な口の利き方だ。おれがためらっていると、北川さんが答えた。</seg></p>
      <p>「僕の従弟ですよ。」</p>
      <p>「従弟さんですか。初めてですね。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-14661-14816">おれの方で冷りとした。ジャンパーにゴム靴なんかの姿が顧みられた。だが、彼はもう北川さんと話しだした。</seg></p>
      <p>「あの枝は切った方がいいですね。」</p>
      <p>「どれですか。」</p>
      <p>「あの、こちらへ伸び出してるやつ……。」</p>
      <p>「そう。ちと邪魔ですね。だが、若い枝のようだから、実はなるでしょうよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-15067-15213">そこで、梅はいったい花の方が大切か実の方が大切かという話になって、禅問答のようなことが続いた。</seg></p>
      <p>「僕はたくさん実のなる梅が好きですね。」と北川さんは言った。</p>
      <p>「僕はたくさん花の咲くのが好きですね。」と竹中さんは言った。</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-15397-15747">それは議論じゃなくて、別々のことを勝手に言ってるような調子だった。どちらも、相手の言うことなんかまるで気にもとめず、独語をしてるみたいだ。側で聞いていると、おれはおかしかった。気がへんだとすれば、二人ともそうではないかと思われた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-15747-15965">そのうちに、お母さんが帰って来た。北川さんは物蔭でお母さんとなにか話し合った。そこで、おれは帰ってゆこうとしたが、北川さんから呼びとめられた。</seg></p>
      <p>「ちょっと、使いをしてくれないかね。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-16024-16233">北川さんは紙幣をおれに渡して、牛の煮込み屋から酒を一升ほど買ってきてくれと言った。ついでに、二百円ほど借りがあるから払ってくれと言った。</seg></p>
      <p>「母が金を拵えてきてくれたから、助かったよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-16304-16351">北川さんは嬉しそうに笑った。</seg></p>
      <p>「借りてきたんですか。」とおれは思わず言ってしまった。</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-16434-16847">北川さんはおれの顔をじっと見て、それから、さも重大な秘密でも洩らすように囁いた。――小さな貸家を一つ持っていたが、それを、親戚に頼んで、買って貰った。十万円になった。但し、借家人がはいっているので、それが立退いて空け渡しするまでは、月々三千円ずつ貰うことになっている……。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-16847-17098">それで、北川さんの暮し向きのことがおれにも分ったが、ちょっと淋しかった。そんな売り食いの仕方は自慢になるもんじゃない。だが、北川さんは自慢そうな笑顔をしているんだ。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-17098-17229">おれが眉根をしかめてみると、北川さんは何を勘違いしたか、おれの肩を一つ叩いて言った。</seg></p>
      <p>「とにかく、梅の木を持って来てくれたんだから、酒でも出さなくちゃなるまい。それに、両親が来るというから、そうなったら、ちと大変だ。米も足りないし、御馳走はなにもないし……ひとつ奔走してくれよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-17522-17650">言うことは道理だが、考えの根本がどうもおかしい。竹中さんにかぶれたのかも知れない。</seg></p>
      <p>「万事引き受けますよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-17688-17972">安心さしておいて、おれはまず、牛の煮込み屋の用だけは果してやった。だが、それだけで逃げるわけにもゆかない。なんだか気の毒だ。度が少し曲りかけてるお母さんを手伝って、台所の用をしてやった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-17972-18250">ささやかな酒宴がはじまった。竹中さんもいけるたちらしい。酒がまわるにつれて、妙な話題が出てきた。おれは台所の用をすまして、縁側に置いてある電熱器で、手製の煎餅をやきながら聞いていた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-18250-18759">――世の中は隙間だらけだというのだ。原子とか分子とかいうものにも、隙間がある。そういうもので出来てる物質も、隙間だらけだ。――天井にも床にも、壁にも、隙間がある。塀にも隙間がある。――人の注意にも、隙間がある。心にも隙間がある。――だから、そういう隙間をねらえば、どんなことだって出来る。大きな木だって持ち出せる。人間だって持ち出せる。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-18759-19229">まあこんな風な、何もかもごっちゃにした話だが、中心はどうやら、あの梅の木にあるらしかった。あれは竹中さんの庭にでも植わってたもので、それをひそかに持ち出す興味と苦心とが、面白かったのだろう。――そんなことを問題にしてる竹中さんは、たしかに気が少しへんだ。話にのってる北川さんも、謂わば共犯者で、ちっとおかしい。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-19229-19441">然しその話は、終りまで続かなかった。玄関に人が来て、お母さんは暫く話をし、それから、玄関と茶の間との間を往復して、その人を茶の間に通した。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-19441-19803">竹中家のいろんな用をしてる番頭格の、山口という人だった。痩せた小柄な中年者で、禿げあがった額の下に、小さな眼が鋭く光っていた。一目見た時からおれはこの人が嫌いになった。山口さんなどとはどうしても言えない。山口と呼び捨てにするより外はない。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-19803-19856">山口は一座に会釈をして、言った。</seg></p>
      <p>「これは、お邪魔を致します。わたくしはただ、貞夫さんだけにお目にかかれば宜しいので、外に用はございません。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-20020-20220">最初から角のある言い方だ。おれはどきりとした。だが不思議だった。当の竹中さんも、北川さんも、黙りこんだだけで、平気な顔をしている。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-20220-20291">山口は竹中さんの方を向いて、ずばりと言った。</seg></p>
      <p>「あなたをお迎えにあがったんですが、お帰りなさいましょうね。」</p>
      <p>「ああ帰るよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-20412-20537">おれにまで丁寧な竹中さんとしては、これはまた至極ぞんざいだ。山口は大きく頷いた。</seg></p>
      <p>「それで安心致しました。御両親もたいそう心配しておられますし、これから……。」</p>
      <p>「あ、お父さんとお母さんは、いつみえるかね。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-20727-20777">山口は小さな眼をしばたたいた。</seg></p>
      <p>「こちらへ来られることになっていたが……。」</p>
      <p>「とんでもないことを仰言います。わたくしが代理でお迎えにあがったんでございますよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-20973-22421">両親が来るというような竹中さんの言葉は、山口の憤慨を爆発させたらしい。彼は俄にまくし立てた。言い廻しは丁寧だが語調は荒かった。――昨日から貞夫が帰らないので、家の者は心配していた。貞夫はまだ充分に病気がなおってもいないし、物騒な時節柄だ。気をもんでいると、一昨日、庭の梅の古木を、植木屋が掘り返して、どこかへ運んだことが分った。それが貞夫の指図だ。植木屋をつきとめて、こちらだという見当がついた。それで、迎えに来た。いったい、どういう量見だったのか。梅の木の一本や、二本、惜しくはないが、なんで泥坊みたいな真似をするのか。誰かにそそのかされたのか。来てみると、しゃあしゃあと酒なんか飲んでいる。茶屋小屋ならまだしも、ここがどういう家か、よく考えてみたら分る筈だ。もと邸にいた娘の病気見舞いなら、見舞いのような方法もあろう。こちらだって迷惑だろう。近所に電話がないわけではあるまいし、泊まるなら泊まると、邸に電話でもするのが当り前なのを、いつまでも引き留めて酒のもてなしをするなど、以ての外だと、非難されても仕方がなく、そういう迷惑をこちらにかけては済むまい……。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-22421-22699">山口は竹中さんに向ってだけ話したのだが、次第に、北川さんへのあてつけが多くなった。直接に北川さんへは口を利くまいと決心してるようだ。その全体が、特別な話し方で、真綿に針を包んでいる。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-22699-22943">北川さんと竹中さんは、黙りこんだまま、知らん顔をして、煙草をふかし酒を飲んでいた。お母さんは奥の室の病人の方へ行った。おれはいらいらしてきた。煎餅をこがした。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-22943-23065">庭にはもう夕陽が薄らぎかけていた。山口はそちらへ眼をやって、梅の木を見付けた。</seg></p>
      <p>「ほう、梅はやはりこちらへ来ているようですなあ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-23142-23246">山口は無遠慮に立って来て、縁側の硝子戸を大きく開けて、庭を眺めた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-23246-23350">その時、これもやはり隙間なのか、竹中さんは北川さんに小声で言った。</seg></p>
      <p>「お邪魔しました。これで失礼します。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-23409-23591">お辞儀をするとすぐ、竹中さんは立ち上って、実にす早く、廊下へ出てしまった。山口が振り向きかけたとたんに、おれは言った。</seg></p>
      <p>「寒いなあ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-23614-23826">大きく開けてある硝子戸を、力一杯にぶっつけてやった。真鍮のレールで滑りがよかった。その戸をまともに受けて、山口はよろけ、縁外に飛び落ちた。</seg></p>
      <p>「乱暴な……。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-23852-24163">山口はおれの方を見たが、おれはそっぽを向いていた。彼は何と思ったか、それきりで、額と腰をさすり、縁にはい上って、足袋底の泥を丁寧にこすり落した。それから席に戻って、室の中を見廻した。誰も口を利かなかった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-24163-24300">玄関の方に竹中さんとお母さんの声がした。山口は出て行った。竹中さんはもう帰りかけていた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-24300-24368">二人を送り出して、お母さんは茶の間に来た。</seg></p>
      <p>「おかしな人ですよ。つかつかとはいって来て、梅子の枕もとに坐って、早くおなおりなさい、きっとなおります、そう言って、両手をついてお辞儀をしました。可哀そうに、梅子が、ほろりと涙をこぼしたときには、もう室から出て行きかけていました。どういうんでしょうねえ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-24754-24849">お母さんは立ったまま話したが、それきりで、病人の方へ行った。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-24849-24986">北川さんは黙りこんで酒を飲んだ。そしておれにもすすめたので、遠慮なくおれも飲んでやった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-24986-25204">北川さんがへんに考えこんでるので、おれは気を利かせて、やがて出て行った。北川さんとなにか話したいことがあるようだったが、それも諦めて、忘れた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-25204-25280">それでも、やはり気になって、翌朝、行ってみた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-25280-25513">台所で、お母さんが食事の仕度をしていた。おれは梅の木を見に行った。朝日がいっぱいさしてるあちらの縁側の、硝子戸の中に、北川さんと妹さんが何か話していた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-25513-25632">おれは梅の木を見上げた。いろいろな思いが絡んでるので、身内のような気がした。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-25632-25697">北川さんが硝子戸をあけて、おれを呼んだ。</seg></p>
      <p>「よく来たね。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-25723-25797">昨日と同じ挨拶だ。はればれとした顔をしていた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-25797-26121">だが、それよりも、おれはびっくりした。梅子さんがとても美しかった。近くで見たのは、いや、ほんとに逢ったのは、初めてだ。梅子さんは日向にひきずりだした布団の上に、脇息にもたれて坐っていた。髪はおさげにして編んでいる。</seg><g ref="#gaiji-3-1-90-18" source="#source-26121-26180">縕</g><seg source="#source-26180-26698">袍にくるまった体はひどく細そりしている。ほんの少女という恰好だ。でも顔は一人前の女で、朝日の光りを受けてるせいか、肌が透き通ってるように見える。眼が黒々として底が分らない。下頬にぽつりと肉のふくらみがあって、小さな受け口だ。その全体がおれにはびっくりするほど美しく思われた。兄さんには殆んど似ていない。しいて探せば、額と耳が似てるぐらいだろう。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-26698-26790">おれがびっくりして梅子さんを見ていると、北川さんは言った。</seg></p>
      <p>「梅子は、君を医者よりも頼りにしてるよ。薬より魚の方が好きだからね。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-26897-26947">おれは顔が赤くなるのを感じた。</seg></p>
      <p>「ほんとに、いつも有難いと思っていますの。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-27015-27161">そう言って、梅子さんは黒々とした眼でじっとおれを見た。おれはへんに口が利けないで、眼を伏せた。</seg></p>
      <p>「その代り、お前の、童話を読ませてやったよ。」と北川さんは言った。「そら、お前が考えて、僕が書いたやつさ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-27325-27369">梅子さんはただ笑っていた。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-27369-27548">おれはそこにばかのように突っ立ってるのがつらくなって、お辞儀をして去ろうとした。すると、北川さんから呼びとめられた。</seg></p>
      <p>「実は、君にまた頼みたいことがあるんだがね。」</p>
      <p>「ええ、なんでもしますよ。」</p>
      <p>「おかしなことだが、あの梅の木なんだ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-27725-27769">北川さんは暫く口を噤んだ。</seg></p>
      <p>「あれを君にあげるから、いいように始末してくれないかね。薪なんかにしてしまうのは可哀そうだから、どこかに植えて、やはり生かしといて貰いたいんだ。とにかく、あれをまた掘り起して、ほかへ移すんだ。費用は出すから、頼むよ。」</p>
      <p>「あすこに置いといては、いけないんですか。」</p>
      <p>「折角のものだから、貰い受けるつもりだったが、あんなことがあっては……。あの嫌な奴さ、あんな奴に汚されては、僕はもう嫌になった。話をすると、梅子も嫌だと言う。どこか遠くへ持って行ってくれよ。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-28456-28662">おれは首垂れてしまった。初めは意外だったが、その意外が意外でなくなり、北川さんや梅子さんの気持ちが、おれの中にもはっきり伝わってきた。</seg></p>
      <p>「分りました。」</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-28688-28882">おれはそれだけ言って、くるりと向きを変え、梅の木を眺める風をした。そして眼を手の甲でこすった。涙が出てきてこらえきれなかった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-28882-29094">なんで悲しいのか、おれにもよく分らなかったが、胸がつまって涙が出るんだ。梅子さんがあまり美しかったからだろうか。春先の感傷のせいだろうか。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-29094-29229">おれはそこらを歩きまわって涙をごまかした。それから、梅の木はおれが貰ってやろうときめた。</seg></p>
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        <note type="source-attribution" source="#source-29237-29469"><seg type="source-line">底本：「豊島与志雄著作集　第四巻（小説4［＃「4」はローマ数字、1-13-24］）」未来社</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1965（昭和40）年6月25日第1刷発行</seg><lb/><seg type="source-line">初出：「苦楽」</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1947（昭和22）年5月</seg></note>
        <note type="transcriber-note" source="#source-29469-29919"><seg type="source-line">※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」（区点番号5-86）を、大振りにつくっています。</seg><lb/><seg type="source-line">入力：tatsuki</seg><lb/><seg type="source-line">校正：門田裕志</seg><lb/><seg type="source-line">2008年1月16日作成</seg><lb/><seg type="source-line">青空文庫作成ファイル：</seg><lb/><seg type="source-line">このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫（http://www.aozora.gr.jp/）で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。</seg></note>
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      </div>
      <note type="parser-completion" n="true">The n attribute is true when no parser diagnostic of error severity was raised for this source. What the converter could not interpret is recorded in the interpretation-problem and parser-diagnostic notes.</note>
      <note type="source-decoding">windows-31j</note>
    </back>
  </text>
</TEI>