Soranoha

「広場」について

「ひろば」について

宮本 百合子

「広場」は、一九三九年十二月にかかれた。同じ時に「おもかげ」という短篇がかかれていて、ある意味で連作の形をとった。前の年(昭和十三年)一年と、この年の半ば頃まで作品の発表が禁じられていた。

「広場」は、「おもかげ」とともに作者のソヴェト同盟での生活のひとこまを主体としている。社会主義的な自覚をもってきて作者は一九三〇年にまる二年あまり暮したソヴェト同盟から、日本へ帰えるべきか、それともそのままモスクヷへとどまってしまうかという一つの決定にせまられた。作者はついに日本へ帰えってきた。そしてこの決定は正しかった。モスクヷで二つの大きな魅かれるものの間で、全心が身体とともにゆすぶられながら、次第に方向を見出してゆくその過程が描れている。

当時、検閲はきびしかった。まして長い禁止の後に、また発表されはじめた小説であったから、表現が制限されて、今読みかえすと感動で咽喉がつまって声も言葉ものびのびとはでていない。このわかりにくい程気をつかったいいまわしや、省略にもかかわらず、これが文芸に発表されたときは、ほんの小さい箇所が幾所か要心深くふせられた。

編輯者の好意で、伏字なしのゲラが保存されていたことはほんとに嬉しかった。それによってここにおさめられている「広場」は、不自由ながらもあのころ書かれたままの表現にもどされている。

〔一九五〇年二月〕

底本 / Source edition

底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「文芸読物」(「広場」前書き)
1950(昭和25)年2月号
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年11月30日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

この表示について / About this rendering

記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.

リリース / Release
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c
TEI
/works/015996_000311/tei
プレーンテキスト / Plain text
/works/015996_000311/plaintext
書誌 / Bibliography
/works/015996_000311/

宮本 百合子「「広場」について」(新字新仮名)、底本『宮本百合子全集 第三十巻』新日本出版社、1986年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 015996_000311, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite