Soranoha

山崎富栄の日記をめぐって

やまさきとみえのにっきをめぐって

宮本 百合子

芥川龍之介が自分の才能とか学識を越えて社会と文学そのものの大きい変化と発展を見通して、そこから来る漠然とした不安を感じて死んだのと、太宰氏の生涯の終り方とは、まったく別種のものです。芥川の死は人生と芸術の大きさに対する確信がこめられていました。たとえ自分は死んでも、そこには発展がありました。太宰氏の死は、自分で知らずに咲いた花が、その花なりに散ったことでしょう。

私は女として夫人のお気持も深く察します。一緒に死んだ女の人の扱われ方に対して、父である人の心の中も察します。生活の安定や平和のために、文学の情熱もかきたてられているはずのとき、一人の作家の死が、その虚無さで人気を煽ったりするのは醜態だと思います。

〔一九四八年七月〕

底本 / Source edition

底本:「宮本百合子全集 第三十巻」新日本出版社
1986(昭和61)年3月20日初版発行
初出:「週刊朝日」
1948(昭和23)年7月25日号
入力:柴田卓治
校正:土屋隆
2007年11月30日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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書誌 / Bibliography
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宮本 百合子「山崎富栄の日記をめぐって」(新字新仮名)、底本『宮本百合子全集 第三十巻』新日本出版社、1986年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 015991_000311, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite