Soranoha

たけのこ

たけのこ

新美 南吉

たけのこは はじめ じびたの したに いて、あっち こっちへ くぐって いく もので あります。

そして、あめが ふった あとなどに ぽこぽこと つちから あたまを だすので あります。

さて、この おはなしは、まだ その たけのこが じびたの なかに いた ときの ことです。

たけのこたちは とおくへ いきたがって しようが ないので、おかあさんの たけが、

「そんなに とおくへ いっちゃ いけないよ、やぶの そとに でると うまの あしに ふまれるから」

と しかって おりました。

しかし、いくら しかられても、ひとつの たけのこは どんどん とおくへ もぐって いくので ありました。

「おまえは なぜ おかあさんの いう ことを きかないの」

と おかあさんの たけが ききました。

「あっちの ほうで うつくしい やさしい こえが わたしを よぶからです」

と その たけのこは こたえました。

「わたしたちには なんにも きこえやしない」

と ほかの たけのこたちは いいました。

「けれど、わたしには きこえます。それは もう なんとも いわれぬ よい こえです」

と その たけのこは いいました。

そして どんどん はなれて いきました。

とうとう この たけのこは ほかの たけのこたちと わかれて、かきねの そとに あたまを だして しまいました。

すると そこへ よこぶえを もった ひとが ちかよって きて、

「おや、おまえは まいごの たけのこだね」

と いいました。

「いえいえ、わたしは、あなたの ふいて いらっしゃった、その ふえの こえが あんまり よかったので、こっちへ さそわれて きました」

と たけのこは こたえました。

さて、この たけのこは おおきく かたく なった とき、りっぱな よこぶえと なりました。

底本 / Source edition

底本:「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」てのり文庫、大日本図書
1988(昭和63)年7月8日第1刷発行
底本の親本:「校定 新美南吉全集」大日本図書
入力:めいこ
校正:鈴木厚司、もりみつじゅんじ
2003年9月29日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
/works/004725_000121/tei
プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
/works/004725_000121/

新美 南吉「たけのこ」(新字新仮名)、底本『ごんぎつね 新美南吉童話作品集1』てのり文庫、大日本図書、1988年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 004725_000121, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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