Soranoha

霰ふる

あられふる

泉 鏡花、泉 鏡太郎

一

若わかいのと、少すこし年としの上うへなると……

此この二人ふたりの婦人をんなは、民也たみやのためには宿世すぐせからの縁えんと見みえる。ふとした時とき、思おもひも懸かけない處ところへ、夢ゆめのやうに姿すがたを露あらはす――

こゝで、夢ゆめのやうに、と云いふものの、實際じつさいは其それが夢ゆめだつた事こともないではない。けれども、夢ゆめの方はうは、又また……と思おもふだけで、取とり留とめもなく、すぐに陽炎かげろふの亂みだるゝ如ごとく、記憶きおくの裡うちから亂みだれて行ゆく。

しかし目前まのあたり、歴然あり〱と其その二人ふたりを見みたのは、何時いつに成なつても忘わすれぬ。峰みねを視ながめて、山やまの端はに彳たゝずんだ時ときもあり、岸きしづたひに川船かはぶねに乘のつて船頭せんどうもなしに流ながれて行ゆくのを見みたり、揃そろつて、すつと拔ぬけて、二人ふたりが床とこの間まの柱はしらから出でて來きた事こともある。

民也たみやは九こゝのツ……十歳とをばかりの時ときに、はじめて知しつて、三十を越こすまでに、四度よたびか五度いつたびは確たしかに逢あつた。

これだと、隨分ずゐぶん中絶なかだえして、久ひさしいやうではあるけれども、自分じぶんには、然さまでたまさかのやうには思おもへぬ。人ひとは我わが身體からだの一部分いちぶぶんを、何年なんねんにも見みないで濟すます場合ばあひが多おほいから……姿見すがたみに向むかはなければ、顏かほにも逢あはないと同一おなじかも知しれぬ。

で、見みなくつても、逢あはないでも、忘わすれもせねば思出おもひだすまでもなく、何時いつも身みに着ついて居ゐると同樣どうやうに、二個ふたつ、二人ふたりの姿すがたも亦また、十年ねん見みなからうが、逢あはなからうが、そんなに間あひだを隔へだてたとは考かんがへない。

が、つい近ちかくは、近ちかく、一昔前ひとむかしまへは矢張やつぱり前まへ、道理だうりに於おいて年としを隔へだてない筈はずはないから、十とをから三十までとしても、其その間あひだは言いはずとも二十年ねん經たつのに、最初さいしよ逢あつた時ときから幾歳いくとせを經へても、婦人をんな二人ふたりは何時いつも違ちがはぬ、顏容かほかたちに年としを取とらず、些ちつとも變かはらず、同一おなじである。

水みづになり、空そらになり、面影おもかげは宿やどつても、虹にじのやうに、すつと映うつつて、忽たちまち消きえて行ゆく姿すがたであるから、確しかと取留とりとめた事ことはないが――何時いつでも二人連ふたりづれの――其その一人ひとりは、年紀としの頃ころ、どんな場合ばあひにも二十四五の上うへへは出でない……一人ひとりは十八九で、此この少わかい方はうは、ふつくりして、引緊ひきしまつた肉にくづきの可いい、中背ちうぜいで、……年上としうへの方はうは、すらりとして、細ほそいほど瘠やせて居ゐる。

其その背せいの高たかいのは、極きはめて、品ひんの可よい艷つややかな圓髷まるまげで顯あらはれる。少わかいのは時々より〱に髮かみが違ちがふ、銀杏返いてふがへしの時ときもあつた、高島田たかしまだの時ときもあつた、三輪みつわと云いふのに結ゆつても居ゐた。

其そのかはり、衣服きものは年上としうへの方はうが、紋着もんつきだつたり、お召めしだつたり、時ときにはしどけない伊達卷だてまきの寢着姿ねまきすがたと變かはるのに、若わかいのは、屹きつと縞しまものに定さだまつて、帶おびをきちんと〆しめて居ゐる。

二人ふたりとも色いろが白しろい。

が、少わかい方はうは、ほんのりして、もう一人ひとりのは沈しづんで見みえる。

其その人柄ひとがら、風采とりなり、姊妹きやうだいともつかず、主從しうじうでもなし、親したしい中なかの友達ともだちとも見みえず、從姊妹いとこでもないらしい。

と思おもふばかりで、何故なぜと云いふ次第しだいは民也たみやにも説明せつめいは出來できぬと云いふ。――何なにしろ、遁のがれられない間あひだと見みえた。孰方どつちか乳母うばの兒こで、乳姊妹ちきやうだい。其それとも嫂あによめと弟嫁おとよめか、敵同士かたきどうしか、いづれ二重ふたへの幻影げんえいである。

時ときに、民也たみやが、はじめて其その姿すがたを見みたのは、揃そろつて二階にかいからすら〱と降おりる所ところ。

で、彼かれが九こゝのツか十とをの年とし、其その日ひは、小學校せうがくかうの友達ともだちと二人ふたりで見みた。

霰あられの降ふつた夜更よふけの事こと――

二

山國やまぐにの山やまを、町まちへ掛かけて、戸外おもての夜よるの色いろは、部室へやの裡うちからよく知しれる。雲くもは暗くらからう……水みづはもの凄すごく白しろからう……空そらの所々ところ〲に颯さつと藥研やげんのやうなひゞが入いつて、霰あられは其その中なかから、銀河ぎんがの珠たまを碎くだくが如ごとく迸ほとばしる。

ハタと止やめば、其その空そらの破われた處ところへ、むら〱と又また一重ひとへ冷つめたい雲くもが累かさなりかゝつて、薄墨色うすずみいろに縫合ぬひあはせる、と風かぜさへ、そよとのもの音おとも、蜜蝋みつらふを以もつて固かたく封ふうじた如ごとく、乾坤けんこん寂じやくと成なる。……

建着たてつけの惡わるい戸と、障子しやうじ、雨戸あまども、カタリとも響ひゞかず。鼬いたちが覘のぞくやうな、鼠ねずみが匍匐はらばつたやうな、切きつて填はめた菱ひしの實みが、ト、べつかつこをして、ぺろりと黒くろい舌したを吐はくやうな、いや、念ねんの入いつた、雜多ざつたな隙間すきま、破やれ穴あなが、寒さむさにきり〱と齒はを噛かんで、呼吸いきを詰つめて、うむと堪こらへて凍着こゞえつくが、古家ふるいへの煤すゝにむせると、時々とき〲遣切やりきれなく成なつて、潛ひそめた嚔くしやめ、ハツと噴出ふきだしさうで不氣味ぶきみな眞夜中まよなか。

板戸いたど一ひとつが直すぐ町まちの、店みせの八疊でふ、古疊ふるだたみの眞中まんなかに机つくゑを置おいて對向さしむかひに、洋燈ランプに額ひたひを突合つきあはせた、友達ともだちと二人ふたりで、其その國くにの地誌略ちしりやくと云いふ、學校がくかうの教科書けうくわしよを讀よんで居ゐた。――其頃そのころ、風ふうをなして行おこなはれた試驗しけん間際まぎはに徹夜てつやの勉強べんきやう、終夜しうやと稱となへて、氣きの合あつた同志どうしが夜よあかしに演習おさらひをする、なまけものの節季仕事せつきしごとと云いふのである。

一枚まい……二枚まい、と兩方りやうはうで、ペエジを遣やツつ、取とツつして、眠氣ねむけざましに聲こゑを出だして讀よんで居ゐたが、恁かう夜よが更ふけて、可恐おそろしく陰氣いんきに閉とざされると、低ひくい聲こゑさへ、びり〱と氷こほりを削けづるやうに唇くちびるへきしんで響ひゞいた。

常つねさんと云いふお友達ともだちが、讀よみ掛かけたのを、フツと留とめて、

「民たみさん。」

と呼よぶ、……本ほんを讀よんでたとは、からりと調子てうしが變かはつて、引入ひきいれられさうに滅入めいつて聞きこえた。

「……何なあに、」

ト、一ひとつ一ひとつ、自分じぶんの睫まつげが、紙かみの上うへへばら〱と溢こぼれた、本ほんの、片假名かたかなまじりに落葉おちばする、山やまだの、谷たにだのを其そのまゝの字じを、熟じつと相手あひてに讀よませて、傍目わきめも觸ふらず視みて居ゐたのが。

呼よばれて目めを上あげると、笠かさは破やぶれて、紙かみを被かぶせた、黄色きいろに燻くすぶつたほやの上うへへ、眉まゆの優やさしい額ひたひを見みせた、頬ほゝのあたりが、ぽつと白しろく、朧夜おぼろよに落おちた目めかづらと云いふ顏色かほつき。

「寂さびしいねえ。」

「あゝ……」

「何時なんじだねえ。」

「先刻さつき二時じうつたよ。眠ねむく成なつたの?」

對手あひては忽たちまち元氣げんきづいた聲こゑを出だして、

「何なに、眠ねむいもんか……だけどもねえ、今時分いまじぶんになると寂さびしいねえ。」

「其處そこに皆みんな寢ねて居ゐるもの……」

と云いつた――大おほきな戸棚とだな、と云いつても先祖代々せんぞだい〱、刻きざみ着つけて何時いつが代だいにも動うごかした事ことのない、……其その横よこの襖ふすま一重ひとへの納戸なんどの内うちには、民也たみやの父ちゝと祖母そぼとが寢ねて居ゐた。

母はゝは世よを早はやうしたのである……

「常つねさんの許とこよりか寂さびしくはない。」

「何どうして?」

「だつて、君きみの内うちはお邸やしきだから、廣ひろい座敷ざしきを二ふたつも三みツつも通とほらないと、母おつかさんや何なにか寢ねて居ゐる部屋へやへ行ゆけないんだもの。此この間あひだ、君きみの許とこで、徹夜てつやをした時ときは、僕ぼくは、そりや、寂さびしかつた……」

「でもね、僕ぼくン許とこは二階にかいがないから……」

「二階にかいが寂さびしい?」

と民也たみやは眞黒まつくろな天井てんじやうを。……

常つねさんの目めも、齊ひとしく仰あふいで、冷つめたく光ひかつた。

三

「寂さびしいつて、別べつに何なんでもないぢやないの。」

と云いつたものの、兩方りやうはうで、机つくゑをずつて、ごそ〱と火鉢ひばちに噛着かじりついて、ひつたりと寄合よりあはす。

炭すみは黒くろいが、今いましがた繼ついだばかりで、尉じようにも成ならず、火氣くわきの立たちぎは。其それよりも、徹夜てつやの温習おさらひに、何なによりか書入かきいれな夜半やはんの茶漬ちやづけで忘わすれられぬ、大福だいふくめいた餡餅あんもを烘あぶつたなごりの、餅網もちあみが、侘わびしく破蓮やればすの形かたちで疊たゝみに飛とんだ。……御馳走ごちそうは十二時じと云いふと早はや濟すんで、――一ひとつは二人ふたりとも其それがために勇氣ゆうきがないので。……

常つねさんは耳みゝの白しろい頬ほゝを傾かたむけて、民也たみやの顏かほを覘のぞくやうにしながら、

「でも、誰だれも居ゐないんだもの……君きみの許とこの二階にかいは、廣ひろいのに、がらんとして居ゐる。……」

「病氣びやうきの時ときはね、お母つかさんが寢ねて居ゐたんだよ。」

コツ〱、炭すみを火箸ひばしで突つゝいて見みたつけ、はつと止やめて、目めを一ひとつ瞬またゝいて、

「え、そして、亡なくなつた時とき、矢張やつぱり、二階にかい。」

「うゝむ……違ちがふ。」

とかぶりを掉ふつて、

「其處そこのね、奧おく……」

「小父をぢさんだの、寢ねて居ゐる許とこかい。……ぢや可いいや。」と莞爾につこりした。

「弱蟲よわむしだなあ……」

「でも、小母をばさんは病氣びやうきの時とき寢ねて居ゐたかつて、今いまは誰だれも居ゐないんぢやないか。」

と觀世捩くわんぜよりが挫ひしやげた體ていに、元氣げんきなく話はなしは戻もどる……

「常つねさんの許とこだつて、あの、廣ひろい座敷ざしきが、風かぜはすう〱通とほつて、それで人ひとつ子こは居ゐませんよ。」

「それでも階下したばかりだもの。――二階にかいは天井てんじやうの上うへだらう、空そらに近ちかいんだからね、高たかい所ところには何なにが居ゐるか知しれません。……」

「階下しただつて……君きみの内うちでも、此この間あひだ、僕ぼくが、あの空間あきまを通とほつた時とき、吃驚びつくりしたものがあつたぢやないか。」

「どんなものさ、」

「床とこの間まに鎧よろひが飾かざつてあつて、便所べんじよへ行ゆく時ときに晃々ぴか〱光ひかつた……わツて、然さう云いつたのを覺おぼえて居ゐないかい。」

「臆病おくびやうだね、……鎧よろひは君きみ、可恐おそろしいものが出でたつて、あれを着きて向むかつて行ゆけるんだぜ、向むかつて、」

と氣勢きほつて肩かたを突構つきかまへ。

「こんな、寂さびしい時ときの、可恐こはいものにはね、鎧よろひなんか着きたつて叶かなはないや……向むかつて行ゆきや、消きえつ了ちまふんだもの……此これから冬ふゆの中頃なかごろに成なると、軒のきの下したへ近ちかく來くるつてさ、あの雪女郎ゆきぢよらう見みたいなもんだから、」

「然さうかなあ、……雪女郎ゆきぢよらうつて眞個ほんとにあるんだつてね。」

「勿論もちろんだつさ。」

「雨あめのびしよ〱降ふる時ときには、油舐坊主あぶらなめばうずだの、とうふ買小僧かひこぞうだのつて……あるだらう。」

「ある……」

「可厭いやだなあ。こんな、霰あられの降ふる晩ばんには何なんにも別べつにないだらうか。」

「町まちの中なかには何なんにもないとさ。それでも、人ひとの行ゆかない山寺やまでらだの、峰みねの堂だうだのの、額がくの繪ゑがね、霰あられがぱら〱と降ふる時とき、ぱちくり瞬まばたきをするんだつて……」

「嘘うそを吐つく……」

と其それでも常つねさんは瞬またゝきした。からりと廂ひさしを鳴ならしたのは、樋竹とひだけを辷すべる、落おちたまりの霰あられらしい。

「うそなもんか、其それは眞暗まつくらな時とき……丁ちやうど今夜こんや見みたやうな時ときなんだね。それから……雲くもの底そこにお月樣つきさまが眞蒼まつさをに出でて居ゐて、そして、降ふる事ことがあるだらう……さう云いふ時ときは、八田潟はつたがたの鮒ふなが皆みな首くびを出だして打うたれるつて云いふんです。」

「痛いたからうなあ。」

「其處そこが化ばけるんだから、……皆みんな、兜かぶとを着きて居ゐるさうだよ。」

「ぢや、僕ぼくン許とこの蓮池はすいけの緋鯉ひごひなんか何どうするだらうね?」

其處そこには小船こぶねも浮うかべられる。が、穴あなのやうな眞暗まつくらな場末ばすゑの裏町うらまちを拔ぬけて、大川おほかはに架かけた、近道ちかみちの、ぐら〱と搖ゆれる一錢橋いちもんばしと云いふのを渡わたつて、土塀どべいばかりで家うちの疎まばらな、畠はたけも池いけも所々ところ〲、侍町さむらひまちを幾曲いくまがり、で、突當つきあたりの松まつの樹きの中なかの其その邸やしきに行ゆく、……常つねさんの家うちを思おもふにも、恰あたかも此この時とき、二更にかうの鐘かねの音おと、幽かすか。

四

町まちなかの此處こゝも同おなじ、一軒家いつけんやの思おもひがある。

民也たみやは心こゝろも其その池いけへ、目めも遙々はる〲と成なつて恍惚うつとりしながら、

「蒼あをい鎧よろひを着きるだらうと思おもふ。」

「眞赤まつかな鰭ひれへ。凄すごい月つきで、紫色むらさきいろに透通すきとほらうね。」

「其處そこへ玉たまのやうな霰あられが飛とぶんだ……」

「そして、八田潟はつたがたの鮒ふなと戰いくさをしたら、何方どつちが勝かつ?……」

「然さうだね、」

と眞顏まがほに引込ひきこまれて、

「緋鯉ひごひは立派りつぱだから大將たいしやうだらうが、鮒ふなは雜兵ざふひやうでも數かずが多おほいよ……潟かた一杯いつぱいなんだもの。」

「蛙かはづは何方どつちの味方みかたをする。」

「君きみの池いけの?」

「あゝ、」

「そりや同おなじ所ところに住すんでるから、緋鯉ひごひに屬つくが當前あたりまへだけれどもね、君きみが、よくお飯粒まんまつぶで、絲いとで釣上つりあげちや投なげるだらう。ブツと咽喉のどを膨ふくらまして、ぐるりと目めを圓まるくして腹はらを立たつもの……鮒ふなの味方みかたに成ならうも知しれない。」

「あ、又また降ふるよ……」

凄すさまじい霰あられの音おと、八方はつぱうから亂打みだれうつや、大屋根おほやねの石いしもから〱と轉ころげさうで、雲くもの渦うづまく影かげが入はひつて、洋燈ランプの笠かさが暗くらく成なつた。

「按摩あんまの笛ふえが聞きこえなくなつてから、三度目さんどめだねえ。」

「矢やが飛とぶ。」

「彈たまが走はしるんだね。」

「緋鯉ひごひと鮒ふなとが戰たゝかふんだよ。」

「紫むらさきの池いけと、黒くろい潟かたで……」

「蔀しとみを一寸ちよつと開あけて見みようか、」

と魅みせられた體ていで、ト立たたうとした。

民也たみやは急きふに慌あわたゞしく、

「お止よし?……」

「でも、何なんだか暗くらい中なかで、ひら〱眞黒まつくろなのに交まじつて、緋ひだか、紫むらさきだか、飛とんで居ゐさうで、面白おもしろいもの、」

「面白おもしろくはないよ……可恐こはいよ。」

「何故なぜ?」

「だつて、緋ひだの、紫むらさきだの、暗くらい中うちに、霰あられに交まじつて――それだと電いなびかりがして居ゐるやうだもの……其その蔀しとみをこんな時ときに開あけると、そりや可恐こはいぜ。

さあ……此これから海うみが荒あれるぞ、と云いふ前觸まへぶれに、廂ひさしよりか背せの高たかい、大おほきな海坊主うみばうずが、海うみから出でて來きて、町まちの中なかを歩行あるいて居ゐてね……人ひとが覘のぞくと、蛇へびのやうに腰こしを曲まげて、其その窓まどから睨返にらみかへして、よくも見みたな、よくも見みたな、と云いふさうだから。」

「嘘うそだ!嘘うそばつかり。」

「眞個ほんとだよ、霰あられだつて、半分はんぶんは、其その海坊主うみばうずが蹴上けあげて來くる、波なみの潵しぶきが交まじつてるんだとさ。」

「へえ?」

と常つねさんは未まだ腑ふに落おちないか、立掛たちかけた膝ひざを落おとさなかつた……

霰あられは屋根やねを駈𢌞かけまはる。

民也たみやは心こゝろに恐怖きようふのある時とき、其その蔀しとみを開あけさしたくなかつた。

母はゝがまだ存生ぞんじやうの時ときだつた。……一夏あるなつ、日ひの暮方くれがたから凄すさまじい雷雨らいうがあつた……電光いなびかり絶間たえまなく、雨あめは車軸しやぢくを流ながして、荒金あらがねの地つちの車くるまは、轟とゞろきながら奈落ならくの底そこに沈しづむと思おもふ。――雨宿あめやどりに駈込かけこんだ知合しりあひの男をとこが一人ひとりと、内中うちぢう、此この店みせに居ゐすくまつた。十時じを過すぎた頃ころ、一呼吸ひといき吐つかせて、もの音おとは靜しづまつたが、裾すそを捲まいて、雷神はたゝがみを乘のせながら、赤黒あかぐろに黄きを交まじへた雲くもが虚空そらへ、舞まひ〱上あがつて、昇のぼる氣勢けはひに、雨あめが、さあと小止をやみに成なる。

其その喜よろこびを告まをさむため、神棚かみだなに燈火みあかしを點てんじようとして立たつた父ちゝが、其そのまゝ色いろをかへて立窘たちすくんだ。

ひい、と泣ないて雲くもに透とほる、……あはれに、悲かなしげな、何なんとも異樣いやうな聲こゑが、人々ひと〲の耳みゝをも胸むねをも突貫つきつらぬいて響ひゞいたのである。

五

笛ふえを吹ふく……と皆みな思おもつた。笛ふえもある限かぎり悲哀ひあいを籠こめて、呼吸いきの續つゞくだけ長ながく、且かつ細ほそく叫さけぶらしい。

雷鳴らいめいに、殆ほとんど聾しひなむとした人々ひと〲の耳みゝに、驚破すはや、天地てんち一ひとつの聲こゑ。

誰たれも其その聲こゑの長ながさだけ、氣きを閉とぢて呼吸いきを詰つめたが、引ひく呼吸いきは其その聲こゑの一度いちど止やむまでは續つゞかなかつた。

皆みな戰をのゝいた。

ヒイと尾をを微かすかに、其その聲こゑが切きれた、と思おもふと、雨あめがひたりと止やんで、又また二度にどめの聲こゑが聞きこえた。

「鳥とりか。」

「否いゝや。」

「何なんだらうの。」

祖母そぼと、父ちゝと、其その客きやくと言ことばを交かはしたが、其その言葉ことばも、晃々きら〱と、震ふるへて動うごいて、目めを遮さへぎる電光いなびかりは隙間すきまを射いた。

「近ちかい。」

「直ぢき其處そこだ。」

と云いふ。叫さけぶ聲こゑは、確たしかに筋向すぢむかひの二階家にかいやの、軒下のきしたのあたりと覺おぼえた。

其それが三聲みこゑめに成なると、泣なくやうな、怨うらむやうな、呻吟うめくやうな、苦くるしみ踠もがくかと思おもふ意味いみが明あきらかに籠こもつて來きて、新あたらしく又また耳みゝを劈つんざく……

「見みよう、」

年少としわかくて屈竟くつきやうな其その客きやくは、身震みぶるひして、すつくと立たつて、内中うちぢうで止とめるのも肯きかないで、タン、ド、ドン!と其その、其處そこの蔀しとみを開あけた。――

「何なに、」

と此處こゝまで話はなした時とき、常つねさんは堅かたくなつて火鉢ひばちを掴つかんだ。

「其その時ときの事ことを思出おもひだすもの、外ほかに何なにが居ゐようも知しれない時とき、其その蔀しとみを開あけるのは。」

と民也たみやは言いふ。

却説さて、大雷たいらいの後あとの希有けうなる悲鳴ひめいを聞きいた夜よる、客きやくが蔀しとみを開あけようとした時ときの人々ひと〲の顏かほは……年月としつきを長ながく經へても眼前まのあたり見みるやうな、いづれも石いしを以もつて刻きざみなした如ごときものであつた。

蔀しとみを上あげると、格子戸かうしどを上うへへ切きつた……其それも鳴なるか、簫せうの笛ふえの如ごとき形かたちした窓まどのやうな隙間すきまがあつて、衝つと電光いなびかりに照てらされる。

と思おもふと、引緊ひきしめるやうな、柔やはらかな母はゝの兩りやうの手てが強つよく民也たみやの背せに掛かゝつた。既すでに膝ひざに乘のつて、噛かじり着ついて居ゐた小兒こどもは、其それなり、薄青うすあをい襟えりを分わけて、眞白まつしろな胸むねの中なかへ、頬ほゝも口くちも揉込もみこむと、恍惚うつとりと成なつて、最もう一度いちど、ひよいと母親はゝおやの腹はらの内うちへ安置あんちされ終をはんぬで、トもんどりを打うつて手足てあしを一ひとつに縮ちゞめた處ところは、瀧たきを分わけて、すとんと別べつの國くにへ出でた趣おもむきがある、……そして、透通すきとほる胸むねの、暖あたゝかな、鮮血からくれなゐの美うつくしさ。眞紅しんくの花はなの咲滿さきみちた、雲くもの白しろい花園はなぞのに、朗ほがらかな月つきの映うつるよ、と其その浴衣ゆかたの色いろを見みたのであつた。

が、其その時ときまでの可恐おそろしさ。――

「常つねさん、今いま君きみが蔀しとみを開あけて、何なにかが覗のぞいたつて、僕ぼくは潛込もぐりこむ懷中ふところがないんだもの……」

簫せうの窓まどから覗のぞいた客きやくは、何なにも見みえなかつた、と云いひながら、眞蒼まつさをに成なつて居ゐた。

其その夜よから、筋向すぢむかうの其その土藏附どざうつきの二階家にかいやに、一人ひとり氣きが違ちがつた婦をんながあつたのである。

寂寞ひつそりと霰あられが止やむ。

民也たみやは、ふと我われに返かへつたやうに成なつて、

「去年きよねん、母おつかさんがなくなつたからね……」

火桶ひをけの面おもてを背そむけると、机つくゑに降込ふりこんだ霰あられがあつた。

ぢゆうと火ひの中なかにも溶とけた音おと。

「勉強べんきやうしようね、僕ぼくは父おとつさんがないんだよ。さあ、」

鮒ふなが兜かぶとを着きると云いふ。……

「八田潟はつたがたの處ところを讀よまう。」

と常つねさんは机つくゑの向むかうに居直ゐなほつた。

洋燈ランプが、じい〱と鳴なる。

其その時ときであつた。

六

二階にかいの階子壇はしごだんの一番いつち上うへの一壇目いちだんめ……と思おもふ處ところへ、欄間らんまの柱はしらを眞黒まつくろに、くツきりと空そらにして、袖そでを欄干摺てすりずれに……其その時ときは、濃こいお納戸なんどと、薄うすい茶ちやと、左右さいうに兩方りやうはう、褄前つまさきを揃そろへて裾すそを踏ふみくゞむやうにして、圓髷まげと島田しまだの對丈つゐたけに、面影おもかげ白しろく、ふツと立たつた、兩個ふたりの見みも知しらぬ婦人をんながある。

ト其その色いろも……薄うすいながら、判然はつきりと煤すゝの中なかに、塵ちりを拂はらつてくつきりと鮮麗あざやかな姿すがたが、二人ふたりが机つくゑに向むかつた横手よこて、疊數たゝみかず二疊でふばかり隔へだてた處ところに、寒さむき夜よなれば、ぴつたり閉しめた襖ふすま一枚まい……臺所だいどころへ續つゞくだゞつ廣ぴろい板敷いたじきとの隔へだてに成なる……出入口ではひりぐちの扉ひらきがあつて、むしや〱と巖いはの根ねに蘭らんを描ゑがいたが、年數ねんすう算さんするに堪たへず、で深山みやまの色いろに燻くすぼつた、引手ひきての傍わきに、嬰兒あかんぼの掌てのひらの形かたちして、ふちのめくれた穴あなが開あいた――其その穴あなから、件くだんの板敷いたじきを、向むかうの反古張ほごばりの古壁ふるかべへ突當つきあたつて、ぎりゝと曲まがつて、直角ちよくかくに菎蒻色こんにやくいろの干乾ひからびた階子壇はしごだん……十とをばかり、遙はるかに穴あなの如ごとくに高たかい其その眞上まうへ。

即すなはち襖ふすまの破目やれめを透とほして、一ひとつ突當つきあたつて、折屈をりまがつた上うへに、たとへば月つきの影かげに、一刷ひとはけ彩いろどつた如ごとく見みえたのである。

トンと云いふ。

と思おもふと、トン〱トンと輕かるい柔やはらかな音おとに連つれて、褄つまが搖ゆれ〱、揃そろつた裳もすそが、柳やなぎの二枝ふたえだ靡なびくやう……すら〱と段だんを下おりた。

肩かたを揃そろへて、雛ひなの繪ゑに見みる……袖そでを左右さいうから重かさねた中なかに、どちらの手てだらう、手燭てしよくか、臺だいか、裸火はだかびの蝋燭らふそくを捧さゝげて居ゐた。

蝋らふの火ひは白しろく燃もえた。

胸むねのあたりに蒼味あをみが射さす。

頬ほゝのかゝり白々しろ〲と、中なかにも、圓髷まるまげに結ゆつた其その細面ほそおもての氣高けだかく品ひんの可いい女性によしやうの、縺もつれた鬢びんの露つゆばかり、面窶おもやつれした横顏よこがほを、瞬またゝきもしない雙さうの瞳ひとみに宿やどした途端とたんに、スーと下おりて、板いたの間まで、もの優やさしく肩かたが動うごくと、其その蝋らふの火ひが、件くだんの繪襖ゑぶすまの穴あなを覘のぞく……其その火ひが、洋燈ランプの心しんの中なかへ、𤏋ぱつと入はひつて、一ひとつに成なつたやうだつた。

やあ!開あけると思おもふ。

「きやツ、」

と叫さけんで、友達ともだちが、前さきへ、背後うしろの納戸なんどへ刎込はねこんだ。

口くちも利きけず……民也たみやも其その身體からだへ重かさなり合あつて、父ちゝの寢ねた枕頭まくらもとへ突伏つゝぷした。

こゝの障子しやうじは、幼をさないものの夜更よふかしを守まもつて、寒さむいに一枚まい開あけたまゝ、霰あられの中なかにも、父ちゝと祖母そぼの情なさけの夢ゆめは、紙一重かみひとへの遮さへぎるさへなく、机つくゑのあたりに通かよつたのであつた。

父ちゝは夢ゆめだ、と云いつて笑わらつた、……祖母そぼもともに起おきて出いで、火鉢ひばちの上うへには、再ふたゝび芳かんばしい香かをりが滿みつる、餅網もちあみがかゝつたのである。

茶ちやの煑にえた時とき、眞夜中まよなかに又また霰あられが來きた。

後あとで、常つねさんと語合かたりあふと……二人ふたりの見みたのは、しかも其それが、錦繪にしきゑを板はんに合あはせたやうに同一おなじかつたのである。

此これが、民也たみやの、ともすれば、フト出逢であふ、二人ふたりの姿すがたの最初はじめであつた。

常つねさんの、三日みつかばかり學校がくかうを休やすんだのは然さる事ことながら、民也たみやは、それが夢ゆめでなくとも、然さまで可恐おそろしいとも可怪あやしいとも思おもはぬ。

敢あへて思おもはぬ、と云いふではないが、恁かうしたあやしみには、其その時分じぶん馴なれて居ゐた。

毎夜まいよの如ごとく、内井戸うちゐどの釣瓶つるべの、人手ひとでを借からず鳴なつたのも聞きく……

轆轤ろくろが軋きしんで、ギイと云いふと、キリ〱と二ふたつばかり井戸繩ゐどなはの擦合すれあふ音おとして、少須しばらくして、トンと幽かすかに水みづに響ひゞく。

極きまつたやうに、其そのあとを、ちよき〱と細こまかに俎まないたを刻きざむ音おと。時雨しぐれの頃ころから尚なほ冴さえて、ひとり寢ねの燈火ともしびを消けした枕まくらに通かよふ。

七

續つゞいて、臺所だいどころを、こと〱と云いふ跫音あしおとがして、板いたの間まへ掛かゝる。――此この板いたの間まへ、其その時ときの二人ふたりの姿すがたは來きたのであるが――又また……實際じつさいより、寢ねて居ゐて思おもふ板いたの間まの廣ひろい事こと。

民也たみやは心こゝろに、此これを板いたの間まヶ原はらだ、と稱となへた。

傳つたへ言いふ……孫右衞門まごゑもんと名なづけた氣きの可いい小父をぢさんが、獨酌どくしやくの醉醒よひざめに、我わがねたを首くびあげて見みる寒さむさかな、と來山張らいざんばりの屏風越びやうぶごしに、魂消たまげた首くびを出だして覘のぞいたと聞きく。

臺所だいどころの豪傑儕がうけつばら、座敷方ざしきがたの僭上せんじやう、榮耀榮華えいえうえいぐわに憤いきどほりを發はつし、しや討うて、緋縮緬小褄ひぢりめんこづまの前まへを奪取ばひとれとて、竈將軍かまどしやうぐんが押取おつとつた柄杓ひしやくの采配さいはい、火吹竹ひふきだけの貝かひを吹ふいて、鍋釜なべかまの鎧武者よろひむしやが、のん〱のん〱と押出おしだしたとある……板いたの間まヶ原はらや、古戰場こせんぢやう。

襖一重ふすまひとへは一騎打いつきうちで、座敷方ざしきがたでは切所せつしよを防ふせいだ、其處そこの一段いちだん低ひくいのも面白おもしろい。

ト其その氣きで、頬杖ほゝづゑをつく民也たみやに取とつては、寢床ねどこから見みる其その板いたの間まは、遙々はる〲としたものであつた。

跫音あしおとは其處そこを通とほつて、一寸ちよつと止やんで、やがて、トン〱と壇だんを上あがる、と高たかい空そらで、すらりと響ひゞく襖ふすまの開あく音おと。

「あゝ、二階にかいのお婆ばあさんだ。」

と、熟じつと耳みゝを澄すますと、少時しばらくして、

「えゝん。」

と云いふ咳せきばらひ。

「今度こんどは二階にかいのお爺ぢいさん。」

此この二人ふたりは、母はゝの父母ふぼで、同家ひとついへに二階住居にかいずまひで、睦むつまじく暮くらしたが、民也たみやのもの心ごころを覺おぼえて後のち、母はゝに先さきだつて、前後ぜんごして亡なくなられた……

其その人ひとたちを、こゝにあるもののやうに、あらぬ跫音あしおとを考かんがへて、咳しはぶきを聞きく耳みゝには、人氣勢ひとけはひのない二階にかいから、手燭てしよくして、する〱と壇だんを下おりた二人ふたりの姿すがたを、然さまで可恐おそろしいとは思おもはなかつた。

却かへつて、日ひを經ふるに從したがつて、物語ものがたりを聞ききさした如ごとく、床ゆかしく、可懷なつかしく、身みに染しみるやうに成なつたのである。……

霰あられが降ふれば思おもひが凝こる。……

然さうした折をりよ、もう時雨しぐれの頃ころから、其その一二年ねんは約束やくそくのやうに、井戸ゐどの響ひゞき、板いたの間まの跫音あしおと、人ひとなき二階にかいの襖ふすまの開あくのを聞馴きゝなれたが、婦をんなの姿すがたは、當時たうじ又また多日しばらくの間あひだ見みえなかつた。

白菊しらぎくの咲さく頃ころ、大屋根おほやねへ出でて、棟瓦むねがはらをひらりと跨またいで、高たかく、高たかく、雲くもの白しろきが、微かすかに動うごいて、瑠璃色るりいろに澄渡すみわたつた空そらを仰あふぐ時ときは、あの、夕立ゆふだちの夜よを思出おもひだす……そして、美うつくしく清きよらかな母はゝの懷ふところにある幼兒をさなごの身みにあこがれた。

此この屋根やねと相向あひむかつて、眞蒼まつさをな流ながれを隔へだてた薄紫うすむらさきの山やまがある。

醫王山いわうぜん。

頂いたゞきを虚空こくうに連つらねて、雪ゆきの白銀しろがねの光ひかりを放はなつて、遮さへぎる樹立こだちの影かげもないのは、名なにし負おふ白山はくさんである。

やゝ低ひくく、山やまの腰こしに其その流ながれを繞めぐらして、萌黄もえぎまじりの朱しゆの袖そでを、俤おもかげの如ごとく宿やどしたのは、つい、まのあたり近ちかい峰みね、向山むかひやまと人ひとは呼よぶ。

其その裾すそを長ながく曳ひいた蔭かげに、圓まるい姿見すがたみの如ごとく、八田潟はつたがたの波なみ、一所ひとところの水みづが澄すむ。

島しまかと思おもふ白帆しらほに離はなれて、山やまの端はの岬みさきの形かたち、につと出でた端はしに、鶴つるの背せに、緑みどりの被衣かつぎさせた風情ふぜいの松まつがある。

遙はるかに望のぞんでも、其その枝えだの下したは、一筵ひとむしろ、掃清はききよめたか、と塵ちりも留とゞめぬ。

あゝ山やまの中なかに葬はうむつた、母はゝのおくつきは彼處かしこに近ちかい。

其その松まつの蔭かげに、其その後のち、時々とき〲二人ふたりして佇たゝずむやうに、民也たみやは思おもつた、が、母はゝには然さうした女をんなのつれはなかつたのである。

月つきの冴さゆる夜よは、峰みねに向むかつた二階にかいの縁えんの四枚よまいの障子しやうじに、それか、あらぬか、松影まつかげ射さしぬ……戸袋とぶくろかけて床とこの間まへ。……

また前まへに言いつた、もの凄すごい暗くらい夜よるも、年とし經へて、なつかしい人ひとを思おもへば、降積ふりつもる霰あられも、白菊しらぎく。

底本 / Source edition

底本:「鏡花全集 巻十四」岩波書店
1942(昭和17)年3月10日第1刷発行
1987(昭和62)年10月2日第3刷発行
初出:「太陽」
1912(大正元)年11月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
※「若《わか》い」と「少《わか》い」、「婦人《をんな》」と「婦《をんな》」と「女《をんな》」、「裡《うち》」と「内《うち》」、「彳《たゝず》んだ」と「佇《たゝず》む」、「亦《また》」と「又《また》」、「取《と》り留《と》め」と「取留《とりと》め」、「同一《おなじ》」と「同《おな》じ」、「年《とし》」と「年紀《とし》」、「相手《あひて》」と「對手《あひて》」、「云《い》ふ」と「言《い》ふ」、「少時《しばらく》」と「少須《しばらく》」と「多日《しばらく》」、「母《おつか》さん」と「お母《つか》さん」、「内《うち》」と「家《うち》」、「矢張《やつぱ》り」と「矢張《やつぱり》」、「電《いなびかり》」と「電光《いなびかり》」、「虚空《そら》」と「空《そら》」、「言《ことば》」と「言葉《ことば》」、「兩個《ふたり》」と「二人《ふたり》」、「幽《かす》か」と「微《かすか》」、「面影《おもかげ》」と「俤《おもかげ》」、「覘《のぞ》く」と「覗《のぞ》いた」、「留《と》め」と「止《と》め」、「見《み》た」と「視《み》て」、「處《ところ》」と「所《ところ》」、「懷中《ふところ》」と「懷《ふところ》」、「蒼《あを》」と「青《あを》」、「降《お》り」と「下《お》り」、「壇《だん》」と「段《だん》」、「確《たしか》」と「確《たし》か」、「思《おも》ひ」と「思《おもひ》」、「大《おほ》きな」と「大《おほき》な」の混在は、底本通りです。
※「入つて」に対するルビの「い」と「はひ」、「皆」に対するルビの「みんな」と「みな」、「圓髷」に対するルビの「まげ」と「まるまげ」、「時々」に対するルビの「より/\」と「とき/″\」、「瞬き」に対するルビの「まばた」と「またゝ」、「燈火」に対するルビの「ともしび」と「みあかし」、「咳」に対するルビの「せきばらひ」と「しはぶき」、「誰」に対するルビの「だれ」と「たれ」、「最初」に対するルビの「さいしよ」と「はじめ」、「可恐い」に対するルビの「おそろし」と「こは」、「虚空」に対するルビの「そら」と「こくう」の混在は、底本通りです。
入力:門田裕志
校正:室谷きわ
2021年10月27日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(https://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

この表示について / About this rendering

記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.

リリース / Release
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c
TEI
/works/004583_000050/tei
プレーンテキスト / Plain text
/works/004583_000050/plaintext
書誌 / Bibliography
/works/004583_000050/

泉 鏡花、泉 鏡太郎「霰ふる」(旧字旧仮名)、底本『鏡花全集 巻十四』岩波書店、1942年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 004583_000050, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite