Soranoha

三人の盲の話

さんにんのめくらのはなし

泉 鏡花

一

「もし〱、其處そこへ行いらつしやりますお方かた。」……と呼よぶ。

呼よばれた坂上さかがみは、此この聲こゑを聞きくと、外套ぐわいたうの襟えりから先まづ悚然ぞつとした。……誰たれに似にて可厭いやな、何時いつ覺おぼえのある可忌いまはしい調子てうしと云いふのではない。が、辿たどりかゝつた其そのたら〱上あがりの長ながい坂さかの、下したから丁ちやうど中央なかばと思おもふ處ところで、靄もやのむら〱と、動うごかない渦うづの中なかを、見みえ隱がくれに、浮ういつ沈しづみつする體ていで、跫音あしおとも聞きこえぬばかり――四谷よツやの通とほりから穴あなの横町よこちやうへ續つゞく、坂さかの上うへから、しよな〱下おりて來きて、擦違すれちがつたと思おもふ、と其その聲こゑ。

何なんの約束やくそくもなく、思おもひも懸かけず行逢ゆきあつたのに、ト見みながら行過ゆきすぎるうち、其それなり何事なにごとも無なしには分わかれまい。呼よぶか、留とめるか、屹きつと口くちを利きくに違ちがひない、と坂上さかがみは不思議ふしぎにも然さう思おもつた。尤もつとも其それは、或機會あるきつかけに五位鷺ごゐさぎが闇夜やみを叫さけぶ、鴉からすが啼なく、と同おなじ意味いみで、聞きくものは、其處そこに自分じぶん一人ひとりでも、鳥とりは誰たれに向むかつて呼よぶのか分わからない。けれども、可厭いやな、可忌いまはしい聲こゑを聞きかずには濟すむまい、と思おもふと案あんの定ぢやう……

來きて、其その行逢ゆきあつたものは、一ひとならびに並ならんだ三人にんづれで、どれも悄乎しよんぼりとした按摩あんまである。

中なかに挾はさまれたのは、弱々よわ〱と、首くびの白しろい、髮かみの濃こい、中年増ちうどしまと思おもふ婦をんなで、兩りやうの肩かたがげつそり痩やせて、襟えりに引合ひきあはせた袖そでの影かげが――痩やせた胸むねを雙さうの乳房ちぶさまで染しみ通とほるか、と薄暗うすぐらく、裾すそをかけて、帶おびの色いろと同おなじやうに――黒くろく映さして、ぴた〱ぴた〱と草履穿ざうりばきか、地つちとすれ〱の褄つまを見みた。

先さきに立たつたのは鼠ねずみであらう、夜目よめには此この靄もやを織おつてなやした、被布ひふのやうなものを、ぐたりと着きて、縁ふちなしの帽子ばうしらしい、ぬいと、のはうづに高たかい、坊主頭ばうずあたま其そのまゝと云いふのを被かぶつた、脊せいのひよろりとしたのが、胴どうを畝うねらして……通とほる。

後あとなる一人ひとりは、中脊ちうぜいの細ほそい男をとこで、眞中まんなかの、其その盲目婦めくらをんなの髮かみの影かげにも隱かくれさうに、帶おびに體からだを附着くツつけて行違ゆきちがつたのであるから、形なり、恰好かつかう、孰どれも判然はつきりとしない中なかに、此この三人目にんめのが就中なかんづく朧おぼろに見みえた。

此その癖くせ、もし〱、と云いつた、……聲こゑを聞きくと、一番いちばんあとの按摩あんまが呼留よびとめた事ことが、何どうしてか直すぐに知しれた……

「私わたしかい。」

と直すぐに答こたへて、坂上さかがみは其そのまゝ立留たちどまつて、振向ふりむいた……ひやりと肩かたから窘すくみながら、矢庭やにはに吠ほえる犬いぬに、(畜生ちくしやう、)とて擬勢ぎせいを示しめす意氣組いきぐみである。

「はあ、お前樣まへさまで。」

と沈しづんで云いふ。果はたせる哉かな、殿しんがりの痩按摩やせあんまで、恁かう口くちをきく時とき、靄もやを漕こぐ、杖つゑを櫂かいに、斜なゝめに握にぎつて、坂さかの二三歩ぽ低ひくい處ところに、伸上のびあがるらしく仰向あをむいて居ゐた。

先さきの二人ふたり、頭あたまの長ながいのと、何なにかに黒髮くろかみを結むすんだのは、芝居しばゐの樂屋がくやの鬘臺かつらうけに、髷まげをのせて、倒さかさに釣つるした風情ふぜいで、前後あとさきになぞへに並ならんで、向むかうむきに立たつて、同伴者つれの、然さうして立淀たちよどんだのを待まつらしい。

坂上さかがみは外套ぐわいたうの袖そでを捻ねぢて、踵くびすを横よこざまに踏ふみながら、中折なかをれの庇ひさしから、對手あひての眉間みけんを透すかし視みつつ、

「私わたしに用ようか。」

「一寸ちよつと……お話はなしが……ありまして……」と落着おちついたのか、息いきだはしいのか、冬ふゆの夜よふけをなまぬるい。

二

「用事ようじは何なんです。」

はじめ、靄もやの中なかを、此この三人にんが來きて通とほりすがつた時とき、長ながいのと短みじかいのと、野墓のばかに朽くちた塔婆たふばが二本ほん、根本ねもとにすがれた尾花をばなの白しろい穗ほを縋すがらせたまゝ、土つちながら、凩こがらしの餘波なごりに、ふは〱吹ふき送おくられて來きたかと思おもつた。

漸やつと、其その(思おもつた)が消きえて、まざ〱と恁かうしてものを言交いひかはせば、武藏野むさしのの丘をかの横穴よこあなめいた、山やまの手て場末ばすゑの寂さびた町まちを、搜さぐり〱に稼かせいで歩行あるくのが、誘さそひ合あはせて、年としを越こす蚊かのやうに、細ほそい笛ふえの音ねで、やがて木賃宿きちんやどの行燈あんどうの中なかへ消きえるのであらうと、合點がつてんして、坂上さかがみも稍やゝもの言いひが穩おだやかに成なつたのである。

按摩あんまは其その仰向あをむいて打傾うちかたむいた、耳みゝの痒かゆいのを掻かきさうな手てつきで、右手めてに持添もちそへた杖つゑの尖さきを、輕かるく、コト〱コト〱と彈はじきながら、

「用ようと云いうて、別べつに、此これと云いうてありませぬ。ありませぬ、けれども、お前樣まへさま今いまから、何處どこへ行ゆかれます。何處どこへ、何處どこへ、何處どこへ?」……と些ちと嘲あざけるやうに、小鼻こばなで調子てうしを取とつた聞きき方かたをする。

「構かまひなさんな。」

無理むりな首尾しゆびの、婦をんなに忍しのぶ夜よであつた……

坂上さかがみは憤然むつとして、

「何處どこへ行いつても可いいではないか。」

「可ようない、其それが可ようない、お前樣まへさま、」と押附おしつけに言いつた聲こゑに、振切ふりきつては衝つと足あしの出でぬ力ちからが籠こもる。

「何故なぜ惡わるいんだね。」

と、却かへつて坂下さかしたへ小戻こもどりにつか〱と近ちかづいたが、餘あまり傍そばへ寄よると、靄もやが、ねば〱として顏かほへ着つきさうで、不氣味ぶきみで控ひかへた。

「もう遲おそい!」

と急きふに幅はゞのある強つよい聲こゑ。按摩あんまは其その時とき、がつくりと差俯向さしうつむく。

立たち窘すくんだ體ていだつた、長頭ながあたまの先達盲人せんだつめくらは、此この時とき、のろりと身動みうごきして、横よこに崖がけの方はうへ顏かほを向むけた。

次つぎの婦をんなは、腰こしから其その影かげを地つちへ吸込すひこまれさうに、悄乎しよんぼりと腰こしをなやして踞しやがむ……鬢びんのはづれへ、ひよろりと杖つゑの尖さきが抽ぬけて青あをい。

三人にんが根ねをおろしたらしく見みて取とると、坂上さかがみも、急きふには踏出ふみだせさうもなく、足あしが地ちに附着くツついたが、前途さきを急いそぐ胸むねは、はツ〱と、毒氣どくきを掴つかんで口くちから吹込ふきこまれさうに躍をどつて、血ちを動うごかしては、ぐつと膨ふくれ、肉にくをわなゝかしては、げつそり挫ひしやげる。

坂さかの其その兩方りやうはうは、見上みあげて峰みねの如ごとき高臺たかだいのなだれた崖がけで、……時ときに長頭ながあたまが面おもてを向むけた方はうは、空そらに一二軒けん、長屋立ながやだてが恰あたかも峠茶屋たうげぢややと云いふ形かたちに、霜しもよ、と靄もやのたゝまり積つんだ、枯草かれくさの上うへに、灯ひの影かげもなく鎖とざさるゝ。

で、此このものどもの寄よつた方はうは、木きの根ねぐるみ地壓ぢおさへの杭くひも露顯あらはに、泥どろの崩くづれた切立きりたてで、上うへには樹立こだちが參差すく〱と骨ほねを繋つなぐ。其その枝えだの所々しよ〱、濁にごつた月影つきかげのやうな可厭いやな色いろの靄もやが搦からんで、星ほしもない……山やま深ふかく谷川たにがはの流ながれに望のぞんだ思おもひの、暗夜やみの四谷よツやの谷たにの底そこ、時刻じこくは丁ちやうど一時じ頃ごろ。

激はげしく動うごくは胸むねばかり……づん〱と陰氣いんきな空そらから、身體からだを壓附おしつけられるやうで、

「遲おそいのが、何なんで惡わるい。」

とものいひも重おもく成なる。

「然さう言いはれる、申まをされる……」

と杖つゑを持もつた手ての甲かふを、丁とんと敲たゝき、

「如何いかにも、もし、それが惡わるい……」

「行いつては不可いけないと云いふのかね。」と、心こゝろがかりな今夜こんやの逢あふ瀬せの、辻占つじうらにもと裏問うらどへば……

「惡わるいと云いうたりとて、お前樣まへさま氣き一ひとつで行ゆかるれば、それまでの事ことではあれど、先まづお留とめ申まをしたい。

これは、私わし一人ひとりか……

其處そこに居ゐる人じんも。」

と云いつて、杖つゑをまつすぐに持直もちなほすと、むかうで長頭ながあたまが、一ひとつ幽かすかな咳しはぶき。

三

「行いくなつたつて、行いかなけりや成ならない所ところだつたら何どうします。」

と坂上さかがみの呼吸いきはあせつた……

「親おやが大病たいびやうだか、友ともだちが急病きふびやうだか、知しれたもんですか。……君きみたちのやうに言いつちや、何なにか、然さも怪あやしい所ところへでも出掛でかけるやうだね。」

「へゝゝ、」

と杖つゑの尖さきに頬ほゝをすりつける如ごとく傾かしがつて、可厭いやに笑わらひ、

「其それが分わかればこそ申まをすのなり、あの人じんも言いへと言いひます……當あてますか、私わたしが。……知しつても大事だいじない。明あけて爾々しか〲とお言いひなされ。お前樣まへさまは婦をなごに逢あひに行ゆく、」

「…………」

「な、然しかも、先方さきは、義理ぎり、首尾しゆびで、差當さしあたつては間まの惡わるい處ところを、お前樣まへさまが突詰つきつめて、斷たつて、垣かきも塀へいも、押倒おしたふし突破つきやぶる、……其その力ちからで、胸むねを掻毮かきむしるやうにあせるから、婦をなごも切せまつて、身みにも生命いのちにも代かへて逢あはうと云いふ。其それへ行ゆく……お前樣まへさま、其その途中とちうでありませう。通とほりがかりから、行逢ゆきあうて、恁かうやつて擦違すれちがうたまでの跫音あしおとで、よう知しれました。とぼ〱した、上うはの空そらなので丁ちやんと分わかる……

霧きりもかゝり、霜しももおりる……月つきも曇くもれば星ほしも暗くらし、此この大空おほぞらにも迷まよひはある。迷まよひも、其それは穩おだやかなれども、胸むねの塞ふさがり呼吸いきが閉とぢる、もやくやなあとの、電いなびかり、はたゝがみを御覽ごらんぜい。

人間にんげんの思おもひ、何事なにごとも不思議ふしぎはない。

私われらが心こゝろに思較おもひくらべた……身みに引較ひきくらべればこそ、此この掌たなごころを……」

と云いふ、己おのが面おもてへ、掌たなそこを蓋ふたする如ごとくに、

「……掌たなごころを見みるとやら申まをす通とほり、見みえぬ目めにも知しれました。」

あとの二人ふたりとも、此この時とき言合いひあはせた體ていに、上うへと下したで、衣きものの襞襀ひだまで、頷うなづいたのが朧おぼろに分わかつた。

坂上さかがみは、氣拔きぬけのした状さまに、大息おほいきを吻ほつと吐ついて、

「辻つじで賣卜うらなひをする人ひとたちか。私わたしも氣きが急いそいだので、何なにか失禮しつれいを言いつたかも知しれない……

先方さきは足袋跣足たびはだしで、或家あるいへを出でて、――些ちつと遠とほいが、これから行ゆく所ところに、森もりのある中なかに隱かくれて待まつた切きり、一人ひとりで身動みうごきも出來できないで居ゐるんです。

其その事ことは、私わたしが今いままで居ゐた所ところへ、當人たうにんから懸かけた、符牒ふてふばかりの電話でんわで知しれて、實際じつさい、氣きも顛倒てんだうして急いそぐんです。行いかないで何どうしますか、行いつては惡わるいんですか。」

「われら考かんがへたも其その通とほり……いや、男をとこらしく、よう申まをされました。さて、いづれもお最惜いとしいが、あゝ、危あぶない事ことかな。」

と杖つゑを引緊ひきしめるやうに、胸むねへ取とつて兩手りやうてをかけた。痩按摩やせあんまは熟じつと案あんじて、

「先まづお聞きき申まをすが、唯今たゞいま、此この坂さかの此この、われらが片寄かたよつて路傍みちばたに立たちました……此この崖下がけしたに、づら〱となぞへに並ならびました瓦斯燈がすとうは、幾基いくだいが所ところ燈あかりが點ついて、幾基いくだいが所ところ消きえて居をります。一寸ちよつと、御覽ごらんぜ、一寸ちよつと御覽ごらんぜ。」

と言いひ〱、がく〱と項うなじを掉ふつて首かうべを垂たれる。

言ことばに引向ひきむけられたやうに、三人にんの並ならんだ背後うしろを拾ひろつて、坂下さかしたから、上うへの町まちへ、トづらりと視みると……坂上さかがみは今夜こんやはじめて此この路みちを通とほるのではない。……片側かたかはへ並ならべて崖添がけぞひに、凡およそ一間けんおきぐらゐに、間なかを籠こめて、一二三堂ひふみだうと云いふ、界隈かいわいの活動寫眞くわつどうしやしんの手てで建たてた、道路安全だうろあんぜんの瓦斯燈がすとうがすく〱ある。

しろ〲と霜柱しもばしらのやうに冷つめたく並ならんで、硝子火屋がらすほやは、崖がけの巖穴いはあなに一ひとツ一ひとツ窓まどを開あけた風情ふぜいに見みえて、ばつたり、燈あかりが消きえたあとを、目めの屆とゞく、どれも是これも、靄もやを噛かんで、吸すひ溜ため吸すひ溜ため、透間すきまを覗のぞいて切きれ〲に灰色はひいろの息いきを吹出ふきだす。

かと思おもへば、目めの前まへに近ちかいのは、あらう事ことか、鬼おにの首くびを古綿ふるわたで面形めんがたに取とつた形かたちに、靄もやがむら〱と瓦斯燈がすとうの其その消きえたあとに蟠わだかまつて、怪あやしく土蜘蛛つちぐもの形かたちを顯あらはし、同おなじ透間すきまから吹ふく息いきも、これは可恐おそろしい絲いとを手繰たぐつて、天そらへ投掛なげかけ、地ちに敷しき展のべ、宙ちうに綾取あやどる。や、然さう思おもへば、靄もやのねば〱は、這個この振舞ふるまひか。

四

「大抵たいてい、皆みな消きえて居をります筈はずで。」

と按摩あんまは、坂上さかがみが然さうして、きよろ〱と瓦斯燈がすとうを眗みまはす内うちに、先さきんじて又また云いつた。

「すつかり消きえて居ゐる。あゝ、」と尚なほ一倍いちばい、夜よの更ふけたのが身みに染しみた。

「な、消きえて居をりませう……けれども、お前樣まへさまから、坂さかの上うへの方はうへ算かぞへまして、其その何臺目なんだいめかの瓦斯がすが一ひとつ、まだ燈あかりが點ついて居をらねばなりませぬ。……見みえますか。」

「見みえる……」

と答こたへた、如何いかにも一臺だい、薄うすぼんやりと、灯ひが亂みだれて、靄もやへ流ながれさうに點ついて居ゐる。

「しかし、何本なんぼんめだか一寸ちよつと分わからない。」

「餘あまり遠とほい所ところではありませぬ。人通ひとどほりのない、故道松並木ふるみちまつなみきの五位鷺ごゐさぎは、人ひとの居處ゐどころから五本目ほんめの枝えだに留とまります、道中だうちう定さだまり。……其その灯ひの消殘きえのこりましたのは、お前樣まへさまから、上うへへ五本目ほんめと存ぞんじます。

私わたしが間違まちがつた事ことを言いひますれば、其處そこに居ゐます師匠ししやう、沙汰さたをします筈はず。點ともつて立たつて居をります上うへは、決けつして相違さうゐないと存ぞんじます。數かずを取とつて御覽ごらんぜ、御覽ごらんぜ……一ひとつ、」と杖つゑの尖さきをカタ〱と二ふたつ鳴ならす。

「一ひい……」

「二ふたツ、」と三みつツ、杖つゑの尖さきをコト〱コト。

「三みい……四よう……確たしかに五本目ほんめ……」

「でありませうな。」

「何どうしたと云いふんです。」

「お前樣まへさま、此この暗夜やみに、われらの形かたち、崖がけの樣子やうす、消きえた瓦斯燈がすとうの見みえますのも、皆みな其その一ひとつの影かげなので。然さもない事ことには、鼻はなを撮つままれたとて分わかりませぬが。」

成程なるほど、覺束おぼつかない、ものの形かたちも、唯たゞ一ひとツ其その燈あかりの影かげなのである……心着こゝろづくと、便たよりない色いろながら、其その力ちからには、揃そろつて消きえた街燈がいとうが、時々とき〲ぎら〱と光ひかりさへする――靄もやが息いきを吐はいて瞬またゝく中うちに、――坂上さかがみの姿すがたもふら〱として、

「一體いつたい、其それが何どうしたんです。」

「然されば……其その五基目だいめに一ひとツ殘のこりました灯ひの下したに、何なにか見みえはいたしませぬか。」

「何なにが、」

と云いふのも聲こゑが震ふるふ、坂上さかがみは又また慄然ぞつとした。

「何なにか、居ゐはいたしませぬか。」

「何なんにも、何なんにも居をらん。」

「居をりませぬか。」

「居ゐない。」

「居ゐないが定ぢやうに成なりませぬ。お前樣まへさまが其處そこまでお運はこびなさりますれば、必かならず出でます。……それ故ゆゑに、お留とめ申まをすのでありまして、まあ、お聞ききなさりまし。」

と捻向ねぢむいて、痩按摩やせあんまは腰こしを屈かゞめながら、丁ちやうど足許あしもとに一基だいあつた……瓦斯燈がすとうの根ねを、其處そこに轉ころがつた、ごろた石いしなりにカチ〱と杖つゑで鳴ならした。が音おとも響ひゞかず、靄もやに沈しづむ。

「先まづ……最もう一ひとツ念ねんのために申まをさうに……われらが居をります此これなる瓦斯燈がすとう、唯たつた今いま、お前樣まへさまを呼留よびとめましたなり、一歩ひとあしとて後あとへも前まへへも動うごきませぬ……此これは坂下さかしたからはじめまして、立たちました瓦斯燈がすとうの、十九基だいめに相違さうゐありませぬ。

間違まちがへば、師匠ししやう沙汰さたをなされます。

さて、三年ねん前まへ、……日ひは違ちがひます。なれども、同おなじ此この霜月しもつきの夜よさり、丁ちやうど同おなじ今いまの時刻じこく、私われらにもお前樣まへさまと同おなじ事ことがありました。……

其その頃ころは、決けつして其その、恁かやうな盲目めくらではありませなんだ。」

と云いふ、まともに坂上さかがみに對たいして、向直むきなほつたけれども、俯向うつむいたなりで顏かほは上あげぬ。

「よう似にた、お前樣まへさまと同おなじ事ことで、然さる婦をんなにあひゞきに參まゐるので、此處こゝを、此この坂さかを、矢張やはり、向むかつて下したから、うか〱と上あがりかけたのでありました。

時ときに擦違すれちがつたものが、これだけは、些ちと樣子やうすが違ちがひまして、按摩あんま一人ひとりだけが見みえました。」

其その時とき、件くだんの、長頭ながあたまは、くるりと眞背後まうしろにむかうを向むいた、歩行出あるきだすか、と思おもふと……熟じつと其そのまゝ。

五

婦をんなは、と見みると、其それは、夥間なかまの話はなしを聞きくらしく、踞しやがんだなりに、くるりと此方こつちに向直むきなほつた、帶おびも膝ひざも、くな〱と疊たゝまれさうなが、咽喉のどのあたりは白しろかつた。

按摩あんまの聲こゑは判然はつきりして、

「で、其それで矢張やつぱり、お前樣まへさまに私われらがしましたやうに、背後うしろから呼留よびとめまして、瓦斯がすの五基目だいめも、足あしもとの十九の數かずも、お前樣まへさまに今いまわれらが言いうた通とほりの事ことを申まをします。

私われらはこゝで、其その通とほりを、最もう一度いちど申まをしますばかりの事こと。

何なんで、約束やくそくした其その婦をんなに逢あひに行いつては成ならぬのかと――今いまのお前樣まへさまの通とほりを、又また其その時とき私わたしが尋たづねますと、彼あの盲人めくらが申まをすには、」

其その盲人めくらは、こゝに先達せんだつの其その長頭ながあたまである事ことは、自おのづから坂上さかがみの胸むねに響ひゞく。

「上うへへ五本ほんめの、一ひとつ消きえ殘のこつた瓦斯燈がすとうの所ところに、怪あやしいものの姿すがたが見みえる……其それは、凡すべて人間にんげんの影かげを捉とる、影かげを掴つかむ、影法師かげぼふしを啖くらふ魔まものぢや。

彼かれめに影かげを吸すはるれば、人間にんげんは形かたち痩やせ、嘗なめらるれば氣き衰おとろへ、蹂躙ふみにじらるれば身みを惱なやみ、吹消ふきけさるゝと命いのちが失うせる。

凡およそ、月つきと日ひとともに、影法師かげぼふしのある所ところ、件くだんの魔まもの附絡つきまとはずと云いふ事ことなうて、且かつ吸すひ、且かつ嘗なめ、蹂躙ふみにじる。が、いづれ其その人ひとの生命いのちに及およぶには間まがあらう。其それもつて大事だいじぢやに、可恐おそろしいは、今いまあるやうな燈あかりの場合ばあひ。一口ひとくちくわつと遣やつて、」

と云いつた。按摩あんまの唇くちびるは尖とがつたな!

「立所たちどころに影かげを啖くらふ、啖くはるれば、それまでぢや、生命いのちにも及およびかねぬ。必かならず此この坂さかを通とほらるゝな……

と恁かう言いひます。

私われらも血氣けつきで、何なにを言いふ。第一だいいち、其その魔まものとはどんなものか、と突懸つゝかゝつて訊ききますと、其その盲人めくらニヤリともせず、眞實まじめな顏かほをしまして、然されば、然されば先まづ、守宮やもりが冠かんむりを被かぶつたやうな、白犬しろいぬが胴伸どうのびして、頭づに山伏やまぶしの兜巾ときんを頂いたゞいたやうなものぢや、と性しやうの知しれぬ事ことを言いふ。

いや、聞きくよりは見みるが疾はやい。さあ、生命いのちを取とられて遣やらう、と元來ぐわんらい、あたまから眞まこととは思おもひませぬなり。づか〱、其その、……其處そこの其その五基だいめの瓦斯燈がすとうの處ところまで小砂利こざりを蹴けつて參まゐりますと、道理もつともな事こと、何なんの仔細しさいもありませぬ。

處ところに、右みぎの盲人めくら、カツ〱と杖つゑを鳴ならして、刎上はねあがつて、飛とんで參まゐり、これは無體むたいな事ことをなされる。……強きつい元氣げんきぢや。私みが言いうて聞きかす事ことを眞まこととは思おもはぬ汝こなたに、言託ことづけるのは無駄むだぢやらうが、ありやうは、右みぎの魔まものは、さしあたり汝こなたの影かげを、掴つかまうとするではない。

今夜こんや……汝こなたが逢あひに行いく……其その婦をんなの影かげを捉とらうと、豫かねてつけ狙ねらうて居をるによつて、嚴きびしい用心ようじん、深ふかい謹愼つゝしみをしますやう、汝こなたを通つうじて、其その心こゝろづけがしたかつたのぢや。

と恁かう又また言いふのでありました。」

六

「まざ〱と譫言たはこと吐つく……私われらの婦をんな知しつたりや、と問とひますと、其それを知しらいで何なにをする……今日けふも晩方ばんがた、私みが相長屋あひながやの女房にようぼが見みて來きて話はなした。谷町たにまちの湯屋ゆやで逢あうたげな。……よう湯ゆの煙けむりで溶とけなんだ、白雪しらゆきを撫なでてふつくりした、其それは、其それは、綺麗きれいな膚はだを緋ひで緊しめて、淡うすい淺葱あさぎの紐ひもで結ゆはへた、乳ちの下したする〱辷すべるやうな長襦袢ながじゆばん。小春時こはるどきの一枚小袖いちまいこそで、藍あゐと紺こんの小辨慶こべんけい、黒繻子くろじゆすの帶おびに、又また緋ひの扱帶しごき……髷まげに水色みづいろの絞しぼりの手絡てがら。艷つやの雫しづくのしたゝる鬢びんに、ほんのりとした耳みゝのあたり、頸許えりもとの美うつくしさ。婦同士をんなどうしも見惚みとれたげで、前まへへ𢌞まはり、背後うしろで視ながめ、姿見すがたみに透すかして、裸身はだかのまゝ、つけまはいて、黒子ほくろが一ひとつ、左ひだりの乳ちゝの、白しろいつけ際ぎはに、ほつりとある事ことまで、よう知しつたと云いふ話はなし。

何なんと、此この婦をんなに相違さうゐあるまい、汝こなたが逢あひに行ゆく其その婦をんなは……

と又また其その盲人めくらが云いふのであります。」

聞きくうちに、坂上さかがみは、ぶる〱と身震みぶるひした。其それは、其處そこに、此この話はなしをする按摩あんまの背後うしろに跪つい居ゐて、折をりから面かほを背そむけた婦をんなが、衣服きものも、帶おびも、まさしく、歴然あり〱と、其その言葉通ことばどほりに目めに映うつつたためばかりではない。――

足袋跣足たびはだしで出でたと云いふ、今夜こんやは、もしや、あの友染いうぜんに……あの裾模樣すそもやう、と思おもふけれども、不斷ふだん見馴みなれて氣きに染しみついた、其その黒繻子くろじゆすに、小辨慶こべんけい。

坂上さかがみは血ちの冷ひえるあとを赫くわつと成なる。

「何どうでありませう。お前樣まへさま。此これから逢あひにおいでなさらうと云いふ、其その婦をなごの方かたは、裾模樣すそもやうに、錦にしきの帶おび、緋縮緬ひぢりめんの蹴出けだしでも。……其その黒繻子くろじゆすに、小辨慶こべんけいの藍あゐと紺こん、膚はだの白しろさも可いいとして、乳房ちゝの黒子ほくろまで言いひ當あてられました、私わたしが其その時ときの心持こゝろもち、憚はゞかりながら御推量ごすゐりやう下くださりまし。

こゝな四谷よツやの谷底たにそこに、酷むごい事こと、帶紐おびひも取とつて、あか裸はだかで倒たふされてでも居をりますのが、目めに見みえるやうに思おもはれました。

で、右みぎの其その盲人めくらは、例れいの魔まものは、其その婦をんなの影かげを、嘗なめう、吸すはう、捉とらへよう、蹂躙ふみにじらう、取啖とりくらはうとつけ𢌞まはす――此この儀ぎを汝こなたから託ことづけて、氣きを注つけるやう言いひなさい、と申まをしたのを、よくも聞きかずに、黒雲くろくもを捲まいて、飛とんで行ゆき、電いなづまのやうに、鐵てつの門もん、石いしの唐戸からとにも、遮さへぎらせず、眞赤まつかな胸むねの炎ほのほで包つゝんで、弱よわい婦をんなに逢あひました。

影かげを取とる、影かげを吸すふ、影かげを嘗なめる、魔まものに逢あつた。此この坂さかしか〲の瓦斯燈がすとうのあかりで見みて來きた。……

婦をんなの家うちは、つい此この居ゐまはりでありました。――

夜よるも晝ひるも附𢌞つけまはすぞ、それ、影かげが薄うすいわ、用心ようじんせい、とお前樣まへさま。

可哀氣かはいげに、苦勞くらうで氣きやみに煩わづらつて、帶おびをしめてもゆるむほど、細々ほそ〲と成なつて居ゐるものを、鐵槌かなづちで打うつやうに、がん〱と、あたまへ響ひゞくまで申まをしましたわ。

他人ひとに、膚はだを見みせたと思おもふ妬ねたみから、――婦をんなが膝ひざに突俯つゝぷして、震ふるへる聲こゑの下したで、途中とちう、どんなものに逢あつて誰だれに聞きいた話はなしだ、と右みぎの影かげを捉とる魔まについて尋たづねました時とき、――おのれ、胸むねに問とへ!なぞと云いうて、盲人めくらから聞きいた事ことは言いはずに了しまつたのでありました。

此これが飛とんでもない心得違こゝろえちがひ。其その盲人めくらこそ、其その婦をんなに思おもひを懸かけて、影かげのやうに附絡つきまとうて、それこそ、婦をんなの家いへの居ゐまはりの瓦斯燈がすとうのあかりで見みれば、守宮やもりか、と思おもふ形體ぎやうたいで、裏板塀うらいたべい、木戸きど、垣根かきねに、いつも目めを赤あかく、面つらを蒼あをく、唇くちびるを白しろく附着くツついて、出入でいりを附狙つけねらつて居ゐたとの事こと。

はじめから、威おどしたものが盲人めくらと知しれれば、婦をんなも然さまでは呪詛のろはれずに濟すんだのでありませう。」

七

「今度こんど、……其その次つぎ……段々だん〱に婦をんなに逢あふ事ことが少すくなくなりました。

兎角とかくむかうで、私われらを避さけるやうにするのであります。

……殺ころして死しなう、と逆上ぎやくじやうするうち、段々だん〱委くはしく聞ききますと、其その婦をんなが、不思議ふしぎに人ひとに逢あふのを嫌きらふ。妙めうに姿すがたを隱かくしたがるのは、此この、私われらばかりには限かぎらぬ樣子やうす。

終しまひには猫又ねこまたが化ばけた、妾めかけのやうに、日ひの目めを厭いとうて、夜よるも晝ひるも、戸障子としやうじ雨戸あまどを閉しめた上うへを、二重ぢう三重ぢうに屏風びやうぶで圍かこうて、一室ひとまどころに閉籠とぢこもつた切きり、と言いひます……

漸やつとの思おもひ、念力ねんりきで、其その婦をんなを見みました時ときは、絹絲きぬいとも、むれて、ほろ〱と切きれて消きえさうに、なよ〱として、唯たゞうつむいて居ゐたのであります。

顏かほを上あげさした……ト目めが、潰つぶれました。へい、いえ、其その婦をんなの兩眼りやうがんで。

聞ききますると、私われらに、件くだんの影かげを捉とる魔まものの話はなしを聞きいてからは、瞬またゝく間まさへ、瞳ひとみに着ついて、我われと我わが影かげが目前めさきを離はなれぬ。

臺所だいどころを出でれば引窓ひきまどから、縁えんに立たてば沓脱くつぬぎへ、見返みかへれば障子しやうじへ、壁かべへ、屏風びやうぶへかけて映うつります。

映うつると其その影かげを、魔まが來きて、吸すひさうで、嘗なめさうで、踏ふみさうで、揉もみさうで、絡からみさうで、寢ねさうで成ならぬ。

月つきの影かげ、日ひの影かげ、燈ともしびの影かげ、雪ゆき、花はなの朧々おぼろ〱のあかりにも、見みて影かげのない隙ひまはなし……影かげあれば其その不氣味ぶきみさ、可厭いやさ、可恐おそろしさ、可忌いまはしさに堪兼たへかねる。

所詮しよせんが嵩かうじて、眞暗まつくらがり。我わが掌てのひらは見みえいでも、歴々あり〱と、影かげは映うつる、燈あかりを消けしても同おなじ事ことで。

次第しだいに、床とこの間まの柱はしら、天井裏てんじやううら、鴨居かもゐ、障子しやうじの棧さん、疊たゝみのへり。場所ばしよ、所ところを變かへつゝ、彼あの守宮やもりの形かたちで、天窓あたまにすぽりと何なにか被かぶつた、あだ白じろい、胴どうの長ながい、四足よつあしで畝うねるものが、ぴつたりと附着くツついたり、ことりと圓まるくなつたり、長々なが〱と這はふのが見みえたり……やがて、闇やみの中なか、枕まくらの下したにも居ゐるやうに成なりました。

見みる毎たびに、あツと聲こゑを上あげて、追おへば、其その疾はやい事こと、ちよろ〱と走はしつて消きえて、すぐに、のろりと顯あらはれる。

見みまい、見みまいの氣きが逆上うはずつて、ものの見みえるは目めのあるため、と何なんとか申まをす藥くすりを、枕まくらをかいもの、仰向あをむけに、髮かみを縛しばつた目めの中なかへ點滴したゝらして、其その兩眼りやうがんを、盲めくらにした、と云いふのであります。

心こゝろも暗夜やみの手てを取合とりあつて、爾時そのときはじめて、影かげを捉とる魔まものの話はなしは、坂さかの途中とちうで、一人ひとりの盲人めくらに聞きかされた事ことを申まをして、其その脊恰好せいかつかう、年としごろを言いひますと、婦をんなは、はツと、はじめて目めの覺さめたやうに成なつて、さめ〲と泣出なきだしました。

思おもひの叶かなはぬ意趣返いしゆがへしに、何なんと!右みぎの其その横戀慕よこれんぼの盲人めくらに、呪詛のろはれたに相違さうゐありませぬ。

頬ほゝの肉にくを引掴ひツつかんで、口惜涙くやしなみだ、無念むねんの涙なみだ、慚愧ざんきの涙なみだも詮せんずれば、たゞ〱最惜いとをしさの涙なみだの果はては、おなじ思おもひを一所いつしよにしようと、私われらこれ又また此この通とほり、兩眼りやうがんを我われと我手わがてに、……これは針はりでズブリと突ついたのでありまする。

三世さんぜ、一娑婆ひとしやば、因果いんぐわと約束やくそくが繋つながつたと、いづれも發起仕ほつきつかまつり、懺悔ざんげをいたし、五欲ごよくを離はなれて、唯たゞ今いまでは、其それなる盲人めくらともろともに、三人さんにん一所いつしよに、杖つゑを引連ひきつれて、晝ひるは面おもてが恥はづかしい、夜よるとあれば通とほります……

路みちすがら行逢ゆきあひました。

御迷惑ごめいわくか存ぞんぜぬが、靄もやの袖そでの擦合すれあうた御縁ごえんとて、ぴつたり胸むねに當あたる事ことがありましたにより、お心着こゝろづけ申上まをしあげます……お聞入きゝいれ、お取棄とりすて、ともお心次第こゝろしだい。

此この上うへは、さて、何なにも存ぞんぜぬ。然さやうなれば、お暇いとまを申受まをしうけます。」

言ことばの下したより、其處そこに、話はなしの途中とちうから、さめ〲と泣ないて居ゐた婦をんなは、悄然せうぜんとして、しかも、すらりと立たつた。

とぼ〱とした後姿うしろすがたで、長頭ながあたまから三みつつの姿すがた、消きえたる瓦斯がすに、幻まぼろしや、杖つゑの影かげ。

婦をんなが、白しろい優やさしい片手かたてで立たつ時とき、眼めを拭ふいた布きれが姿すがたを偲しのぶ……其その紅絹もみばかり、ちら〱と……蝶てふのやうに靄もやを縫ぬひ……

底本 / Source edition

底本:「鏡花全集 巻十四」岩波書店
1942(昭和17)年3月10日第1刷発行
1987(昭和62)年10月2日第3刷発行
初出:「中央公論 第二十七年第四號」
1912(明治45)年4月
※「聞《き》き」と「訊《き》き」、「悚然《ぞつ》と」と「慄然《ぞつ》と」、「云《い》ふ」と「言《い》ふ」、「處《ところ》」と「所《ところ》」、「尤《もつと》も」と「道理《もつとも》」、「闇夜《やみ》」と「暗夜《やみ》」と「闇《やみ》」、「乳《ちゝ》」と「乳房《ちゝ》」、「生命《いのち》」と「命《いのち》」、「一《ひと》つ」と「一《ひと》ツ」、「二《ふた》つ」と「二《ふた》ツ」、「裸身《はだか》」と「裸《はだか》」、「歴然《あり/\》」と「歴々《あり/\》」、「其《そ》の時《とき》」と「爾時《そのとき》」、「目《め》」と「眼《め》」、「些《ちつ》と」と「些《ち》と」、「呪詛《のろは》れ」と「呪詛《のろ》はれ」の混在は底本通りです。
※「私」に対するルビの「わたし」と「われら」と「わし」と「み」、「誰」に対するルビの「たれ」と「だれ」、「婦」に対するルビの「をんな」と「をなご」、「乳房」に対するルビの「ちぶさ」と「ちゝ」、「燈」に対するルビの「あかり」と「ともしび」、「電」に対するルビの「いなびかり」と「いなづま」、「掌」に対するルビの「たなごころ」と「たなそこ」と「てのひら」、「首」に対するルビの「かうべ」と「くび」、「矢張」に対するルビの「やつぱ」と「やは」、の混在は底本通りです。
※初出時の表題は「靄」です。
入力:門田裕志
校正:室谷きわ
2022年10月31日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
/works/004577_000050/tei
プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
/works/004577_000050/

泉 鏡花「三人の盲の話」(旧字旧仮名)、底本『鏡花全集 巻十四』岩波書店、1942年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 004577_000050, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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