Soranoha

作者のことば(『現代日本文学選集』第八巻)

さくしゃのことば(『げんだいにほんぶんがくせんしゅう』だいはっかん)

宮本 百合子

「広場」は、一九四〇年にかかれた。同じ頃の短篇「おもかげ」と作者の内面では連作の意味をもっていた。当時軍国主義日本の文化統制はますますきびしくなってきていて、人間の理性や自然な感覚から生れる文学は、抹殺されつつあった。日本の現代文学は、急速に破壊されて行った。わたしはその兇暴な波にもまれながら、自分が今日そのような力に抵抗する一人の作家として存在するという必然について、深く思いめぐらさずにはいられなかった。自分が日本の作家であればこそ、その日本の非人間的な権力の行動に追随してはならないということについて、新しく自分をはげまさねばならなかった。そのようなモティーフに立ってモスクワを背景とするこの短篇がかかれた。「広場」の題材は、今執筆中の「道標」第三部の終りの部分で再びとりあげられる。そこでは十年前にはっきり描き出す自由をうばわれていたソヴェトの社会主義社会の生活の中で女主人公が経験した民族の文学にたいする愛の実感や登場人物などの関係が語られるであろう。

〔一九五〇年十二月〕

底本 / Source edition

底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「現代日本文学選集 第八巻」細川書店
1950(昭和25)年12月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2004年2月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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書誌 / Bibliography
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宮本 百合子「作者のことば(『現代日本文学選集』第八巻)」(新字新仮名)、底本『宮本百合子全集 第十八巻』新日本出版社、1981年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 004142_000311, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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