Soranoha

あとがき(『朝の風』)

あとがき(『あさのかぜ』)

宮本 百合子

この短篇集は私にとってもすこし風変りな集となった。一番はじめの「朝の風」は極く最近のものだけれど、次の「牡丹」以下の作品はずっと昭和の初めごろまでさかのぼっていて「小祝の一家」に到る間に多くの年月がこもっている。

これまでに出版された本のなかへは入れていなかった作品をも今度はあつめておく心持になった。見ようによっては一つの年輪がここにあるとも云える。一本の樹木も成長してゆく過程には、越した冬の寒さや雪の重さによって、夏の嵐の強弱によって年輪をさまざまに描き出して行くそうだ。私のこの一つの年輪は、閲された生活のどんな季節をつたえていることだろう。夫々の読者が夫々に生きて来た人生の季節の、どんな朝夕の心にこの一冊は語りかけるものをもっているだろうか。

昭和十五年十月

〔一九四〇年十一月〕

底本 / Source edition

底本:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社
1981(昭和56)年5月30日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第2版第1刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十五巻」河出書房
1953(昭和28)年1月発行
初出:「朝の風」河出書房
1940(昭和15)年11月発行
入力:柴田卓治
校正:磐余彦
2004年2月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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リリース / Release
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TEI
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プレーンテキスト / Plain text
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書誌 / Bibliography
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宮本 百合子「あとがき(『朝の風』)」(新字新仮名)、底本『宮本百合子全集 第十八巻』新日本出版社、1981年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 004116_000311, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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