沙羅木は植物園にもあるべし。わが見しは或人の庭なりけり。玉の如き花のにほへるもとには太湖石と呼べる石もありしを、今はた如何になりはてけむ、わが知れる人さへ風のたよりにただありとのみ聞えつつ。
また立ちかへる水無月の
歎きをたれにかたるべき。
沙羅のみづ枝に花さけば、
かなしき人の目ぞ見ゆる。
(大正十四年五月)
さらのはな
芥川 竜之介
沙羅木は植物園にもあるべし。わが見しは或人の庭なりけり。玉の如き花のにほへるもとには太湖石と呼べる石もありしを、今はた如何になりはてけむ、わが知れる人さへ風のたよりにただありとのみ聞えつつ。
また立ちかへる水無月の
歎きをたれにかたるべき。
沙羅のみづ枝に花さけば、
かなしき人の目ぞ見ゆる。
(大正十四年五月)
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913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c芥川 竜之介「沙羅の花」(新字旧仮名)、底本『筑摩全集類聚 芥川龍之介全集第四巻』筑摩書房、1971年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 003820_000879, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079