Soranoha

民法と道義上の責任

みんぽうとどうぎじょうのせきにん

宮本 百合子

民法が改正されて、妻の人格がみとめられるようになった。

ふるい民法では、婦人が結婚して妻となると、無能力者になり、経済上の権利、親権その他で無能力とされていた。新しい民法は、婦人の権利の抹殺をとりけしたものであり、財産にたいして妻は夫と似た発言権をもつことになった。

権利があるということは、義務があるということである。夫が不当財産を蓄積して、一家の経済が向上した場合、妻はそれをわけてもらう権利をもつようになったが、同時にこのことは、不当財産をたくわえたという夫婦の共同責任が存在することをも意味する。

わたしは何も知らないで――といういいわけは、ふるい民法時代にこそ事実であったが、今日では適用しない。夫がどんな不正な富を蓄積しようとわけてもらう権利が妻にあると、それで問題を終りとするなら、その人は妻というより妾的な存在であり、売笑婦的な存在である。

なぜなら、妻は結婚生活において、夫の道義的生活にたいしても密接な関係をもち、責任の一半を負っているのであるから。

道義の頽廃は、家庭婦人のきよらかさを濁らしている。いわゆる良家の主婦たちがむすめやむすこと一しょに、それをエロ・グロ雑誌だとも感じないで、いかがわしい雑誌を平気で見ているような無感覚。どんなすじからであろうと、物と金がながれこめば、そのみなもとをせんさくしないのが利口というような社会的責任感の堕落、家庭婦人のモラルの問題は彼女たちが母であるという意味においてまじめに見直されなければならない。〔一九四八年十一月〕

底本 / Source edition

底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
1952(昭和27)年1月発行
初出:「東京民報」
1948(昭和23)年11月21日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年6月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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書誌 / Bibliography
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宮本 百合子「民法と道義上の責任」(新字新仮名)、底本『宮本百合子全集 第十五巻』新日本出版社、1980年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 003284_000311, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

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