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        <title type="main" xml:lang="ja">メーデーと婦人の生活</title>
        <title type="reading" xml:lang="ja-Hira">メーデーとふじんのせいかつ</title>
        <author><persName xml:lang="ja"><surname>宮本</surname><forename>百合子</forename><idno type="aozora-person-id">000311</idno></persName><persName xml:lang="ja-Hira"><surname>みやもと</surname><forename>ゆりこ</forename></persName><persName xml:lang="ja-Latn"><surname>Miyamoto</surname><forename>Yuriko</forename></persName></author>
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        <bibl><title>宮本百合子全集　第十五巻</title><publisher>新日本出版社</publisher><date>1980（昭和55）年5月20日</date><note type="input-edition">1986（昭和61）年3月20日第4刷</note></bibl>
        <bibl type="first-publication">「メーデーについて」NHKラジオ、1947（昭和22）年5月1日放送</bibl>
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      <refsDecl xml:id="source-spans"><p>A note of type source-span has an xml:id of the form source-START-END, giving the extent in UTF-8 bytes of the decoded primary text identified in sourceDesc. <ptr target="https://w3id.org/soranoha/ns/tei"/></p></refsDecl>
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      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-51-1037">こんにちは、五月一日、メーデーです。世界のあらゆる国々の働く男女が、現在の要求と未来の希望とをかかげて、堂々と行進する日です。国によっていくらか時間のちがいはありますけれども、アメリカでもイギリスでもフランスでも、ソヴェト・ロシアでも、そして中国・朝鮮でも、五月一日というこの日には、工場から、経営から、農村から、すべての勤労者が溢れ出て、働くものの日として、行進いたします。もしテレビジョンが発達して、きょう、私たちの住んでいるところからも、労働者に溢れている世界の町々の光景をそっくりそのまま観ることが出来たら、それはどんなに壮観でしょう。旗はひるがえり、歌声は湧き、まるい地球は本当にきょうのメーデーにこそ、世界は働く人の花の輪でつながれるのです。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-1037-1591">皆さんのお宅には、必ず幾人か、つとめに出ている方があるでしょう。その方々は、けさふだんといくらかちがった仕度で家を出かけていらしただろうと思います。わたし水筒もって行くわ、と云って出かけた若い婦人の方もあったでしょうし、あああなた、こっちの靴下の方がうまくついであるわ、足にまめが出来ないように、ね、と、さっぱり洗いたての靴下をはかせてあげた奥さんもありましたろう。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-1591-2571">つとめのある方は、そうして行進に出かけ、さて、うちにのこった婦人たちは、この一年に一度のメーデーを、どうおすごしになるでしょうか。メーデーだと云っても、決して遅配のお米が配られては来ません。この二三ヵ月、また一段と高くなった物価も、せめてメーデーだけは、と割びきもありません。メーデーであるきょうも、行進とともにすすむ歌声をよそに家庭の婦人は、小さい子供たちの手をひき背中に赤ちゃんをおんぶして、汗ばむようになったのにさっぱりした袷もないと思いながら、闇市で晩のお惣菜をあさらなければなりません。メーデーは、外で働いている人たちだけのもの、家庭の心配から解放されることのない日本の家庭婦人にとって、メーデーは、ひとのことのように見えるかもしれません。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2571-2827">でも、みなさま。ほんとに家庭の婦人にとって年毎のメーデーというものは、ひとのことなのでしょうか。ただ、よけい、靴下のつぎの仕事がふえるというだけのことなのでしょうか。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2827-3477">世界で、はじめてメーデーを働くものの行進の日ときめて、それを実行しはじめたのはアメリカの労働者でした。一八八六年、日本でいえば明治十九年の五月一日に、アメリカ全国の労働組合員数百万人が、八時間の労働、八時間の休息、八時間の教育を！　というスローガンをかかげて行進しました。そして、八時間労働の要求が通ったことに、世界の労働者が感奮しました。それ以来、一八九〇年、明治二十三年から、五月一日のメーデーは国際的な催しとなったのでした。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-3477-4483">明治二十三年と云えば、日本では、ついこの間まであった旧い憲法の発布された翌年です。みなさま御存じのとおり、日本の旧い憲法は、支配する者の絶対な権力を示すことを主眼にしてつくられたものでした。働く男女、人民の服従の義務は語られていても、その権利は示されていませんでした。その頃の日本の産業は幼稚であったばかりか、一番数の多かった紡績工場で、女工さんがどんなにひどい条件で働かされていたかということは、桑田熊蔵博士が、議会で訴えたとおりでした。女工たちは三十六時間も働かせられ、云いつけにそむけば天井から吊されるというような状況でした。日本のメーデーは、やっと一九二〇年即ち大正九年になってはじめて行われました。世界の国々から三十四年もおくれて、やっとはじめられました。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4483-4865">ところが、そのメーデーさえも、日本では僅か十数回行われたばかりでした。一九三一年、昭和六年に、日本の政府が満州へ侵略戦争をはじめると同時に段々メーデーが出来にくくなって、戦争が進行拡大するにつれて、到頭メーデーという行事は昭和十一年に禁止されました。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4865-5148">日本の政府が、戦争を行って、大衆の生活をやぶり家庭の平和を破壊する程度がひどくなればなるほど、メーデーを禁止したという事実を、みなさま、御婦人がたは、こんにちどうお考えになるでしょう。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-5148-5866">もしメーデーというものが、ただ歌をうたって、旗をたてて町をねり歩くだけのものでしたら、戦争の間、政府がそれを禁止する必要はありませんでした。メーデーに行進する正直な数十万の働く男女は、侵略戦争が日本の人民の幸福を根こそぎうちこわすものであるということを知っていて戦争に反対していました。自分たちばかりでなく、中国や満州の働く人民も、生産を破壊し、殺し殺される無惨な戦争をちっともしたがっていないのだということを知っていて、反対したから、メーデーの行進は禁じられて来たのです。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-5866-6411">いま、こうしてラジオをきいていらっしゃる日本じゅうの家庭婦人のうちに、何十万人の未亡人、働きてを失った老いた夫婦がおられるでしょう。父を失った子供たちの数はいかばかりでしょう。七千万という日本の人口を、男女別にわけると、婦人の人々が三百万人多くなりました。この事実は、どんなに多くの男が戦争で死に、こんにち婦人の涙と汗とがしぼられているかということの証明です。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-6411-7117">世界の男女が心から働くものの手をつなぎ平和と生活の安定を求めて、メーデーに行進するのだとすれば、それこそ私たち日本の婦人の最も深刻な希望を表わしたものではないでしょうか。ナチスにあらゆる幸福をうちくだかれたドイツ婦人、ファシズムにしいたげられつくしたイタリーのあらゆる婦人。そして、ナチスとファシストをうちやぶるために、愛する良人や兄弟をぎせいとしたすべての民主国の女性たちは、世界に平和のとりもどされた第二回のメーデーを、新しい平和への決意によって迎えております。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-7117-7548">メーデーのスローガンのなかに、生活費を土台とする最低賃金制度を確立してほしい、ということがあります。一軒一軒の家庭の主婦として、これをきき流すことが出来ましょうか。去年から度々危機突破資金をとっても、決してそれは、気ちがいじみた物価に追いつかない苦しさで、骨身にしみてわかっています。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-7548-8153">また、女子と男子と同一の労働にたいしては同一の賃金を！　と云っています。これも、一家の柱となって働いている婦人の多い今の日本では、誰にでも、もっともとわかることです。もし、すべての男女が生きてゆくために働いている毎日の勤労で、男女平等でないなら、五月三日から実際の効力をもちはじめる新憲法で、国民たる男女は、性別にかかわらず平等であると認められた基本的人権は、字の上だけのそらごとになってしまいます。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-8153-8643">メーデーに要求しているように、婦人のために給料つきの生理休暇と産前産後八十日の給料つきの休暇があらゆる職場で実現したら、今日結婚したために働けなくなった婦人たちの、どんな大きい救いでしょう。子もちの寡婦の苦しい生活と、労働条件のわるさ、停年制などは、組合が、互に扶け合う力で改善してゆかなければ、個人で変えようありません。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-8643-9007">きょうのメーデーに、地球をまるい輪にかこんで行進している世界数億の働く男女がスローガンとしてかかげている要求は、実にとりも直さず、私たちすべての家庭婦人の要求です。働くものがただ一人も家にいない家庭婦人というものは、この社会にありません。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-9007-9573">とくに、今日の行進は、日本の私たちにとって感銘ふかいものがあります。ついきのう、私たちは、自分たちの代表者である六種類の議員の選挙を終ったばかりです。私たちが、生活の建設と幸福を希って投じた一票は、ただの紙きれではありません。選ばれた議員たちは、それに、実行をもって答える義務があります。きょうのメーデーは、議員たちに、彼等を選んだ大衆への責任を一層明瞭に自覚させる日です。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-9573-10143">また、明後日、五月三日から、新しい憲法がその力を発動します。この憲法にしめされているあらゆる国民の基本的な人間としての権利を、働く幾百万の人民は、どのように実現させ充実させ、空手形でなくしてゆく意志をもっているか、そのことをも互にたのもしく理解し合う日なのです。世界をつなぐ花の輪に、私たち婦人のあつい思いと実行とを織りこめてこそ、それは真実に命ある花の輪となるのだと信じます。</seg></p>
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        <note type="source-attribution" source="#source-10151-10562"><seg type="source-line">底本：「宮本百合子全集　第十五巻」新日本出版社</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1980（昭和55）年5月20日初版発行</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1986（昭和61）年3月20日第4刷発行</seg><lb/><seg type="source-line">底本の親本：「宮本百合子全集　第十五巻」の補遺、河出書房</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1953（昭和28）年1月発行</seg><lb/><seg type="source-line">初出：「メーデーについて」ＮＨＫラジオ</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1947（昭和22）年5月1日放送</seg></note>
        <note type="transcriber-note" source="#source-10562-10878"><seg type="source-line">入力：柴田卓治</seg><lb/><seg type="source-line">校正：米田進</seg><lb/><seg type="source-line">2003年6月4日作成</seg><lb/><seg type="source-line">青空文庫作成ファイル：</seg><lb/><seg type="source-line">このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫（http://www.aozora.gr.jp/）で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。</seg></note>
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