Soranoha

自然に学べ

しぜんにまなべ

宮本 百合子

明日の女らしさ、男らしさ。(川上まさ子さんへの答)のびのびとした手脚と美しく張った胸。女性の肉体の魅力は解放された女性の肉体にこそあります。まめやかで、創意にみちた精神の輝きのあふれた眼ざしと、よく働きよく笑う女性の笑顔を、どんな男がまねられましょう。

これまで日本の女性にあてはめられていた女らしさは、男の扮する女形で表現されました。ここに今日の少女たちが身にそなえはじめている自然な女らしさと全く異った不自然さがあったことが証拠だてられております。女形の身ごなしで表現され得た女らしさにもられた女ごころというものも、つまりは古い男心の伝統が描き出したものであったとさえ云えるでしょう。

封建の女らしさは、やっと本当の女の自然な女らしさに生れ更ろうとしています。今日若い女性はその歴史の変りめにいます、或る場合には、古い女らしさをすててもまだ十分味のたっぷりした新しい民主日本の女らしさが熟していないときもありましょう。赤いリンゴも青かったのです。

新しい日本の女らしさは、いま先ず自然であろうとしています。古い型がこわれて新しい型が完成しないうちはいろいろ古い趣味に添わないことも起りましょうが、若い日本の女性よ。どうかあなたがたが生粋の女性であることに自信をもって自然に動き、自然に発言し、自然が聰明であるように考えぶかくあって下さい。女は女以外のものではあり得ません。

女らしさについて、そういう理解をもつことこそ、明日の男らしさ、頼もしい雄々しさであろうと思います。女に対して荒々しく君臨する男は、いつの時代も男の中の男とはいえませんでした。日本は明治のはじめより、軍国主義につつまれていて、封建的な男らしさは、明治になっても軍人としての男らしさによりかえられたままでした。女性を憐れむばかりではなく、半身である女性とともにこそ男の民主的生活への解放があることを知る男らしさを待望いたします。〔一九四六年九月〕

底本 / Source edition

底本:「宮本百合子全集 第十五巻」新日本出版社
1980(昭和55)年5月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
初出:「婦人民主新聞」
1946(昭和21)年9月12日号
入力:柴田卓治
校正:米田進
2003年6月4日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。

この表示について / About this rendering

記録は下にリンクした署名済みの TEI ファイルです。このページはそれを読むための一つの形です。読みが複数ある箇所は一つだけを本文に示し、もう一方は語の title に残しています。 / The record is the signed TEI file linked below. This page is one way of reading it. Where the text has more than one reading, the page shows one of them and keeps the other on the word itself, in its title text.

リリース / Release
913b24012e1626b47bebf5a14fd31773728229efdb088f1ceb934717c1ac800c
TEI
/works/003261_000311/tei
プレーンテキスト / Plain text
/works/003261_000311/plaintext
書誌 / Bibliography
/works/003261_000311/

宮本 百合子「自然に学べ」(新字新仮名)、底本『宮本百合子全集 第十五巻』新日本出版社、1980年。Soranoha Aozora Bunko TEI Corpus, 003261_000311, release 913b24012e16. https://doi.org/10.5281/zenodo.22718079

引用のしかた / How to cite