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        <title type="main" xml:lang="ja">合図の旗</title>
        <title type="reading" xml:lang="ja-Hira">あいずのはた</title>
        <author><persName xml:lang="ja"><surname>宮本</surname><forename>百合子</forename><idno type="aozora-person-id">000311</idno></persName><persName xml:lang="ja-Hira"><surname>みやもと</surname><forename>ゆりこ</forename></persName><persName xml:lang="ja-Latn"><surname>Miyamoto</surname><forename>Yuriko</forename></persName></author>
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        <bibl><title>宮本百合子全集　第十五巻</title><publisher>新日本出版社</publisher><date>1980（昭和55）年5月20日</date><note type="input-edition">1986（昭和61）年3月20日第4刷</note></bibl>
        <bibl type="first-publication">「婦人画報」1946（昭和21）年4月号</bibl>
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      <classDecl><taxonomy xml:id="ndc"><bibl>日本十進分類法 (Nippon Decimal Classification), as recorded by <title>青空文庫</title> in its 分類番号 field.</bibl></taxonomy><taxonomy xml:id="aozora-orthography"><bibl><title>青空文庫</title> 文字遣い種別: the orthographic style Aozora Bunko records for the transcription.</bibl></taxonomy></classDecl>
      <refsDecl xml:id="source-spans"><p>A note of type source-span has an xml:id of the form source-START-END, giving the extent in UTF-8 bytes of the decoded primary text identified in sourceDesc. <ptr target="https://w3id.org/soranoha/ns/tei"/></p></refsDecl>
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      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-391-483">日本の民主化と云うことは実に無限の意味と展望を持っている。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-483-833">特に一つ社会の枠内で、これまで、より負担の多い、より忍従の生活を強いられて来た勤労大衆、婦人、青少年の生活は、社会が、封建的な桎梏から自由になって民主化するということで、本当に新しい内容の日々を、もたらされるようになるからである。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-833-1255">婦人問題、その問題を何とか解決してゆこうとする婦人運動。それは永年日本にも存在していた。けれども、それらの婦人運動は、婦選運動をもふくめて、まことに微々たるものであった。そういう運動に携っている婦人たちに対して、一般の婦人が一種皮肉な絶望の視線を向けるほど微々たるものであった。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-1255-1782">社会の内部の複雑な機構に織り込まれて、労働においても、家庭生活においても、その最も複雑な部面におかれている婦人の諸問題を、それだけきりはなして解決しようとしても、それは絶対に不可能であった。世界を見わたせば、一つの国が、封建的な性質からより民主化されて来るにつれて、それと歩調を一つにして、婦人の社会生活全面が、変化し、より合理的になって来ている。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-1782-2321">世界には、現在のところ、興味ある民主社会の三つの典型が並びあって生活している。朝鮮、中国や日本のように漸々と、封建的なのこりものをすてて近代民主化を完成しようと一歩ふみ出した国。アメリカ、イギリスのように資本主義の下での民主主義を完成して更により発展した民主主義社会への見とおしにおかれている国。ソヴェト同盟のように、社会主義的民主社会に歩み入っている国。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2321-2686">その国々で、婦人たちの社会生活条件は其々に違っている。未熟な段階から、より進んだ段階。更にそこまで進んでも猶人間社会の発展の可能は、かくも大きい希望にみちたものであるということを語る段階。ここにも三通りの、生活の悦こびの段階があるのである。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-2686-3493">三通りの発展の段階があるにしても、唯一つ、最も基本的で共通な点は、民主社会においては、婦人が、全く人口の半分を占める男子の伴侶であって、婦人にかかわるあらゆる問題の起源と解決とは常に、男子女子をひっくるめた人民全体の生活課題として、理解され、扱われるということである。婦人の生活の朝夕におこる大きい波、小さい波、それは悉く相互関係をもって男子の生活の岸もうつ大波小波である現実が、理解されて来る。女はどうも髪が長くて、智慧が短いと辛辣めかして云うならば、その言葉は、社会の封建性という壁に反響して、忽ち男は智慧が短かく、髪さえ短かい、と</seg><ruby type="furigana" rend="right" source="#source-3493-3514"><rb>木魂</rb><rt>こだま</rt></ruby><seg source="#source-3514-3612">して来る性質のものであると、民主社会では諒解されているのである。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-3612-3824">本誌の、この号には食糧問題、労働問題、法律上の諸問題、生活再建の市民的技術上の問題、再婚問題、産児制限の諸問題が、特輯として扱われている。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-3824-4294">これらの題目のうちで、過去二十年間、日本の婦人雑誌が扱ったことのないというトピックが、只の一つでもあるだろうか。大衆的な某誌は、その反動保守的な編輯方針の中で、色刷り插絵入りで、食い物のこと、悲歎に沈む人妻の涙話、お国のために疲れを忘れる勤労女性の実話、男子の興味をそそる筆致をふくめた産児制限談をのせて来た。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">また、或る婦人雑誌はその背後にある団体独特の合理主義に立ち、そして『婦人画報』は、或る趣味と近代機智の閃きを添えて、いずれも、これらのトピックを語りふるして来たものである。</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-4557-4941">ところが、今日、これらの題目は、この雑誌の上で、全く堂々とくりかえして、並んで進出している。しかも、その並びかたについて編輯者は、一つも所謂気の利いた工夫を加えていないらしい。粋とか、よい趣味とかいう人造香料をも加えていない。諸問題は、生のまま、いくらか</seg><ruby type="furigana" rend="right" source="#source-4941-4959"><rb>火照</rb><rt>ほて</rt></ruby><seg source="#source-4959-5024">った素肌の顔をそこに生真面目に並べている。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-5024-5182">それが、却って、云うに云えない今日の新鮮さ、頼りふかい印象を与えているのは、どういうわけなのだろうか。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-5182-5331">日本の民主化ということは、大したことであるという現実の例がこの一事にも十分あらわれていると思う。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">こういう、云わば野暮な、問題のありのままの究明が、私たちの心に訴える力をもっているのは、決して只、その問題の書きかたがこれまでの「女の問題」の範囲から溢れた調子をもっているからというばかりではない。この種の問題が、ここで扱われているような場合に――食糧問題は、台所やりくりではなくて、男も女もひっくるめた全人民の生存のための問題であり、女子労働の悪条件と悲劇的な女子失業の現象は、とりも直さず全勤労人口の問題であるとして捉えられたとき――問題のそういう把握を可能としている日本社会の今日の動向そのものの中に、はっきり、問題の現実的解決の方向が示されているからである。</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)">云いかえれば、今日これからの問題は、私たち婦人にとって、又日本の全人民にとって「読むために書かれている」のではなくて、事実の性質とその解決の方向を明らかにして、たとえ半歩なりともその方へ歩き出すための矢じるしの一つとして、書かれている。云わば、番地入りの地図として書かれている。それだからこそ、私たちの生活の必要にぴったりと結びついており、生活的関心はトピックに対する最も強い興味であることを証明しているのであると思う。</p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-6820-8139">食糧問題についても、私たちは随分長いこと、分不相応な苦痛と努力と七転八倒的なやりくりを経験して来た。多くの人々が、この問題の本質上、今日ではもう個人的解決の時期を全くすぎていて、これは人民的規模において、男女共通に、共通の方法に参加して、各種の管理委員会をこしらえて、自主的な圧力で改善してゆくことに決心したら、どんなに早く、解決の緒につくことだろう。配給と買出しにしばられて、会合に出席する時間さえもてないでいる主婦たちの毎日が、どんなに凌ぐに張合あるものとなって来るだろう。大小の軍需成金たちは、戦時利得税や、財産税をのがれるために濫費、買い漁りをしているから、インフレーションは決して緩和されない。却って、最近悪化して来ている。いくら、待遇改善しても、月給は物価に追いつく時は決してない。これがインフレーションの特徴である。めいめいの財布は空となって、遂にほうり出されている形である。闇の循環で、細々生きているような生命の扱いかたをどんな婦人がよろこばしいと思うだろう。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-8139-8432">婦人の道徳の頽廃が歎かれている。しかし、これとても、一方では、食物につながった社会問題なのである。婦人の労働問題の合理的な解決が必要である一方に、食糧事情の民主的解決が緊急事となって来ている。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-8432-8662">そのために、各種の現存の機構、組合にしろ、購買組合にしろ、それはどのように運営される可能があるか。私たちは改めてこのことについて学びたいと思っている。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-8662-9153">こうして、各面で婦人の参加が積極的な、重大な意味をもって来るとき、日本の民法が主婦を、無能者ときめていることは、何たる愚かな滑稽であろう。その無能力者を、刑法では、そう認めず、処罰にあたっては、忽ち同一の主婦が能力者として扱われるという矛盾は、残酷という以上ではないだろうか。日本の民法はしっかりと改正されなければならない。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-9153-9303">内縁関係、未亡人の生きかたに絡む様々の苦しい絆は、経済上の性質をもっているにしろ、その根に、精神の</seg><ruby type="furigana" rend="right" source="#source-9303-9321"><rb>軛</rb><rt>くびき</rt></ruby><seg source="#source-9321-10223">として、封建的な家族制度がのしかかっている。今度の第二次世界戦争で、日本の軍事的権力は百四万以上の生命を犠牲とした。家庭は、既に強権によって、破壊されている。真に人間の心と体とが暖り合う家庭を破壊しながら、あらゆる社会的困難が発生すると、女子はすぐ家庭へ帰れるかのように責任回避して語られる。けれども、私たちの現実は、どうであろう。私たちに、もし帰る家庭があるならば、それこそ私たち自身の社会的な努力によってその構造を辛くも守りたてて来ているからではないだろうか。戦争中、女はあんなに働かされた。働かされ、又働き、そしてその働きによってこそ、疲れて夕刻に戻る家路を保って来ていたのではなかったろうか。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-10223-10384">良人を、兄を、父を、戦争で奪われた日本の数百万の婦人は、身をもってこの事情を知りつくしている筈だと思う。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-10384-11043">戦争のない日本を創りたい。この痛切な願望を、胸に抱かない一人の婦人もあり得まい。戦争をひきおこす日本の反動勢力を、私たちの社会から排除する、ということは、架空の道を通って実現することではない。今ここに提出されているいくつかの問題を、事実上私たちの発意と、集結された民主力とで、一歩ずつ解決に押しすすめてゆく、その一足が、私たちの眼路はるかに、広々とした民主日本、封建から解かれ、美しく頭をもたげた日本女性の立ち姿を予約しているのである。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-11043-11247">民主戦線の結成ということは、政治めいた言葉と響いているが、私たちは、自分たちの一生が又とくり返しようもない、いとおしいものであることを</seg><ruby type="furigana" rend="right" source="#source-11247-11271"><rb>犇々</rb><rt>ひしひし</rt></ruby><seg source="#source-11271-11462">と感じている。それがどんなに傷つき不具となっていようとも其故にこそ、ひとしお懐しい生れ故郷である日本を見離しがたく思っている。</seg></p>
      <p style="text-indent: 1em" rend="first-line-indent(1)"><seg source="#source-11462-12578">その心持を誠意のこもった現実の力として表現しようとするとき私たちは、一つの救国運動として故国に対する人民の愛と必要に立つ統一的動きを肯定する以外に、どんな道を見出せるだろうか。雄々しいフランスの婦人たちは、フランスが歴史の波瀾を凌いでゆく時々に、いつもその陣頭に旗をかざして進んだ。日本の婦人ばかりが、その熱情さえもたないと、誰が云い得よう。人民、女性の歴史にとって屈辱のしるしのように強いても握らされた白と赤との日本の旗は、今日、日本の婦人自身の手のなかで握り直されなければならない。旗は、よろこびと幸福とへ向って生活の軌道を切りかえる親切と勇気にみちた信号合図の旗として、かざされ、振られなければならない。嬉々とした人生の建設のために構図し、労作する、その高き旗じるしとして、婦人の大集団の上に、勇敢に、はためかなければならないのである。</seg><seg type="layout" source="#source-12578-12623" rend="chitsuki align(right) offset-from-end(0)" snh:layout-kind="chitsuki" snh:layout-params="align=right;offset-from-end=0"><seg source="#source-12596-12623">〔一九四六年四月〕</seg></seg></p>
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        <note type="source-attribution" source="#source-12631-12993"><seg type="source-line">底本：「宮本百合子全集　第十五巻」新日本出版社</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1980（昭和55）年5月20日初版発行</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1986（昭和61）年3月20日第4刷発行</seg><lb/><seg type="source-line">底本の親本：「宮本百合子全集　第十二巻」河出書房</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1952（昭和27）年1月発行</seg><lb/><seg type="source-line">初出：「婦人画報」</seg><lb/><seg type="source-line" style="padding-inline-start: 3em">1946（昭和21）年4月号</seg></note>
        <note type="transcriber-note" source="#source-12993-13309"><seg type="source-line">入力：柴田卓治</seg><lb/><seg type="source-line">校正：米田進</seg><lb/><seg type="source-line">2003年6月4日作成</seg><lb/><seg type="source-line">青空文庫作成ファイル：</seg><lb/><seg type="source-line">このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫（http://www.aozora.gr.jp/）で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。</seg></note>
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